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2023.03.15
開催報告

【開催報告】第4回防災減災勉強会「宗教者にとっての災害時の支援とは?~東日本大震災から見えたこと~」

緊急人道支援

地球市民事業課の中井です。

3月8日に、第4回防災減災勉強会「宗教者にとっての災害時の支援とは?~東日本大震災から見えたこと~」を開催しました。

シャンティは2022年度より「宗教施設を活用した防災減災推進事業」を開始し、活動の一環として昨年より3回の勉強会を実施してきました。2022年度事業最後の勉強会となる今回は、3.11が近いこともあり、東日本大震災をテーマに篠原洋哲 氏(世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会事務局長)にご登壇いただきました。また、本事業担当の中井より1年間の事業報告をさせていただきました。

 

東日本大震災における宗教者の役割について~WCRPの経験から~篠原洋哲 氏(WCRP)

東日本大震災発災後、約5年間仙台市を拠点に宗教者として活動した篠原氏は、支援団体でも行政でもないWCRPとして何ができるのか模索しながら、被災者の声に耳を傾けるとともに、地域で被災者支援活動を続ける諸団体の調査援助にあたりました。

その調査結果を、学術的観点からまとめ、2012年から2014年の間、東北大学にて修士論文研究を行い、2017年からは東京大学大学院で学び、博士号を取得しました。

宗教施設と行政の連携の糸口とは

WCRPの復興支援活動を行う傍ら、研究として9つの地域公共団体、11の宗教施設にヒアリングを行いました。そこで分かったのは両者が連携の必要性を感じているものの様々な課題により実質的な連携ができていない事実でした。

その結果、一つの課題解決の可能性を見出しました。

それは「宗教施設関係者の行政との良好な関係構築の意識が高い、一方、公的支援に関して政教分離原則への慎重な姿勢があった中で、グループ化した宗教施設の意義がある。」ということです。

これは、個別の宗教団体や宗教施設との連携や支援ではなく複数の宗教団体、宗教施設がグループ化することで公共性が生まれ連携することが可能なケースがあるということ。

その背景として複数の民間企業がグループ化することで公共性があると認められ、そのグループに対して国の復興予算を補助金として支給するという事例がありました。

つまり、宗教団体や宗教施設同士が、まずは連携し公共性を担保することは、行政と連携がしやすくなる防災の活動の一つだと言えます。

「顔の見えるコミュニティづくり」の意義

神戸市の震災から10年後のソーシャル・キャピタル調査を約1万人に行った結果(2005年)、住民が今求める支援は、心と体の健康、保養、震災の教訓を伝えるなどがある中で、一番多かったのは「人とのつながり」でした。

この結果から、東日本大震災から10年が過ぎようとする時、福島でも「人とのつながり」が求められると予想し、そのニーズに対して外部支援者がどのようにアプローチできるのか研究を始めました。

当時行っていたWCRP事業「フクシマコミュニティづくりプロジェクト」で繋がった市民活動団体(182団体)を地縁型住民自治体組織(自治会・町内会など)とテーマ型市民活動組織(同好会・趣味のグループ)の2種類に分けてアンケートを実施しました。

外部支援活動を「寄り添い型サポート」と「事業導入型サポート」の2種類に分けた場合、地域に求めらる支援は専門性を有する「事業導入型サポート」に重きをおかれがちですが、調査結果からコミュニティづくりにおいて最も求められることは「寄り添い型サポート」であり、「顔の見える支援」のニーズが高いことが分かりました。

篠原氏は、「宗教者の日常活動は、人々への寄り添い型サポートであると共に、宗教施設を活用した避難所運営や祈りをはじめとした事業導入型サポートの担い手にもなりうる」と災害支援での宗教者の可能性を語ります。

 

宗教施設を活用した防災減災推進事業 2022年度活動報告中井康博(シャンティ国際ボランティア会)

今回、2022年度から開始した「宗教施設を活用した防災減災推進事業」の活動報告をさせていただきました。事業概要はこちらをご覧ください。

参加者として本事業に関わっていただいた一般社団法人おもやい代表 鈴木隆太氏(佐賀県武雄市)と 高乗寺の宮崎大雄氏(東京都八王子市)にコメントを頂きました。

 

鈴木氏:佐賀県武雄市で防災減災ワークショップを実施しました。当事者の皆様から話を聞く中で避難所として開放する場合どうしたらよいのか不安を抱えていることを感じていました。

水害が続く武雄市において、地域住民が運営する地域避難所について実際に誰がどのように運営していくのか、備蓄品はどうするのかといった災害に対するチャンネルを持つきっかけになったことが大きな成果だと思います。

宮崎氏:2019年台風19号で被災し、お寺で防災に取り組む必要があると感じており、今回シャンティの事業に協力することになりました。成果として防災について考えるきっかけになり、お寺の公益性を考えると共に地域にとって何ができるのか考えました。BCP(事業継続計画)策定の中で地域防災を調べる中で自分の住む市の防災の取り組みが多く行われていることを知ることができました。

 

これまでシャンティとして防災の取り組みは単発としての事業がほとんどで、1年を通しての事業は新たな挑戦でした。

その中で、多くの方からのサポートがあり意義のある事業になったと感じています。

以下では本事業に防災の専門家という立場で関わっていただいた事業アドバイザーからコメントを頂きましたのでご紹介させていただきます。

 

事業アドバイザーからのコメント東京災害ボランティアネットワーク 福田信章 氏、大阪大学 教授 稲場圭信 氏 

福田氏:全国各地で手広く活動を行う今回の事業を具体的に東京都での活動をサポートしました。災害を経験した地域住民と宗教施設が連携した防災のイベントを企画し、実施することはコロナ禍で難しかったですが、今後実現できたらよいと思います。お寺が災害時に役に立つだけでなく防災減災の災害時の取り組みが地域のインフラとして大事な役割ができるという期待を持ちました。

稲場氏:1年間で多岐にわたることに取り組んだと思います。防災の取り組みはゴールがなく継続してやり続けるしかないもので1年間続けてきたということは大きな成果です。シャンティの報告の成果として安心が生まれたとあります。ハード面のような目の見えるものは安心ではなく安全です。安心は顔の見える関係性・信頼によって生まれます。防災減災活動などを通した平常時からの地域のつながりが必要な中、多くの宗教者の献身的な歩み、多くの組織の力がこのような取り組みを進めていることを感じました。

 

最後に

今回、宗教施設を活用した防災減災という当会のルーツを活かした事業は多くの関心と可能性があると感じました。本事業を行うにあたって関わっていただいた方はこれまで災害支援を連携して行い、平時から顔の見える関係だった方がほとんどで人のつながりが一番の防災力だと気づかされました。

また、防災減災事業の報告会を開催できるよう日頃の活動に取り組んでいけたらと思います。

 

本事業は独立行政法人福祉医療機構より助成頂き実施しております。

 

お問い合わせ
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 地球市民事業課 中井
TEL:03-5360-1233
E-mail:shinsai@sva.or.jp