2020.02.13
海外での活動

ラオスの教育課題をともに解決する心強いサポーター

ラオス

サバイディー/こんにちは。ラオス事務所インターンの木村です。

最近のルアンパバーンは、朝方はまだ涼しく曇りがちなのですが、日中は日差しが暑いです。市場ではとうもろこしやびわなど、日本の初夏に旬を迎えるような野菜や果物をよく見かけます。

先日、北海道教育大学の玉井副学長をはじめとする訪問団が、極寒の地北海道からはるばるラオスを訪問くださいました。
同大学では、へき地・小規模校の教育研究が盛んに進められていることから、弊会が実施する「ラオス北部地域の教員養成校指導教官の能力強化を通じた、複式学級運営改善事業」においては、かねてより川前あゆみ先生をはじめとする先生方から多くの専門的なアドバイスを頂きながら、協力して事業を実施しています。
また、川前先生、同じく訪問団の境先生におかれては、昨年5月に開催した複式学級運営の講師養成講座にも参加いただいており、今回はそれ以来のご訪問となりました。そのときの様子はこちらのリンクからご覧ください。

複式学級講師養成講座実施

今回の訪問では、教育行政を訪問し、ラオスが抱える教育課題について意見交換を行ったほか、へき地の教育現場の実態を見ていただくため、ルアンパバーン市内から車で1時間半ほどの場所にあるルアンパバーン県パクセン郡の小学校にて、本事業で研修を受けた教員による複式授業を参観するとともに、訪問団による3学年複式学級の模擬授業も行われました。

ハッサーン小学校の外観

<1校目に訪れたハッサーン小学校>

バンポー小学校の外観

<2校目に訪れたバンポー小学校>

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<2学年の複式授業を行ってくれたハッサーン小学校教員>

複式授業を行うバンポー小学校教員

<3学年の複式授業を行ってくれたバンポー小学校教員>

模擬授業は、訪問メンバーであり、公立小学校校長でいらっしゃる稲葉先生に行っていただきました。稲葉先生の授業には、複式授業であっても、子どもたちの集中力を途切れさせない、積極的な参加を促す工夫がたくさん見られました。

模擬授業を行う稲葉校長

<稲葉先生による授業の様子>

たとえば、授業のテンポです。
今までラオスの小学校でいくつかの授業を見てきましたが、教員の話すスピードや声のトーンは一定・単調であることが多く、子どもたちは教員の話を大人しく聞いているか、または授業に飽きておしゃべりを始めてしまうという場面がよく見られました。
しかし、見せていただいた模擬授業では、教員自身が話すスピードや声のメリハリを工夫することでテンポよく授業が進んでいき、子どもたちはそれにつられるように積極的な態度で授業に参加していました。ラオス人教員からもこのような授業は見たことがない、大変勉強になったとの声が聞かれました。

稲葉先生による授業の様子2

<教材を配るのではなく自ら取りに来させることも、子どものアクティブにする工夫です>

課題に取り組む子どもたち1

<他学年が直接指導を受けている間、さいころを使った課題に取り組む子どもたち>

課題に取り組む子どもたち3

<自分たちで一生懸命に問題を解いています>

また、子どもたち自身が時間の見通しを立てられるような工夫も印象的でした。
複式学級の指導では、子どもたちが授業により集中できるようになるため、どのように作業を進めるかイメージしやすくするため、教員が他学年の指導に移る前に子どもたちに時間の提示をしてあげることが重要ですが、ラオスではそれができていない教員もまだ多くいます。その理由として、へき地の小学校の教室には時計がなかったり、子どもたちが時計を読めなかったりという現状も関係しています。
そのような現状も踏まえ、稲葉先生は、模擬授業の中で砂時計ならぬ”水時計”を使って課題の時間を伝えていました。

水時計を使った授業の様子

<水時計の見方を説明する稲葉先生>

この水時計は、電気や電池を用いず、へき地の学校でも使うことができるようにと、一緒に参加した大学院生の阿蘓さん、木下さんとともに考案されたものです。授業後の振り返り会議では、大学院生による作り方の説明もあり、ラオスの教員や教育行政関係者は身近なもので簡単に作成できる水時計に関心を持っているようでした。

また、この教材は、その他にも紹介された教材とともに、現在開発中の「手作り教材事例集」の中に組み込むこととなりました。(教材・教具をあわせて教材と呼んでいます。)

水時計の説明を行う大学院生

<水時計の作り方を説明する阿蘓さん、木下さん>

学校訪問後には、ラオス事務所にて全体の振り返りを行い、所感の共有や、その中で出た意見についてディスカッションが行われました。
最後に、玉井副学長がおっしゃっていた「実際にラオスの教育現場を視察し、日本もラオスも環境や文化は違えども、複式教育が抱える課題は共通していることがわかった」という言葉が印象に残りました。
共に解決していくという姿勢を北海道教育大学の皆様に見せていただいたような気がしました。

北海道教育大学の訪問団との集合写真

*この事業は国際協力機構(JICA)の草の根技術協力で実施しています。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。
ラオス事務所インターン
木村