SVA 公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会

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岩手県における図書館事業計画

岩手県における図書館事業計画書


はじめに

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(以下、SVA)は、3月14日に副会長の三部義道、3月16日には次長の市川斉と緊急救援担当の白鳥孝太が現地入りし、現状の把握やニーズの調査を行った。その後、宮城県気仙沼市に拠点を置き、市内の唐桑地区と本吉地区にある避難所での炊き出し、入浴サービス、物資の配布などの活動を行っている。

津波による被害も同様に甚大な岩手県の中での活動実施の可能性を探るため、2011年5月2日から7日まで、岩手県の三陸沿岸の宮古市から陸前高田市を訪問した。子どもの教育・文化支援の活動を主軸としており、スマトラ沖地震やミャンマー(ビルマ)サイクロンの復興事業として図書館活動を行ったSVAとして、図書館活動の可能性を中心に調査を行った。

三陸沖で住民に読書の機会を提供している図書館の中には津波に襲われ、建物は崩壊、図書も流失しているところもある。それと同時に、仕事も家も失った避難所にいる人々は、時間を持て余すようになっている。また大人のように言葉で自分の気持ちを表現できないため、無口になっている子どもたちもいる。

仮設住宅の設置や色々な手続き業務で、他に手が回らない行政もある中で、図書館が機能するまでNGO、NPO、地域の読書ボランティアがサポートしていくことが求められている。

事業背景とニーズ

1) 岩手県の被災状況
今回の震災は津波の被害があったことが大きい。実際、岩手県でも地震での倒壊した建物はほとんどなく、津波が襲った地域と襲わなかった地域がはっきりと分かれている。
岩手県における人口数と対比した人的被害は、以下の通り。

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参考:岩手県災害対策本部(2011年5月7日)総務省住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(2010年3月31日現在)

2) 被災地の図書館の現状
SVAの図書館活動を構成する要素として、<1>図書館員、<2>図書スペース、<3>本、<4>利用者があげられる。

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岩手県三陸沿岸の図書館の状況をこのフレームにあてはめて現状分析をする。図書館員、図書スペース、本に問題のない宮古市立図書館や釜石市立図書館はすでに通常通り再開している。一つでもこの要素が欠けている図書館は再開のめどが立たないところが多い。



 

 

 

 

(1) 図書館員
図書館員の被害があったのは、陸前高田市で、専任2人、司書1人、非常勤5人、全員が行方不明または死亡した。山田町は専任2人、司書1人、非常勤3人のうち1人が死亡した。データにはないが、家屋が全壊もしくは半壊した図書館員が多数いることが予想される。また図書館員が、避難所や市の施設での仕事をしているケースも見られる。
大槌町のように役所が津波に襲われ職員の多くが死亡した地域では、限られた職員で事業を行わなければいけない状態である。大船渡市立図書館の図書館員は「移動図書館を再開したいし、学校に資料の提供も行いたいが、今図書館が避難所になっているため動くことが困難」と言っていた。このように、活動を再開したくてもできない図書館が存在する。

(2) 図書スペース
大なり小なり何かしらの被害を受けている所が多い。宮古市立図書館、釜石市立図書館、山田町立図書館、大船渡市立図書館は、高台にあったため、大きな被害は免れた。大船渡市立図書館は、避難所になっていることとシステムがダウンしているためまだ再開はされていない。
大船渡市立三陸公民館図書館、陸前高田市立図書館、大船渡市立図書館、津波が建物の上を超えたため、壊滅状態となっている。

(3) 図書
本が落下する程度だったら、書架に戻す作業をすればいいが、津波の影響で図書が水をかぶったり、流出した図書がある。津波の水も真水ではなく、泥や重油が含まれているため、津波の被害にあった本は泥だらけで再利用は不可能となっている。
図書館の建物は無事でも、本を外部の倉庫に預けていた山田町立図書館は3万冊を流出するなどの被害がでている。

(4) 利用者
避難所での生活を余儀なくされている人、津波で車両を失った人は、図書館へのアクセスを制限されている。
岩手県滝沢村立湖山図書館が保有する移動図書館車であるかっこう号が大槌町と山田町を巡回している。滝沢村立図書館の関係者と、情報交換をしたところ、毎回50人弱の利用者があり、130冊が貸し出されている。「借りられること」が喜びにつながっているとのこと。また子どもたちが震災後無口になっている中、人のぬくもりを感じられる絵本の読み聞かせや遊びなどの活動が求められている。

(5) 図書館の被害状況

 

