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オンラインイベント「国際協力の現場から」Vol.1「世界難民の日」特別企画 コロナ禍のアフガニスタンから 開催報告

2020.6.25   アフガニスタンイベント報告

アフガニスタンは、タリバンやISIL などによる攻撃やテロが相次ぎ、隣国からの難民帰還などで情勢が安定せず、多くの国民が不安定な生活を強いられています。そのような状況の中、新型コロナウイルスの影響によって、困難な生活をしていた人々が、より厳しい状況にさらされています。

日本ではなかなか取り上げられないアフガニスタンの現状、コロナ禍における緊急人道支援の状況についてアフガニスタン事務所の所長代行ワヒド・ザマニとシャンティ事務局長山本英里からお話させていただきました。

登壇者プロフィール

ワヒド・ザマニ(シャンティ・アフガニスタン事務所 事務所所長代行)
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2003年にシャンティに入職。生まれた後に内戦が激化し、パキスタンで難民として生活していた経験有り。パキスタンの難民キャンプで薬物中毒者へのリハビリを行う団体で活動を行っていたが、2001年開始したシャンティの活動にも参加。現在は、現地代表を務め緊急救援事業、教育開発事業などの指揮をとっている。

山本英里(シャンティ・アフガニスタン事務所所長 兼 事務局長)
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2001年にインターンとしてタイ事務所に参加。2002年、ユニセフに出向しアフガニスタンで教育復興事業に従事。2003年より、シャンティのアフガニスタン、パキスタン、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、カンボジア、ネパールでの教育支援、緊急救援に携わる。アジア南太平洋基礎・成人教育協議会(ASPBAE)理事。2019年より現職。

アフガニスタンでの避難民支援 国内避難民・帰還民の現状

アフガニスタンでは、長引く紛争により多くの人々が国外に逃れ、難民として生活をしています。世界には約270万人のアフガン難民がいるといわれおり、彼らの多くがイランやパキスタンで生活しています。2016年のイランの経済危機による影響、またパキスタン政府がアフガン難民の本国帰還を促進する政策を実行したことから、多くの帰還民が発生しています。
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アフガニスタン国内においては、紛争の激化により、安全な場所を求めて移動する国内避難民が発生しています。2019年1月~11月までの間に約41万人が国内避難民となり、その内、58%が18歳未満の子どもたちです。帰還民の多くはパキスタンと隣接する東部のクナール県に流入しています。今後も多くの帰還民の流入が想定されることから、継続的な支援、特に子どもたちへの支援が必要とされています。

新型コロナウイルスの感染拡大状況

アフガニスタン保健省の発表によると、2020年6月17日時点の感染者数は26,874名、死者数は504名となっています。2月25日に最初の感染が確認されてから、4月までの感染スピードは緩やかでしたが、5月以降、一気に拡大し、アフガニスタン全土で感染者が急増しています。

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アフガニスタンから

アフガニスタン政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、公的行事をすべて禁止していますが、モスクなどの宗教関連施設は通常通り運営されています。学校などの教育機関は、9月まで休校が決まっており、約900万人の子どもたちの教育に影響がでています。アフガニスタンでは電気やネットの環境が整っていない地域が多いため、オンラインでの教育の普及は一部に留まっており、今後どのように教育活動を継続するのかが課題となっています。

アフガニスタンでの感染拡大の要因は、宗教や文化的背景から症状が出ても報告しない、病院施設職員の対応の悪さから病院に行きたがらない、偽情報の拡散などによってウイルスに対して適切な対応ができない、などがあげられます。
特にSNSを中心に多くの偽情報が出回っており、「ムスリムは感染しない」という宗教者の発言が拡散されたり、「悪い行いをした人に感染する」、「人工的に開発されたウイルスである」などのうわさが蔓延するなど、正しい知識が人々へ伝わりにくい現状があります。

また、ロックダウン中の治安悪化(一般犯罪の増加)、医療や検査体制の未整備(11の検査機関しか機能していない)なども深刻な問題となっています。ジャララバードの病院では、職員の感染拡大により医療が崩壊し、検査センターは閉鎖状態となっています。また、人口の半数近くの住民が、タリバンやISの支配地域に居住しており、援助が届かない状況にいます。

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さらに国境封鎖や移動制限の影響により物価が上昇し、人々の生活を圧迫しています。

新型コロナウイルスだけではなく、武力衝突による死傷者も依然として多く、感染による1日の死者が8人なのに対して、武力衝突による死者は55人と、約7倍の犠牲者を出しています。このような過酷な状況の中、医療従事者やNGO関係者は、最前線で支援活動を続けています。

国内避難民・帰還民への影響、課題

新型コロナウイルス感染拡大は、国内避難民や帰還民の生活を直撃しています。アフガニスタンにおける最初の感染が帰還民であったことにより、新たな国内避難民や帰還民の受け入れを拒む地域がでています。このようなホストコミュニティとの摩擦は、もともと困難な状況にいる彼らの生活を、より一層困難なものにしています。

国内避難民や帰還民にとって、新型コロナウイルスの感染拡大は脅威となっています。しかしながら、日雇いの仕事によって生計を立ている彼らには、日々を生き抜く事の方がより重要となっています。都市封鎖(ロックダウン)により移動が制限させることで収入源を失い、食料の確保もままならない状況が続いており、衣食住の支援が必須となっています。また感染の脅威による心理的影響も大きく、特に女性や子ども達へのサポートも必要とされています。

