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スタッフからの便り(スタッフ日記)

プレアビヒア寺院世界遺産登録と国境紛争について(2008.8)


カンボジアでは7月27日、5年に一度の国民議会選挙が行われ、投票日前後はマスメディアでも選挙のことが連日大きく取り上げられていました。結果は与党の人民党が123議席中90議席を獲得する圧勝に終わりました。しかし、今回は、総選挙と同等以上に大きく取り上げられている問題があり、総選挙もかすんでしまうくらいでした。それはプレアビヒア寺院の世界遺産登録に端を発するカンボジアとタイの国境問題です。総選挙をはさんで、いまなお新聞ではこのトピックが見られない日はありません。

 

 

このプレアビヒア寺院は、アンコールワットよりも旧い遺跡で、今年の7月7日にユネスコにより世界遺産に登録されました。カンボジアとしては、アンコール遺跡群に続いて2つめの世界遺産登録となり、首都プノンペンではお祝いムード一色、町中に国旗が振られ、オリンピックスタジアムでは8000人規模のお祝い集会・コンサートが開かれ花火が打ち上げられました。

 


ところが、問題はこの遺跡がカンボジアとタイの国境に位置しており、長い間その帰属を巡って激しく両国が論争していることです。1958年にはこの問題により国交を断絶、1962年に国際司法裁判所がカンボジアに帰属すると裁定を下した後も対立は続いていました。


カンボジアによる世界遺産登録は、タイ政府により了承を得て行われ、ユネスコもそれを受けての世界遺産登録だったわけですが、タイ国民が反発し、「タイの大事な遺跡をカンボジアに渡す売国行為」だと政府を非難し、ついには外務大臣が辞任するという事態にも発展しています。そして、ついに7月15日、遺跡に不法に侵入したとしてタイ人3人がカンボジアの警察に拘束されたのをきっかけに、カンボジア、タイ、両軍隊が対峙することになりました。 


そしてそれは1ヵ月後の現在(8月21日)も続いており、さらにもう1箇所、同じように国境に位置するウドーミアンチェイ州の寺院でも両軍の対峙が始まっています。駐留する軍隊同士で談笑しあっている状況も伝えられており、直接的な武力衝突にまで発展する可能性は極めて少ないとはいうものの、現場近くに住む人々は避難生活を行い、兵士達にもマラリヤ犠牲者が続出しています。われわれSVAの活動に直接的な影響は今のところありませんが、長い内戦の末、ようやく人々が、子供たちが、手にした戦争のない生活をまた脅かされるのは見るに耐えません。日本ではほとんど報道されることはないニュースではないかと思いますが、日本の領土問題や戦後処理の問題ともあわせて考えたときに、本当の意味での平和に向かっていく段階では、他国との過去の争いの清算もしていくことが大事であり、それを誤るとまた国民を苦しめることになりかねないのだということを強く感じましたので、平和のための活動のご支援をいただく日本の皆様ともこの情報を共有させていただこうと思い、今回とりあげて書いてみました。


世界遺産登録とその後の異常なまでの盛り上がり、そして、タイに対して一歩も引かない強い態度、それが今回の総選挙で与党が圧勝した大きな要因の一つであることは間違いありません。それが操作されたものかどうかは定かではありませんが、選挙が無事に終わった今、一刻も早い紛争解決がされることを、カンボジアとタイの国民とともに心から祈る毎日です。


磯部正広

 


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