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報告会「ネパール洪水と日本の台風から考えるこれからの緊急救援」開催報告

2019.12.29   イベント報告緊急救援

報告会「ネパール洪水と日本の台風から考えるこれからの緊急救援」

2019年12月19日、聖心女子大学/聖心グローバルプラザにて、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォームによる、2019年7月中旬に南アジアで発生した洪水で甚大な被害があったネパールでの支援活動の報告と、これからの緊急救援について考える共催イベントを開催しました。

報告会「ネパール洪水と日本の台風から考えるこれからの緊急救援」

シャンティとピースウィンズは、ジャパン・プラットフォームの助成金を受け、洪水被害があったネパール南部で合同調査を行いました。ネパールで調査と支援を担当したスタッフと、緊急援助を支援するためのシステムであるジャパン・プラットフォームのスタッフが集まり、日本と海外の災害現場での経験や知見を、今後の緊急救援に活かす方法を考えたいと、三者共催イベントを企画しました。

緊急救援のネットワークとその仕組み

今回、ネパールの初動調査を行ったシャンティとピースウィンズは、国内外で人道危機や難民が発生した際、企業、政府、NGOが緊急援助を行うためのネットワーク・コンソーシアムであるジャパン・プラットフォームに加盟しています。加盟団体は2019年12月時点で43団体。海外での緊急救援活動から始まり、2011年の東日本大震災以降、国内でも人材や資金などのリソースを現地での活動に提供しています。

3団体の緊急救援担当職員が報告

ジャパン・プラットフォームは、人道危機が発生した際のガイドラインに基づき、どの危機に対応するか、出動するかどうかを判断しています。人道危機や大規模災害が発生した後、収集した情報をもとに支援や出動を決定し、加盟NGOからの助成申請を受け付けています。

今回のネパール洪水では、2019年7月23日から行ったシャンティとピースウィンズの合同調査の情報を受けて、ジャパン・プラットフォームは8月15日に出動を決定しました。

2019年7月ネパール洪水の概要と被災地域の様子

今回の洪水により117人が死亡、38人が行方不明になりました。被害を受けたラウタハト郡で合同調査を行った後、シャンティとピースウィンズの2団体はそれぞれ独自の支援活動を行いました。

ネパール洪水の被害概要について説明するシャンティ栗本

シャンティはネパール南部のサルラヒ郡で救援物資配布などの支援を行いました。洪水で家が流された人、竹でシェルターを作って布とビニールシートをかけて生活している人、行き場を無くした家畜と一緒に生活している人など、衛生面が課題となっています。救援物資を首都のカトマンズで調達し、事前に配ったバウチャーと引き換えに物資を配布しました。物資配布にあたり、市長や区長が、それぞれの支持者である住民に物資を配りたいという要望があったため、調整が難航した面もありました。

ネパールでは洪水が毎年のように発生しており、雨量によって、被害の規模が変わります。近年は気候変動の影響で被害も拡大しており、根本的な対応の必要性も強く感じました。

ピースウィンズ:ネパールでの物資配布について報告

首都カトマンズから陸路で片道10時間かかるコウタハト郡とサルラヒ郡では、例年の水害よりも大きな被害がありました。竹や藁でできた家が多く、土の塗り壁、屋根が瓦だと崩れやすい傾向があります。コミュニティの外から見える地区にはカーストの高い人たちが住み、その奥の動物や人間の排泄物などが溜まっている排水溝の近くに低カーストの人々がひっそりと住んでいました。

ネパール洪水の被災状況について報告している様子

何週間も水が引かず、調査にも入れない地域もありました。バグマティ川、やわらかい肥沃な砂地。どんどん浸食が進んでしまう。日本人だったら「この土地に住まない」という判断をするような場所でも、動物を飼うため肥沃な土地が必要なため、その土地から離れたくないと考える人が多い印象を受けました。
土地を持っていないため、日雇いで農業労働者として働き、収穫物をもらって生計を立てている人も多く、社会的に脆弱な人々が被災していました。現金収入が無いため、生活の再建力もありません。

シェルターセット、食料セット、キッチンセット、石鹸や経口補水液(ORS)などの衛生セット、バケツ、水差し、乾燥米(炊いて乾燥させてつぶし、水で戻して食べる)などの物資を配布。現地では、近隣の村の青年たちが手伝ってくれました。ネパールのパートナーNGOのスタッフがネパール語で話したことを支援地域の言語に訳して通訳をしてくれたのです。

海外と日本国内での災害対応の知見をどう活かしていくか

ネパール洪水の支援活動を行っている間、日本でも大雨や台風の被害が多発しました。シャンティは台風19号で氾濫した長野県・千曲川周辺で、子どもの見守りや避難者の傾聴活動を行っています。ピースウィンズは千葉県鋸南町で物資支援と、長野県で医療支援を行っています。

