戻ってきた「はまゆり号」
2011.6.19 緊急救援
岩手事務所では、陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町で移動図書館を行う準備を進めております。
陸前高田市は図書館が全滅。
本は流出。
そして図書館員が全員死亡しました。
2週間ぶりに図書館の跡地に行ったときに、それまでなかった、陸前高田市立図書館の移動図書館車が戻ってきていました。
運転席には、花が添えられていました。
図書館員の皆さまの、ご冥福をお祈り申し上げます。
昨日、岩手の新聞の岩手日報にSVAの記事が出ました。
それを見た岩手県内の方々からの励ましのお電話をちょうだいしています。
陸前高田市在住で以前学校の司書をしていた女性から、
SVAが移動図書館で来る時は道案内をします!
とのお電話をいただきました。
岩手の人と手に手を取りながら、進んでまいります。
陸前高田市の避難所に知り合いがいます。
4月4日に飛びこみで避難所に行き、彼女を探しました。
その時に出会った方々の「手」が忘れられず、メモにしました。
7月1日に会員とアジアの図書館サポーターの皆さんのお手元に届く機関紙の私の記事のタイトルが「手の記憶」なのですが、その元になったメモを紹介させてください。
手の記憶~手を、とりあうこと。
「3年後、三陸のワカメを食べに戻ってこい」という漁師の手
むじゃきな笑顔ではしゃぐ子どもの頭を愛しくなでるお母さんの手
「津波で何もかもがなくなった。だから未練はない。あとは復興させるだけだ」力強く、固く握られた青年の手
避難所に手作りのお風呂を作るおじいちゃんの手
「この避難所におれが電気を灯す」といった電気屋さんの手
自分たちで炊き出しをしている避難所の、冷たい水でひび割れたお母さんたちの手
「けんか七夕を復活させる」という誓いを寄せ書きに書いた若者の手
図書館が開館したら子どもたちが喜ぶだろうと想像しながら、地震で床に投げ出された本を一冊一冊ていねいに棚に戻す図書館員の手
暖房もない冷たい避難所になっている体育館の床で、風邪を引いて寝ているおじいちゃんの肩を心配そうになぜているおばあさんの手
瓦礫となった家のまわりで思い出の品を探す家族の手
一カ月たって見つかった行方不明者。火葬場で祈りのための合わせられた僧侶の手。遺族の手。
3月11日、その手には悲しい記憶が刻まれた。
おさまらない揺れに、机の下に隠れ、細い机の脚を必死に握った子どもたちの手
高台での工事作業中、向こうから迫りくる津波を見つけ、山の下にいる人たちに向かって「早く逃げろ」と叫び、振り続けた手
孫とお嫁さんと一緒に逃げたおばあさん。途中津波に飲み込まれ、「おめたちは生きろ」といて自ら振り払い津波に飲まれていったおばあちゃんの手
「助けて」と差し伸べた手
それをつかむことができなかった手
その手は、これまでも、そしてこれからも、どれだけの涙をぬぐうのだろう。
どれだけの悔しさのためにこぶしを握るのだろう。
壊滅的な被害、先は見えない。
手を、とりあうこと。
我々は何をするべきか、何ができるのか。
それは地域の人だけが知っている。
「共に生き、共に学ぶ」ためにも悲しみに濡れたその手を、東北の寒さと冷えにたえ生きてきた手の記憶。手をとりあうことで、教えてもらえるはずである。
我々が、にぎった手が、
新たな記憶のはじまりになるように。
誰かと一緒に歩めると思ってもらえるように。
そしてその手を、離さないように。
***
そんな思いを込めて、岩手の人と一緒に事業を組み立てています。
長文失礼しました。