シャンティブログ

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ゼロから920万

2019.1.5   東京事務所より

新年を迎え、仕事はじめにメールの受信Boxを埋めるのはアフガニスタンの治安情報(事件速報)でした。東部地域と首都含む中央地域の事件速報は多い時には1日で50通近くになります。2014年から治安が悪化傾向にあるアフガニスタンの治安情勢、年間の市民の死傷者は1万人以上に上り、もはや紛争「後」復興国から、紛争「中」国に後戻りしてしまった、と落胆の声もあります。

そんな中、「920万人ってすごい数字だと思いませんか。」とアフガニスタン現地事務所の職員に言われ、はっとしました。2001年のタリバン政権崩壊直後のアフガニスタン国内での就学率はほぼゼロ。15年経過した今、およそ920万人もの子どもたちが学校に通っているのです。これだけ治安が悪化した中、学校校舎も16400校にも増えたそうです。悲惨なニュースが飛び交う中で、現地で教育復興に関わる関係者がどれだけ苦労をしてこの偉業を成し遂げたのか、アフガニスタンの教育は確実に前進していることに喜びを感じました。

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紛争後の教育復興はとにかく時間がかかる

シャンティが教育支援を実施している国は、かつて内戦や内戦の影響を受けた国です。治安の安定や経済復興のスピードは速く、観光化が進み、一般の旅行者が増えてくると一見順調に復興しているように思われます。教育現場においても、インフラが整い、教員が教壇に立ち、子どもたちが学校に通い始めます。ただし、ここからがようやく本当の意味での教育復興が始まるといえます。同時に、ここからの教育支援は非常に難しくなります。なぜなら、ほとんどの教員や大人たちは、質の高い教育、例えば、色鉛筆、画用紙、地図や地球儀といった教材にあふれた授業も、子どもの成長に寄り添い、教えることができない学びを与えてくれる本に囲まれた経験がない人ばかりです。質の高い教育とは、またそれが子どもたちにどのような変化や影響を与えるのか、知る機会もありません。

そんな国の一つでありシャンティが紛争終結後から28年関わっているカンボジアで実施している幼児教育の支援では、対象校を中心に職員と専門家、カンボジアの教育省、学校の教員が一緒になって、「質の高い教育」の現場作りに励んでいます。子どもたちが学びやすい環境を整え、一つ一つの活動に「考える力」や「主体性をみにつける」など意味づけをしていき、活動を組み立てていきます。その一つ一つの挑戦にシャンティは寄り添いながら活動を実施しています。昨年、ある対象校を訪れた時に、子どもたちの変化に目を疑いました。集団行動ができるようになり、先生のお話しを聞くことができるようになっていました。同時に、それぞれの子どもたちの個性がより見えるようになり、先生は子ども一人一人が違うという意識の中で活動を組み立てていたのです。ここでいう「質が高い教育」とは、ただ物が充実していることでも高度な教育を施すことを意味していません。日本ではある程度常識として行われている子どもたちの発達段階に応じた学校教育の組み立てを推奨しています。

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私は4年半カンボジアに滞在し、いろいろな公立小学校や幼稚園の現場をみて、先はまだまだ遠いと嘆いたものですが、たとえ活動の地域は狭くても一つのところで見えた「教育の質」の具体例は教育省や教員の次に進むモチベーションとなり、目指す方向が明確になります。最低複数年はかかり、ようやく見えてくる子どもたちの変化が教育復興の成果であり、それを現地の人たちと分かち合うことで次のステップが見えてくる、教育支援は着実に前進することをお手伝いしなければいけないのです。子育てにショートカットがないのと同じです。

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日本とのつながり

「日本の教育現場を改めて見直してみたい」シャンティの教育支援にご協力いただいている教育の専門家の方々からふと発せられた言葉です。

20年近くの海外駐在を終えて、帰国した日本は良くも悪くも変化を遂げていました。私は地方出身なので、特に地方の抱える課題は、自分自身の課題にも直結します。外国人労働者も技能実習生や資格外活動を含めると10年前には約49万人(2008)だったのが、約127万人(2017)にものぼり、日々の生活の中でも外国人労働者の存在を実感することが増えたのではないでしょうか。政府の方針では2025年までに新たに5分野で50万人の増加をみこみ、一部の分野においては日本語能力の条件を大幅に緩和することが議論されています。こういった中、外国人労働者が日本で生活をしていく上での課題もすでに耳にしつつあります。日本の教育現場においても新たな挑戦になるでしょう。

シャンティの38年にわたる海外での教育支援や国内での防災、緊急支援活動の経験が日本国内の課題解決にどう貢献できるのか、2019年はできるところから考えていく年だと思っています。

「毎朝、子どもたちを見送り、妻に見送られる時、これが最後かもしれない。そんな気持ちで家を出ます。妻には私が万が一帰ってこられなかった時のために困らないよう必要なことをすべて伝えています。」昨年末、アフガニスタン事務所の職員が挨拶の最後に締めくくった言葉。私たちがいかに平和な社会で暮らせているか、どれだけ多くの人達がその日一日を精一杯生きているか、身が引き締まる思いで新たな年を迎えました。

シャンティの活動をご支援くださる多くの方に感謝するとともに、今年も1年精進して参りたいと思います。どうぞ、引き続き、ご協力、ご指導賜りますようお願い申し上げます。

事務局次長兼アフガニスタン事務所所長

山本英里

  • 絵本を届ける運動
  • アジアの図書館サポーター
  • 本の力を、生きる力に。