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国や時を越えても変わらない「絵本の力」

2020.6.17   事務局長東京事務所より

“めげずに練習を重ねた髭面のアフガン人職員が大声を張り上げて絵本を読み始めます。すると子どもたちの大きな目が一斉に吸い付けられるように絵本を見入ります。”

アフガニスタン事務所所長を兼任する事務局長の山本英里は、アフガニスタン、パキスタン、タイ、カンボジア、ネパールで、子どもたちが「おはなし」の世界に入りこむ瞬間を目の当たりにしてきました。アフガン駐在当時の子どもたちの様子を振り返り、日本から届ける「絵本の力」についてご紹介いたします。

国や時を越えても変わらない絵本の力

私が初めて関わった図書館は、アフガニスタンの伝統的な日干しレンガと難民キャンプで配布されたビニールシート製の屋根で、6畳くらいの一室に、50冊ちょっとの日本の絵本と、紛争でほとんどが焼かれた中かろうじて残っていた数種類の本と、NGOなどが復刻した本などをかき集めて、手作りの図書棚に並べた簡素なものでした。入り口にパシュトゥー語で“図書館”という意味の「キタブカナ」と書いた白い看板を掲げて開館しました。

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写真の絵本:左「ちびゴリラのちびちび」(ほるぷ出版)/ 右「ジオジオのかんむり」(福音館書店)

当時のアフガニスタンは、紛争がようやく終結し、学校へ行ったことがない子どもばかり。絵本を見ることも初めての子どもたちが、本にどんな興味を示すのか、毎朝、近所の子どもたちがやってくるのを待ちました。図書館どころか学校にも行ったことがなく、子どもの居場所もない中、子どもたちは興奮して、本棚は倒され、絵本は宙に舞い、とても収拾がつかない状態でした。これでは、貴重な絵本がすぐになくなってしまうので、一旦本棚はしまい、1冊ずつ絵本を読み聞かせすることにしました。絵本を読む場所を決め、子どもたちに並んで座ってもらうだけで一苦労です。さあ読もう!とすると子どもたちが立ち上がり、前のめりに押しつぶされたり、けんかを始めたり。それでもめげずに練習を重ねた髭面のアフガン人職員が大声を張り上げて絵本を読み始めます。すると子どもたちの大きな目が一斉に吸い付けられるように絵本を見入ります。みな声を静め、お話しの世界に引き込まれていくのです。何回かお話し会を開催すると、何も言わなくても大きな子が小さな子をなだめ、早く読んでもらいたいと大人が言わなくても並んで座り、絵本の読み聞かせを待つようになりました。「子どもたちを集めたら収拾がつかず大変なことになるぞ」と心配していた近所のおじさんたちもその様子にびっくりしていました。アフガニスタンの子どもたちにも絵本の力が効いた!とこれを機に、長年閉校していた学校が再開された際に絵本、図書館活動を紹介していきました。いつしか、学校の方から「ぜひ絵本を使いたい」と依頼が来るようになりました。民族、宗教を超えて絵本がアフガニスタンでも羽ばたいていったのです。子どもの頃よく読んでいた絵本が、遠く離れたアフガニスタンの子どもたちに読まれているのはとても不思議な感覚でした。

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写真の絵本:「はじめてのおつかい」(福音館書店)

悪環境の生活や治安不安の中で、子どもの顔はこんなにも険しくなるのか、といった驚きと、光を失った目が絵本の物語に吸い込まれて再び輝く瞬間に私自身がひきつけられる、そんな経験をタイ、パキスタン、カンボジア、ネパールでさせて頂きました。

デジタル化が進む中、ページをめくる一つ一つの動作がお話しの次の展開への想像力をより掻き立てる絵本は、時に教育の機会を広げ、子どもたちが生きていくために必要な力を養い、子どもの心に寄り添い、限られた環境の中でも子どもたちの世界観を広げていくお手伝いをします。

絵本は、学校の教育現場はもちろん、学校外教育の場、成人教育の場でも活用され、紛争国や紛争後国や貧困地域、少数民族、難民キャンプ、自然災害などで被災した地域など多様な現場で使用されています。

私たちは、そんな絵本の持つ力をより多くの子どもたちに届けたいと願うとともに、皆様と共に絵本の可能性をこれからも探求していけたらと思います。

シャンティ国際ボランティア会
事務局長
山本 英里
 
本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.302 (2019年秋号)」に掲載した内容を元に再編集したものです。※ニュースレター「シャンティ」は年4回発行し、会員、アジアの図書館サポーターに最新号を郵送でお届けしています。
 

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