2023.02.02
海外での活動

学校図書館が1つもない地域で初めての学校図書館開館

ミャンマー
事業終了

こんにちは、ミャンマー事務所のゼヤです。
2022年、ミャンマーのパアン事務所では、カレン州での新たな活動として、僧院学校の学校図書館を建設・設置することを計画しました。活動を開始して気づいたのは、カレン州には学校図書館が1つもなく、図書サービスもほとんどないということでした。そのような地域で活動して感じたことは本ブログの最後でお伝えしますが、まずは活動の様子からご紹介します。

対象校の選定からスタート

まず、カレン州宗教局から僧院学校のリストを収集しました。対象としていた地域には20の僧院学校がありました。不安定な政情により移動が困難な地域もあるため、直接調査ができたのはこのうち6校で、その他は宗教局を通じて情報を収集しました。
調査の結果、チャパラン僧院学校に学校図書館を建設し、チャトゥエ僧院学校とティリヒマット尼僧学校には既存の建物を学校図書館へ改築することになりました。

学校長が学校図書館に込めた思いと期待

これら3つの学校は街から離れた場所にあり、カレン州だけでなく様々な地域から子どもたちが通っています。僧院学校は公教育として認められているものの、政府からの支援は少なく、自力で運営しなければならないという状況にあります。
今回支援の対象となった僧院学校には、開校から現在に至るまで学校図書館がありませんでした。子どもたちが知識を深め、成長につながるような教材もありません。このような状況を受けて、学校長が子どもたちの学習環境を改善したいと、学校図書館の設置を切望していました。また、学校図書館での読書や図書サービスを通じて、子どもたちには学力の向上だけでなく、批判的思考やコミュニケーションといったライフスキルを身に付けたり、生活態度へ良い変化をもたらしてほしいという、学校長の学校図書館への期待とシャンティの信念も一致しました。

トラブル発生も地域を巻き込んで工事が完了

ここからは、対象校の1つであるチャパラン僧院学校の建設の様子をお伝えします。
チャパラン僧院学校の学校図書館建設は、2022年6月12日に始まりました。元々は4, 5月に工事を始める予定でしたが、銀行制度の変更の影響を受け、計画通りの着工が叶いませんでした。建設中は、エンジニア、シャンティ職員、学校運営委員会(日本のPTAのような組織)、教員が毎週モニタリングを行いました。モニタリングでは、日ごと、週ごとの進捗状況を作業計画に基づいて確認しました。
工事の様子

建設中は雨季のため道路状況が悪く、建設資材の運搬や一部の工事に遅れが出てしまいましたが、建設会社は雨季の間も計画通り工事を進めるべく力を尽くしてくれました。雨季が終わると、地域の人々や学校運営委員会のメンバーも塗装などをサポートし、地域全体が一丸となり建設を進めました。そうしてようやく、計画通りに8月末に建設が完了しました。
完成した学校図書館 完成した学校図書館内装

日本の皆さんへ学校長と子どもたちからメッセージ

学校長と子どもたちから寄せられたメッセージをご紹介します。
~学校長からのメッセージ~
「本校に通う子どもたちの大半はポー・カレン族で、ミャンマー語に慣れ親しむためにも読書をしてほしいと考えていました。以前から子どもたちのために本や雑誌を購入していたものの、読書スペースや図書の保管場所がないため、よく本が無くなりました。学校図書館を設置したいと考えていても、学校図書館建設や図書購入を支援してくれる人はいませんでした。そのため、本校の子どもたちは読書習慣を持てずにいました。
学校図書館ができた今は、学校のすべての子どもたちに本を読んでもらい、批判的思考力を養ってもらいたいと思っています。日本の支援者の皆様には、私たちの教育を支えてくださっていることに感謝しています。」
集合写真

~子どもたちからのメッセージ~
ソウ・アン・トウさん(4年生)(仮名)
「僕たちの学校には学校図書館がなく、本もあまりありませんでした。だから、絵本や読み聞かせを見たこともありませんでした。今はたくさんの本を読むことができ、自由に学校図書館に行けます。学校に新しい学校図書館ができて、とても嬉しいです。」
読書の様子

ナン・ティン・ウ・ユーさん(4年生)(仮名)
「私は将来、ダンサーとデザイナーになりたいと思っています。踊ることが大好きで、踊ったり歌ったりするのは楽しいです。デザインを考えるのも好きで、デザイナーになったら自分の服を作ってみたいです。学校には本がなかったので、読書をすることはまれでした。今は、学校図書館に行けば、沢山の本があり、自由に読むことができます。もし皆さんが学校図書館を建ててくれなければ、私はこのまま絵本や読書を知らないままでした。だから、学校図書館ができて本当に嬉しいです。ありがとうございました。」
紙芝居の読み聞かせ

「初めての絵本」が子どもたちを支えてくれるように

こうして、カレン州での初めての学校図書館建設は無事終了しました。冒頭にも書きましたが、建設活動が始まって私が気づいたのは、カレン州には学校図書館が1つもなく、図書館サービスもほとんどないということでした。そのため、チャパラン僧院学校の子どもたちは、絵本や児童書を見たこともありませんでした。地域の図書館は遠く離れており交通の便も悪く図書館へ出かけることもできないため、学校に併設された寮で暮らす子どもたちにとって、授業以外で知識を得る機会がほとんどありませんでした。
ですから、すべての子どもたちが情報や知識にアクセスし、読書の習慣が身につくよう、また、生涯に渡る学習や教育の向上につながるよう、チャパラン僧院学校の学校図書館が子どもたちを支えてくれると信じています。新しい学校図書館の完成を喜んでくれている子どもたちの姿を見ることができ、大きな喜びと共に、教育文化支援活動の大切さを改めて実感しました。

ミャンマー事務所 ゼヤ