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アフガニスタン事務所スタッフ来日イベント「紛争から本と教育を守りたい」開催報告

2020.2.17   アフガニスタンイベント報告

アフガニスタン事務所スタッフ来日イベント「紛争から本と教育を守りたい」開催報告

2020年2月12日、READYFOR株式会社のスペースをお借りし、シャンティ・アフガニスタン事務所スタッフの来日イベントを開催しました。

アフガニスタン事務所スタッフ来日イベント「紛争から本と教育を守りたい」

アフガニスタンは、タリバンやISILなどによる攻撃やテロが相次ぎ、隣国からの難民帰還などで情勢が安定せず、国民の80%が何らかの心理的ストレスを抱えていると言われています。そんなアフガニスタンで長年活動されてきた中村哲医師が2019年12月、銃撃により命を落とされました。中村医師のご冥福をお祈りするのと同時に、私たちが知らなければならない事件の背景やアフガニスタンの現状について、アフガニスタン事務所職員からお話させていただきました。

登壇者プロフィール

アフガニスタン事務所スタッフ来日イベント「紛争から本と教育を守りたい」開催報告

【中央】ワヒド・ザマニ(シャンティ・アフガニスタン事務所 事務所長代行)

2003年にシャンティに入職。生まれた後に内戦が激化し、パキスタンで難民として生活していた経験有り。パキスタンの難民キャンプで薬物中毒者へのリハビリを行う団体で活動を行っていたが、2001年開始したシャンティの活動にも参加。現在は、現地代表を務め緊急救援事業、教育開発事業などの指揮をとっている。

【右】ハミドゥッラー・ハミド(シャンティ・アフガニスタン事務所 緊急救援担当)
2018年9月からシャンティの緊急救援事業に参加。シャンティに関わる前までは他のNGOで水・衛生事業に従事。シャンティではアフガニスタン東部で発生している帰還民や国内避難民を対象とした水衛生事業や女性や子どもの保護に関わる事業に従事している。

【左】山本英里(シャンティ・アフガニスタン事務所所長 兼 事務局長)
2001年にインターンとしてタイ事務所に参加。2002年、ユニセフに出向しアフガニスタンで教育復興事業に従事。2003年より、シャンティのアフガニスタン、パキスタン、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、カンボジア、ネパールでの教育支援、緊急救援に携わる。アジア南太平洋基礎・成人教育協議会(ASPBAE)理事。2019年より現職。

アフガニスタンの治安状況

アフガニスタンは中央アジアに位置し、6カ国(パキスタン、イラン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、中国)と国境を設置しています。地理的な背景もあり、多くの民族が暮らす多民族国家です。1970~1980年代にソ連の侵攻を受けていたアフガニスタンは、1986~1995年にかけて内戦が悪化し、1995~2001年タリバン政権による恐怖政治が行われていました。2001年にカルザイ大統領になり、2014年の大統領選挙で初めて民主的に大統領が変わりました。

アフガニスタン事務所スタッフ来日イベント「紛争から本と教育を守りたい」開催報告

長年の戦争で、アフガニスタンの教育状況は悲惨な状況にあります。学校は破壊され、政府の建物も残っていない状況からの復興でした。日本をはじめ、多くの国際的支援により、いま、学校の約半数が再建されています。もちろん、残りの学校は再建されておらず、先生が不足しているなど、多くの課題を抱えています。

治安状況も問題になっており、市民が爆弾テロなどに巻き込まれた死傷者数は、2019年もワースト記録を更新してしまいました。毎年1万人以上が紛争によって死傷しています。特にカブール、ナンガハルなどの地域で被害が出ています。治安の悪化によって国際社会の支援が減り、外国企業が撤退、教育を受けた人材が国を離れています。

4回目の大統領選挙と和平合意へ向けた動き

2019年は、アフガニスタンで4回目の大統領選挙がありました。900万人の有権者が投票すると思われていましたが、投票は182万人にとどまりました。大統領選には18名の候補者が出馬し、暫定結果はガニ大統領が50.64%を占めています。しかし、このアブドラ行政官が認めておらず、いまだ選挙結果が確定せず、いつ確定するかもわからない状態が続いています。