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図書館の活動に関する課題と方向性

岩手県立図書館からの報告に「図書館は読書施設としての機能、情報センターとしての機能、コミュニティセンターとしての機能があるなか、今回の震災で断たれてしまった」とある。また未曾有の被害の中、県や市町村だけでは解決できない。教育委員会と協力しながら、山田町、大槌町、大船渡市、陸前高田市に移動図書館活動を行う。阪神淡路大震災では仮設住宅での孤独死の問題が起きた。移動図書館での本の貸し出しだけではなく、定期的にイベントなども行い、仮設住宅から人が出てくるきっかけを作る。

プロジェクト目標と期待する成果

1) プロジェクト目標
図書館活動と付随する活動を通じて、図書館へのアクセスが失われた被災者に対して、読書、情報の入手、コミュニティ作りの機会を提供する。

2) 期待する成果

読書の機会の提供
指標:
・巡回した回数
・ステーションの数
・貸し出された本の数
・借りた人の数

情報の入手の機会の提供
指標:
・蔵書の数
・蔵書の分類の多様性
・リクエストに応じられたかの有無

コミュニティセンターとしての役割
指標:
・行ったイベントの数
・参加者の数
*定量的な数値だけではなく、アンケートなどを通じて声を拾いながら定性データの分析も行う。

対象地域と対象者

1) 対象地域
岩手県山田町、大槌町、大船渡市、陸前高田市を対象とする。
図書館へのアクセスはその市町村に住む全ての人が断たれているのが現実である。仮設住宅への移動図書館活動が中心となるが、ニーズがあれば自治体や学校でも事業を実施する。

2) 対象者
平日は高齢者が多く、休日は子どもから高齢者まで全世代がいる。その世代に合わせた本の選書、それに付随する活動を織り交ぜていく。週末は子ども向けの読み聞かせの活動などとマッチングさせる。被災地を巡回している岩手県滝沢村の図書館員は、平日は映画などの上映や落語などのニーズが高いと言っていた。
現在、仮設住宅の建設が進んでおり、6月から7月にかけて、入居が始まる。SVAは、各市町村につき8カ所(合計32カ所)をステーション(移動図書館が回る先)にすることを考えているが、現在教育委員会と巡回先の調整を行っている最中である。ステーション選択基準としては、50戸以上の世帯が暮らす仮設住宅を対象とする予定である。

 

 

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事業の具体内容

1) 移動図書館活動
公立図書館が被害を受けた山田町、大槌町、陸前高田市では図書館再開のめどが立たない。大船渡市は、市立図書館は開館の予定があるものの、大船渡市立三陸町公民館図書館は津波の被害に遭い、骨組みしか残っていない中、市立図書館だけではニーズにこたえられない。また公共図書館のような常設図書館ができても、家や車を失った人がその場所まで来ることも困難と思われる。
SVAが図書を乗せた車を仮設住宅や自治体に巡回させる「移動図書館活動」を行う。2週間に一度同じステーションを回るようにする。一つのステーションには1時間滞在する。その中で行われる活動としては、?本の貸し出し、?対象者に合わせたイベントやワークショップの実施を行う。読書の機会、情報を得る機会、そして人々が集い話し合いの場を持つコミュニティとしての場所を提供する。

2) 文庫の設置
現在、機能している公民館、病院、学校などに、書棚を置かせてもらい、文庫化。定期的に巡回し、本を入れ替える。管理はSVAが行うこととし、設置場所に負担をかけないようにする。貸し出しに関しては、「読み終わったらお戻しください」といった形で(東京の地下鉄駅などに見られる)、自由に利用できる空気をつくる。
特に、図書館を施設ごと失った陸前高田市、大槌町などの場合、被災したしないにかかわらず、図書館が利用できなくなってしまっている。図書館車を走らせる陸前高田市でも市内全域をカバーするのは相当困難と思われる。そこで、SVA岩手事務所では、文庫の設置に努め、住民の図書環境充実を目指す。

3) サテライトの設置
陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町に各1カ所、倉庫を確保。通常時の図書の積み替え場所にするとともに、冬場、降雪・路面凍結により岩手事務所(遠野市)と4地域との往来が困難になった場合の備えとする。
地元の読書ボランティアなどと連携することで、サテライトの本も開架式にし、貸し出しを行うことも検討する。

4) 付随する活動
コミュニティ支援のために読み聞かせ、映画会、落語、行茶などのイベントを組み入れた移動図書館活動を行う。そのため地元や外部のリソースと協力しながら行う。
また、生業支援として、仮設住宅で作られた手芸品などを紹介、販売する可能性も探る。


事業の終了

仮設住宅が終了する2年(または3年後)に行政サービスが復活すると共に終了。または、阪神・淡路大震災の時のように、地元NPOを立ち上げ、撤退後も一定の資金提供で応援をしていく。

 


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