【シャンティ栗本】
海外と国内の緊急支援は異なる点が多くありますが、まず表面上も大きく違います。海外での支援活動は物資配布が多く、大量の物資を調達したり、倉庫を借りたり、配布のための会場の準備など、現場は体育会系のような機動力が求められました。日本では、早い段階で物資のニーズはなくなる一方、子どもや高齢者の心のケアのための傾聴活動などのニーズが高まり、心理的に配慮すべき場面が圧倒的に多いと感じました。海外でも国内でも、まずは衣食住が確保され、次に心理的ケア、というようなニーズ構造は共通しているはずです。海外の場合はベース部分が満たされていないことが多いと思っています。

シャンティ国際ボランティア会 海外緊急救援担当 栗本愛
栗本 愛(シャンティ国際ボランティア会 事業サポート課 海外緊急救援担当)

【ピースウィンズ西城】
日本人、特に東北の方はあまり自分の意思を主張しない方が多く、気持ちを察する必要がありました。避難所を出て仮設住宅へ移るときの喜びや、モノが買えず、お金も引き出せない状態が解消され、支援物資ではなく欲しいものがお金で買えるようになったときの喜びなどを感じることができました。

ピースウィンズ・ジャパン 東北事業 南三陸町担当 西城 幸江
西城 幸江(ピースウィンズ・ジャパン 東北事業 南三陸町担当)

【ジャパン・プラットフォーム柴田】
海外でも日本でも支援する側の精神・方針は同じはずです。日本は生活水準が高いため、途上国の方が回復するスピードするが早いと言われています。南スーダンのように元々電気や水道が整っていない地域であれば、それほど時間がかからず元の生活に戻れますが、日本で家を失った人が、電気や水道のない生活をするのは難しい。

柴田 裕子(ジャパン・プラットフォーム 緊急対応部 部長)
柴田 裕子(ジャパン・プラットフォーム 緊急対応部 部長)

海外で緊急救援を行ってきましたが、東日本大震災で初めて日本で支援を行った際、支援の難しさを感じました。海外では、外国人のため期間が経てばいなくなる存在ですが、日本人同士だと、何を必要としているのか、本当のニーズが分かりませんでした。海外だと、感情移入しないよう必ず受益者と距離をとっていました。日本人同士だと距離を置くことが難しく、冷静な判断ができなくなってしまい、バーンアウトしていく人がたくさんいました。

協働することのメリット

シャンティ栗本は「複数の団体で協働するメリットを感じた」と言います。「各団体、それぞれの強みがある。一つの団体が持っている力やノウハウは限られているが、他団体と一緒に活動することは良い学びになる」。

他団体と協働するメリットについて説明するシャンティ栗本

質疑応答

Q.ネパールで一緒に事業を行った現地NGOをどのように選定したのか。
A.ネパールでは、海外の団体が活動を行うためには現地NGOとパートナーシップを結び、一緒に活動する必要があります。シャンティは2015年に発生したネパール大地震で最初に活動を始めたときから協働している現地NGOと活動しています。ピースウィンズも地震発生後から共に活動し、他の事業でもパートナーとして組み、ノウハウが蓄積されている現地NGOと活動しています。

Q.配布物資はどのような基準で選ばれたのか。
「スフィア・スタンダード」の基準に則って、現地のニーズを踏まえて決めています。一つの家族が5~6人として量を決めています。

Q.ネパールの被災地域への移動手段や宿泊先はどのように手配しているのか。
現地のパートナーNGOの車を借りるか、レンタカーで移動しています。道路は整備されているとは言え、崖の側を走るため、怖い思いをした。宿泊先は安全を考慮して選び、日本と連絡を取り合うためインターネット環境も不可欠です。見つけたゲストハウスは虫がたくさん出たり、水しか出ないため、涼しくなってくるとシャワーがつらかった。

海外での経験をどのように国内災害での支援に活かせるか

人道支援の最低基準を定めた「スフィア・スタンダード」などの国際基準はありますが、国や被災状況によって柔軟に対応する必要があります。例えば、日本でおにぎりを炊き出しで提供するだけでは、必要カロリーや必要栄養素のスタンダード(最低基準)を満たすことはできません。
海外の知識を国内に活かすこともできるし、防災大国である日本の知見を海外支援に活かすこともできます。海外と国内、両方で緊急救援を行っているNGOは、それぞれの経験を活かす場面があるはずです。

今回、複数のNGO から国内外での緊急救援の経験を持つ3人が登壇したことで、互いの知見やノウハウを共有することができました。複数のNGOが協働することで、よりよいアイディアや幅広い活動の可能性が広がります。

このレポートをご覧いただいている今、この瞬間も、世界のどこかで自然災害や紛争が発生し、多くの人々が人道危機に直面している可能性があります。緊急下の支援活動経験のある各団体をぜひ、今後も応援いただけますと幸いです。

共催
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン
特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム

報告
シャンティ国際ボランティア会
広報担当 召田

 

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