2019年は和平合意に向けた動きもありました。アメリカとタリバン、アフガニスタン政府による交渉が進められています。公式、非公式の対話の中で、タリバン側はアメリカの撤退を要求していますが、アメリカの条件はタリバンが停戦することです。タリバンが統制力をもって、停戦を実行できるかどうかが重要です。アフガニスタン人は停戦合意を強く望んでいます。停戦合意によって治安が悪い地域の7割で治安状況が回復するのではないかと予想されています。タリバンの中にも和平合意に賛成しないグループがあり、ISILと組んで攻撃が激化するのではないかという懸念もあります。

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※イベントの直前に、アフガニスタンよりアメリカとタリバンの交渉が成功し、タリバンが停戦に合意したというニュースがありました。

米とタリバン、7日間「暴力行為削減」で合意報道…合意順守なら正式な停戦合意へ : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン

中村医師の事件について

長年におよぶ戦争で、身近な知人、友人を亡くし、学校やモスクを亡くし、全てを亡くした40年間でした。その中でも、中村医師が亡くなったことはとても悲しい出来事でした。中村医師の事件は混とんとした状況で、犯人や動機などを解明することが難しく、政府からの公式発表もありません。中村医師は日本人だけでなく、アフガニスタンのヒーローです。アフガニスタンでは女性も子どもも中村医師の事件を悲しみました。中村医師は本当にアフガニスタンの国のため、愛情をもって、貢献してくださった。中村医師に限らず、アフガニスタンの復興に尽力した人が事件に巻き込まれるのは本当に残念です。

中村哲医師がアフガニスタンで追悼されている様子を報告するアフガニスタン事務所スタッフ

中村医師のご遺体が運ばれるとき、大統領自らが誘導する姿がテレビで何度も流れました。大統領をはじめ、多くの要人、市民が悲しみ、アフガニスタン国民が一つになって中村医師を送り出しました。中村医師の功績をアフガニスタンの人は忘れず、ずっとそれを胸に活動していくと思います。

特に、同じ日本のNGOで働き、人道支援に関わるものとして、彼の意志を継いで、私たち若者が復興に携わっていかなければならないと思います。中村医師の名前は、アフガニスタンで人々のために働く人の呼称として使われるようになりました。中村医師からアフガニスタンにもたられさたものは、この場で語りつかせないほど大きなものです。

国内避難民と帰還民

アフガニスタンでは、紛争や干ばつにより、2019年だけで43万人が国内避難民になったと言われています。また、アフガニスタン国外へ難民として逃れていた46万3000人が帰還しています。国内避難民/帰還民はアフガニスタン東部に定住先を見つけ、避難していますが、住む場所や水、食事が足りているとはいえない状況です。多くの人が、住んでいた場所で突然起こった紛争から、着の身着のままで逃げてきています。

避難民の中でも、特に女性への支援が足りていません。また、50万人の子どもたちが教育支援を必要としており、国内避難民の2/3が不衛生な環境で生活し、1/3以上が汚染された水を使用している問題もあります。このような状況に対し、私たちは、ジェンダーに基づく暴力や女性の基本的サービスへのアクセスできないことが課題だと考え、女性のエンパワーメントとコミュニティベースの教室の開設、給水用井戸設備の開設や衛生教育支援を行っています。

イスラム文化圏における女性の教育支援

シャンティは現在、女性センターでの識字教室を通して、女性たちへの教育支援を行っています。アフガニスタン東部は保守的な地域で、女性の教育に反対する層がいて、女性が教育を受けることが難しい地域です。アフガニスタンの女性の識字率はとても低く、アフガニスタン全体の非識字者のうち、60%が女性であると言われています。アフガニスタン東部ではほとんどの人たちが読み書きができません。「文字の読み書きができる」という能力は、自分の身を守るための情報を得られるという意味で重要です。ジェンダーに基づく暴力から女性たちを守り、衛生啓発や識字教室を開設しています。最初はどれだけの活動ができるか不安でしたが、多くの女性がセンターに集まりました。

アフガニスタン事務所スタッフ来日イベント「紛争から本と教育を守りたい」開催報告

女性センターは民家を借りて運営しており、建物の外観からは女性センターだと分からないようにしています。女性たちがセンターへ来ると、選出された地元の女性によってセキュリティチェックを行っています。多くの女性は女性センターで子どもを預けて、識字の授業を受けています。室内の装飾なども女性たちがみずからが作って飾っています。識字教室に通っている女性たちは今まで学校へ行ったことがなく、ほとんどの女性が生まれて初めて学んでいます。あいうえおのレベルから勉強しはじめ、前の日に勉強したことを一つ一つおさらいしながら勉強しています。

