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バンコクのスラムは、国境を越えて人々が暮らす時代

2018.10.9   タイ

アジア地域ディレクターの八木沢です。私がクロントイ・スラムに家族と一緒に暮らすようになったのは26年前です。当時は、シャンティのタイ事務所がありました。現在は、シャンティが設立したタイの財団、シーカー・アジア財団の事務所があります。首都バンコクにはスラムが約2,000ヶ所、200万人が暮らしています。約5人にひとりがスラムに暮らしています。タイの格差社会、貧困の象徴がスラムです。

近年、バンコクのスラムもタイだけでなく隣国のカンボジアやミャンマーからの出稼ぎ労働者が急増しています。タイ国内にはミャンマーから300万人、カンボジアから100万人、ラオスから60万人が出稼ぎ労働者として暮らしています。クロントイ・スラムでも日常的にカンボジア人を目にする時代です。スラムも国境を超えて、多国籍化、多民族化しています。そんなスラムの今をリポ―トします。少し長くなります。

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「クロントイ・スラム 約10万人が暮らすタイ最大のスラム。スラムの向こうには高層ビル」

私が暮らすクロントイ・スラムの人口約1万人の70ライ地区。人口の約1割がカンボジア人が暮らすと推定されています。出身はタイとカンボジア国境に近い州から首都プノンペン等全国から来ています。多くは、農村で農業をしていました。クロントイ・スラムのカンボジア人は、港湾労働者、建設現場、屋台等多様です。中には10年以上暮らして自分で雑貨や食堂を持っている人もいます。

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「クロントイ・スラムのカンボジア人。30人が同じ屋根の下で暮らす」

この家には、4畳一間の一部屋に一家平均して4人が暮らす。トイレや台所は共同。家賃も一月1,500バーツ(4,500円)けして安くありません。一日、収入は、港湾労働で300バーツから500バーツと不安定。毎日、仕事があるわけではない。この家に住む人たちは全員、ビザや労働許可書を持っていました。生まれた子どもたちも出生証を持って登録されていました。最近、タイ政府が外国人労働者に対する登録を強く推進している結果です。タイの労働者不足を補うためです。しかし、全体では外国人労働者の半分が未登録だと推定されています。クロントイ・スラムに暮らすカンボジア人は、「タイ語と英語とコンピューター」を勉強したいと口を揃えます。タイ語が出来ない安定した仕事に就けないからです。簡単なタイ語は話せても、読み書きができません。その前に、カンボジアでの読み書きができない人たちが多いです。母語の読み書きができなければ、外国語の読み書きは極めて困難です。

親たちの読み書きも問題ですが、子どもたちの教育も大きな課題です。クロントイ・スラムにはカンボジア人のための学校はありません。民間団体が小さな学校を運営していてその学校でタイ語で勉強をしています。タイで暮らすためには、タイ語。将来、カンボジアに帰ったことを考えるとカンボジア語での読み書きも大切となります。親たちは将来は、カンボジアに帰りたいと口を揃えます。

クロントイ・スラムの中で図書館を運営するシーカー・アジア財団では、カンボジア語の絵本を図書館に置いています。子どもたちの中には、毎日、図書館に来る子どももいます。移動図書館では、タイ語、カンボジア語、ミャンマー語の図書を用意しています。母語での読み書きが極めて大切だからです。そのためには、まずは絵本等で本の楽しさを知ることが大切です。自らの言語は、自らの証、アイデンティティーそのものだからです。質の高い教育を受けなければ、貧困から抜け出すことはできません。

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「タイ・カンボジア国境の街、 アランヤプラテ―トとポイペト国境」

 

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「タイへの出稼ぎの背景は、カンボジアの農村の貧困とタイとの賃金の格差、タイの労働者不足」

バンコクのスラムら暮らすのは、カンボジア人だけではありません。バンコク市内の日本人が多く暮らすスクムビット地区にもゴミ山のスラムと呼ばれるテ―プーラクサー地区もあります。地区にあるゴミ処理場のゴミの分別をして暮らしています。

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「ゴミの前で移動図書館活動と本を読むミャンマー人の子どもたち」

この地域のスラムの子どもたちの問題は、大半の子どもたちが学校に行っていないことです。タイ政府は外国人の子どもたちに学校を開いていますが、言葉の問題や親の滞在許可書等の問題もあります。15歳前後となると大人に混じってゴミの選別の仕事をします。

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「タイ北西部の国境の街、ターク県メソトのゴミ山のスラム、子どもも大人に混じって働く」

このスラムも大半がミャンマーからの出稼ぎ労働者。ゴミを分別してゴミを糧に生活しています。このスラムの救いは、ゴミ山に隣接する地区に地元の民間団体が支援する学校があること。シーカー・アジア財団の移動図書館が年に一度移動図書館活動で支援しています。

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「タイ・ミャンマー国境を流れるムーイ川 手続きなしで国境を越える人々」

バンコクのスラムだけでなく地方の国境のスラムにも外国人が暮らす時代。出稼ぎ労働者、移民先進国のタイ。様々な分野で国境を越える時代となっています。出稼ぎで暮らすカンボジア人やミャンマー人の子どもたちの教育は、重要な課題です。タイに暮らす子どもたちとっては、母語と外国語であるタイ語。二つが最低できないと貧困の再生産という負のサイクルから抜け出せません。「誰一人取り残さない」。困難の中に生きる子どもたちの教育の機会を守るのが、私たちの大切な使命だと思うタイの移民労働者の子どもたち、クロントイ・スラムの今です。

 

★朝日新聞電子版でも連載中

ミパドが行く! 連載:朝日新聞GLOBE+

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