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タイ式ロックダウン中のバンコクのスラムのコロナ感染の危機に対してマスク作り支援

2020.4.20   タイ

アジア地域ディレクターの八木沢です。タイから新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が広がり非常事態宣言下のバンコク最大のクロントイ・スラムからです。タイは現在、緩やかなロックダウン中です。タイ式ロックダウンとも呼ばれています。夜間外出禁止令が出ていても高架鉄道や地下鉄等の交通機関は、動いています。しかし、非常事態宣言に伴う経済活動の縮小により仕事は激減。スラムは貧困に加えて、劣悪な環境と人口密集地域で感染が最も深刻な地域です。住民は港湾での荷役やタクシーや露天商、日雇い等の仕事をしています。このスラムのど真ん中にあるのがシャンティが支援するシーカー・アジア財団の事務所や縫製所があります。

タイの新型コロナ禍のクロントイ・スラムの状況と縫製所の女性たちが作る感染防止と仕事・収入支援のマスク作りの今を伝えます。

マスク作りをするクロントイ・スラムの女性たち
マスク作りをするクロントイ・スラムの女性たち

自分が「感染しないこと」と自分から「感染させないこと」

ここクロントイ・スラムの路地裏は人一人がやっとすれ違うことのできる広さ。最初は、どう新型コロナウイルスに対応したらいいのか誰も知りませんでした。自分が「感染しないこと」と自分から「感染させないこと」と、とにかくマスクをして、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を取ることと「手洗い」と「アルコールでの手の消毒」に力を入れていました。それだけでも精一杯でした。タイでも2月には、マスクもアルコールの消毒液を入手するのが困難となっていました。

格差の象徴のクロントイ・スラムの運河沿いの地域 
格差の象徴のクロントイ・スラムの運河沿いの地域

マスクで感染を防ぎ仕事・収入の支援は一石二鳥

新型コロナウイルスの影響で2月下旬になると縫製所の仕事が激減し、日本やタイ国内からの注文が無くなりました。これまでクロントイ・スラムのブランド「フィムー」のバックやアクセサリー、保育園等の制服の注文が完全に途絶えて、縫製所は休業に追い込まれました。縫製所の30年の歴史の中で初めての経験でした。

タイ国内でも2月になってマスクの品切れが続き、入手が困難になりました。それなら得意の縫製技術を生かしてマスク作りが出来ないかと考えました。スラムの地域の感染拡大を防ぎながら、女性たちの仕事と収入を確保することができる。スラムならではの一石二鳥。マスクの内部にはガ―ゼを入れて、上部には特殊な針金を入れるなど品質には拘りました。ミシンを使って一枚一枚丁寧に仕上げたものをタイ国内の支援団体や個人、企業に購入してもらってスラムの住民などに配る仕組み。マスクは洗って何度も使うことができます。

クロントイ・スラムのブランド「フィームー」のバック
クロントイ・スラム発のブランド「FEEMUE(フィームー)」の水に強いタープ素材を使ったバッグ

女性たちが作るマスク
女性たちが作るマスク 内部にはガーゼが入っている

マスク作りの難しさと一枚のマスクの意味

医療の専門家ではありませんが、感染防止と衛生に細心の注意を払ってマスクを作りました。マスク作りは、スラムに暮らす縫製所の5人が中心となっています。大半の女性は縫製所で20年という熟練の技術を持っていましたが、マスク作りは初めての経験。布が不足し、別の色の布を使用して作って洗ったら色が落ちてしまったりもしました。材料の布が不足したり、マスク専用のゴムの購入が難しいため下着用のゴムで代用してみたもののゴムが強くて痛くなったり、失敗を重ねての試行錯誤を重ねてきました。

スラムの中でマスク一枚を配っても感染予防には効果が薄いことは最初から想定されていたため、マスクと消毒用のアルコールのボトルを一緒に配布し、感染予防の知識の啓発活動にも努めました。経験を重ねながら次第にマスクの着用と消毒、検温、ソーシャルディスタンス、さらに地域の消毒へと広がっていきました。

クロントイ・スラムのカンボジア人が多く暮らす家
クロントイ・スラムのカンボジア人が多く暮らす家にマスクを配布

クロントイ・スラムの路地裏
クロントイ・スラムの路地裏

スラム地域では、今も人口が密集し劣悪な環境でウイルスの感染の危機の不安は解消されていません。非常事態宣言下で仕事を失ったスラムの住民たち。経済的に一番をしわ寄せを受ける上に、感染が広がると爆発的に広がる。その中でも推定500万人といわれている外国労働者のカンボジア人たちの状況はより深刻です。国に帰りたくても戻るお金がない。国境は閉鎖している。戻っても仕事がない。都市のスラムでは全てがお金で食べてていけない。タイ政府による日雇い労働者など仕事を失った労働者への支援も外国人は対象外です。カンボジア人だけでなくミャンマー人だけでなくラオス人、さらに高齢者、障がい者などの脆弱層にしわ寄せが広がるのはどこの地域も同様です。

「私たちが社会のために貢献できるのは嬉しい」

「医師や看護師でない私たちが人の命を守るマスクを作って社会のために貢献できるのは嬉しい。何よりの誇りです」。マスクを作るスラムの女性たち全員の共通した思いです。3月から開始したマスク作り。これまでには3,000枚をスラムの住民に配布しました。マスク作りの仕事が無くなりかけた4月に入ってからは、在タイの日本人会から5,200枚の注文が入り、今もマスク作りを続けています。

短期では終わりそうもない新型コロナウイルスとの闘い。「まさかの時の友が真の友」。スラムの女性たちやスタッフと共に現場から未曽有の国境を超えた危機に対して現場の最前線で支援活動に関われるのは、NGO、シャンティの職員としての誇りです。国境を超えて様々な関りの中でご支援して下さる皆様に心より感謝致します。一日も早く、スラムから世界から支援活動が無くなる日を夢と希望にと思う毎日です。

シャンティ国際ボランティア会
アジア地域ディレクター 八木沢 克昌

朝日新聞GLOBE+でも記事を執筆しています

八木沢克昌 著者:朝日新聞GLOBE+

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