女性たちに「どうして勉強しに来ているのか」とインタビューしたところ「女性センターは安心して学ぶことができ、家族も応援してくれている」と答えてくれました。この地域は特に、15歳以上の女性が外を出歩くことはよしとされず、勉強することも難しい状況にあります。他にも「学んだことを自分の母親に教えてあげられることがモチベーションになっている」という声や「コーランを理解できるようになった」、「小さい自分の娘に教えてあげるようになりたい」という回答がありました。中には「自分が早く結婚していなければ、大学で学び、医師になることが夢だった」と話してくれた人もいました。

アフガニスタン事務所スタッフ来日イベント「紛争から本と教育を守りたい」開催報告

ある女性は「短い文章が読めるようになって、夫にもしっかりしているねと言われたことが嬉しかった」と言います。文字の読み書きができることは、女性たちの自信になっています。女性たちは家事も忙しいため、合間を縫って夜も勉強しています。

女性センターは文字を学べるだけでなく、女性たちが集まれる場所であり、新しい友達ができたことが嬉しかったという声がありました。アフガニスタンの女性は、成人になると会えるのは家族だけで、たとえ同じ村であっても、他の女性に合うことが難しいような生活をしていた女性たちにとって、女性センターは世界を広げてくれる場所になっています。

会場でフェアトレード商品と現地出版絵本を展示

シャンティのフェアトレード事業「クラフトエイド」で販売しているアフガニスタンのフェアトレード商品を販売
クラフトエイド」で販売しているアフガニスタンのフェアトレード商品を販売

アフガニスタンで出版している絵本を展示
アフガニスタンで出版している絵本も展示

質疑応答

Q.ワヒドさんのように難民になった後、アフガニスタンに帰る人は多いですか?帰るきっかけは何ですか?
A.紛争が始まって、私の家族は内戦時代にオランダに難民として逃げました。私自身もパキスタンでNGOで仕事をしていましたが、アフガニスタンの復興のため働きたいと思い、アフガニスタンに戻りました。タリバン政権下では教育が禁止されていたため、教育を受けられるよう外国に出ていた人たちが2001年以降、徐々に戻り始め、国のために働こうとしています。

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Q.なぜ女性は勉強できないのか?
A.多くの人がイスラム教のせいだと考えていますが、それは間違いです。イスラム教は男女が教育を受けることを認めています。教育を受けられない大きな理由は、治安不安です。女子生徒が安全に通学できる環境にないため、家族も女の子を学校を通わせられないのです。内戦の影響もあり、女性の先生が少ない、もしくはいない学校もあります。環境をまず整えていくことで、女子教育に消極的な家庭も女の子に教育を受けさせようと変わるはずです。

Q.中村医師に賛同して、活動をしようとする若者はたくさんいますか?
A.中村医師が目指していた美しいアフガニスタンを取り戻したいという思いは私たちにも共通する目標です。中村医師の意志を継いで、活動しようという意欲は国際NGOの職員だけでなく、現地の若い世代にとって、中村医師が目指す目標になっていると思います。

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Q.タリバン時代にもどらないようにするためにはどうしたらいいですか?
A.「忘れないでください」というメッセージがあります。アフガニスタンが内戦状態にあった頃、支援もなく忘れられていたために、現在の混沌とした状態に陥ってしまいました。子どもは読み書きができないまま大人になっています。この悪循環を断ち切らないとアフガニスタンを変えられないと思います。シャンティに限らず、日本全体でアフガニスタンを支援していくことにご理解とご協力をお願いします。

アフガニスタン事務所からのメッセージ

ワヒド「私は毎朝家を出る時、子どもたちや妻に『もう帰ってこれないかもしれない』と思い、家を出ています。自分がやらなければ、だれがやるのか、という想いがあります。若い世代は国を変えようとがんばっています。日本はアメリカに次いで2番目に大きな支援者です。日本の皆さんに感謝しています。ありがとうございます。そして最後に『アフガニスタンのことを忘れないでください』と言わせてください」。

アフガニスタンの教育への支援ニーズは高く、今後も支援の必要性が高まっていくと予想されています。ご支援のほど、よろしくお願い致します。

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イベントの内容は東京新聞で取り上げられました

東京新聞:「中村医師は私たちの目標」アフガンスタッフ報告会 100人参加「遺志継いでいく」:東京(TOKYO Web)

 

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シャンティ国際ボランティア会
竹本

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