また国内避難民や帰還民の多くは、十分な教育機会がなかったため、読み書きができません。そのため、偽の情報はときに命を落とす原因にもなります。病気の際に間違った薬を服用して実際に亡くなる人もいます。また衛生や保健に関する知識も乏しいため、正しい情報を届けるための啓発活動を実施していくことも必要とされています。

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子どもたちへの影響

感染拡大の影響を受けている国内避難民や帰還民の中でも、特に、子どもたちへの影響は計り知れません。生活が困窮するあまり、栄養失調・食糧不足などを理由に子どもを手放す家庭も出ています。貧しい家庭の子どもたちは、洗車、靴磨き、ごみ拾い、掃除などで生活費を稼いでいますが、経済的困窮により児童労働がますます深刻化するのではないかと懸念されています。

このような状況下にもかかわらず、政府からの援助はなく、NGO等の支援に頼るしかないのが現状です。

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国内避難民・帰還民への緊急支援事業

シャンティではこのような厳しい環境に置かれている国内避難民、帰還民の人々を対象に下記の3つの緊急救援事業を実施しています。

①ナンガハル県における新型コロナウイルス感染予防のための啓発と衛生用品および緊急食糧配布事業
事業期間:2020年4月27日~7月26日(91日間)
内容:コロナ感染予防の啓発と衛生用品・食糧の配布 場所:アフガニスタン東部ナンガハル県
詳細はこちら

②クナール県における国内避難民・帰還民への教育及び水衛生支援
事業期間:2020年3月27日~2021年3月26日(365日間)
内容:国内避難民・帰還民への教育及び水衛生支援(仮設教室や水衛生施設の設置など)
場所:アフガニスタン東部クナール県
詳細はこちら

③ナンガハル県及びクナール県における国内避難民・帰還民への保護・教育・水衛生支援
事業期間:2019年6月17日~2020年7月16日(396日間)
内容:国内避難民・帰還民への保護・教育・水衛生支援(女性コミュニティへの支援・コミュニティベースでの教育支援・井戸の設置など)
場所:アフガニスタン東部ナンガハル県及びクナール県
詳細はこちら

アフガニスタンからのビデオメッセージ

アフガニスタンの女性センターで活動するライラマ職員から、新型コロナウイルスの感染拡大が活動にどのような影響を与えているのか、ビデオメッセージが届きました。

女性センターの活動地域には十分な医療施設がないため、多くの女性たちが感染拡大に対する不安にさらされていること、また女性や子どもの保護、ジェンダーや衛生といった様々な支援活動が実施できないことに、多くの女性たちが落胆している、といった状況を伝えてくれました。
そして、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるには、予防や衛生に関する啓発活動が非常に重要であると強く訴えました。

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Q&A(質疑応答)

Q.アフガニスタンで本当に必要とされている支援とはなんですか?

アフガニスタンの歴史上、長期化する紛争によって子どもたちへの教育が大きな影響を受けています。教育は、今後の国の復興に必要不可欠な支援です。これまで行われてきた様々な支援や啓発活動によって、子ども、特に、女の子を学校に行かせることに積極的な家庭が増えてきています。今後も、子どもたちが教育を受けることができる環境づくりを継続していくことが重要です。

Q.アフガニスタンの女性がもっとも必要としている支援はなんですか?

教育支援が非常に重要です。識字教室に加え、保護やジェンダーの問題などの啓発活動が求められています。アフガニスタンという男性社会において、女性自身が人権などの問題などに気づくための啓発が行われることで、女性の社会進出を促していくことが期待できます。

Q.アフガニスタンでも遠隔教育の実績がありますか?

アフガニスタンでは、電気やインターネットが普及している家庭が少ないため、オフラインでできる取り組みを実施しています。地方の学校では、社会的距離をしっかりと保ち、午前・午後で生徒を分け少人数で授業を行うなどの工夫もしています。また、在宅で行えるワークシートを作成し、子どもたちに配布するなどの活動にも取り組んでいます。

Q.医療施設は十分な設備が整っていますか?

医療機関での設備等は全体的に不足しています。特に、新型コロナウイルスの検査キットが不足しており、多くの人が検査を受けれずにいます。またマスクも足りておらず、価格の高騰が続いています。マスクが手に入らない人たちは、スカーフで顔を覆ったり、自作のマスクで代用しています。

アフガニスタン事務所からのメッセージ

本日は私たちの活動に興味を持っていただき、ありがとうございます。日本の皆さんに感謝しています。新型コロナウイルスの脅威はアフガニスタンだけではなく、世界中の問題です。このような状況が早く収束することをアフガニスタンからも祈っています。本当にありがとうございました。

アフガニスタンでは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、国内避難民や帰還民のように支援を必要としている人々の生活はより厳しいものとなっています。シャンティは今後もアフガニスタンで支援を必要としている人びとへの活動を継続していきます。

ご支援のほど、よろしくお願い致します。

報告
シャンティ国際ボランティア会
芦田

  • 絵本を届ける運動
  • アジアの図書館サポーター
  • 本の力を、生きる力に。