2019.03.04
海外での活動

難民キャンプから500人以上がミャンマーに帰還

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

こんにちは。ミャンマー(ビルマ)難民事務所の山内です。

2019年2月20日~22日にかけて、タイ・ミャンマー国境沿いにある5カ所のキャンプから、500人以上の人々がミャンマーに帰還しました。

1984年にカレン族・カレニ―族の暮らす9カ所の難民キャンプが公式に設立され、2012年のミャンマー(ビルマ)政府とカレン民族同盟(KNU)の停戦合意以降、タイ国境の難民キャンプでは、難民の自主帰還などの準備が進められてきました。自主帰還について詳しく、こちらのブログ「難民帰還のパイロットケース」をご覧頂けると幸いです。

そして、2016年からタイ・ミャンマー政府合意の下の帰還プログラムが行われており、初回は71人がミャンマーへ帰還をしました。次に、2018年5月に93人が同じプログラムを使用し帰還をしました。その後は、2018年10月に同プログラムでの帰還があると言われていましたが、調整に時間がかかったようで、2019年2月に帰還となりました。今回の帰還の人数の詳細はまだ公表されていませんが、5つ(メラ難民キャンプ・ウンピアム難民キャンプ・ヌポ難民キャンプ・バンドンヤン難民キャンプ・カレニ―系の1キャンプ)のキャンプから500人以上が帰還をしたと発表がありました。

この帰還プログラムは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や関係機関のサポートの下、実施されています。ちょうど、帰還のタイミングで私達はメラ難民キャンプを訪問していたため、許可を頂き、特別にキャンプ出発前の様子を撮影させて頂きました。用意された車でキャンプを出発した後は、私達の事務所のあるメーソット市内に架かる国境の橋に向かい、ミャンマー側へと渡ります。

帰還の様子を見るためだけにキャンプに入ることは、プライバシーの関係もあり、できません。偶然にタイミングが合い、様子を伺うことができました。

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全員の準備が整うまで、出発を待つ人々
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キャンプを出発した後は、タイ・ミャンマー国境に架かる橋を車で渡ります

UNHCRからのサポートとして、帰還をする人々には事前に蚊帳、衛生用品などの物資が配布され、メディカルチェックや地雷回避の教育を受けます。また、大きな袋も配布され、その袋に1人50kgまで衣類などの必要物資を入れ運び出すことができます。また、交通費や6ヵ月分の食費などとして、現金も支給されます。そして、大切なミャンマーでのIDカードの発行サポートもあります。但し、帰還に関する支援はこの1回のみとなり、後は自身の力で帰還先で生活をします。(帰還先に国際支援が入っている場合もありますし、帰還後の暮らしはUNHCRによる調査によって、報告されていきます。)

これらの支援は一時的なものであるので、本当に自分達で新しい土地で暮らしていけるのか、帰還先は本当に安全なのかといった不安を抱える人も未だ多く、帰還を希望する人は多くはありません。但し、今回の500人以上の帰還はこれまで以上の人数となり、大きな動きとなったのではないかと思います。これから、帰還後の生活が報告され、その情報を得た難民キャンプに暮らす人々は帰還の選択をしていくのかもしれません。

ですが、未だ約9万7千人の人々が9カ所の難民キャンプに暮らしており、人々の抱える悩みや不安は様々です。また、キャンプへの国際支援は年々減少する一方で、帰還の決断ができないまま、自身の生活が徐々に苦しくなるという状況に立たされている人々がいます。こういった精神面の不安から、アルコール中毒に陥る人、自殺を考える人もいます。

1人1人の持つ不安が少しでもなくなり、希望を持って、将来の選択ができるようになって欲しいと願うばかりです。

ミャンマー(ビルマ)難民事務所 山内