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【シャンティ・ヒストリー】共に生き、共に学ぶ 難民たちから教わった宝もの(大菅俊幸)

2021.3.19   シャンティ ヒストリー東京事務所より

年4回発行しているニュースレター「シャンティ」に寄稿いただいたシャンティと深く関わりのある方からの記事をご紹介します。本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.273 (2014年冬号)」に掲載した内容を元に再編集したものです。

 

共に生き、共に学ぶ 難民たちから教わった宝もの

 

シャンティ国際ボランティア会専門アドバイザー
曹洞宗総合研究センター講師
大菅俊幸

 

私たちが大切にしている「共に生き、共に学ぶ」という姿勢は、難民との出会いの中から生まれ、その後の様々な体験により育てられました。

「SVAに協力しようと思ったのは、相手から学ぼうという姿勢があるからです」。

SVAに入職して18年になりますが、支援者の皆さんからしばしば聞かせていただいた言葉です。「共に生き、共に学ぶ」。ここにSVAの大きな特徴があると言えるでしょう。かく言う私自身も、ここに魅力を感じて今日までスタッフを続けてきました。

では、この精神はどのような背景から生まれたのでしょうか。SVAの草創期、すなわちその前身であった「曹洞宗東南アジア難民救済会議(=JSRC)」の時代、難民キャンプで体験した様々な体験の蓄積から紡ぎ出されたものであったようです。象徴的だと思われるエピソードを一つご紹介しましょう。

p18サケオⅠ(旧サケオキャンプ) (1)

 

三輪空寂(さんりんくうじゃく)の布施

1980年、多くの青年僧侶のボランティアたちがタイにあったカンボジア難民キャンプに入った時のこと。鉄条網に囲まれたキャンプの中に入ると、家に入りきれない難民たちが地べたに寝そべっていました。あまりの惨状に一行の誰もが声を失いました。少し広い集会所に案内されると、三体の仏像があって、身動きができないほど難民たちが集まっていました。法要が行われることになっていたのです。そして、そののち、突然、挨拶をするように言われました。急なことであり、現状のすごさを目の当たりにしていたので、代表で挨拶に立った僧侶は、「何をしたらいいのかわかりません。皆さんのことを思って日本から来ました」と、正直に伝えるのがやっとでした。すると、一人の年老いた難民がそばに来てこう言うのでした。

「何もしてくださらなくてもなくてもいいんです。今、あなたは私の隣にいる。私たちに友人がいるんだということを教えてくれただけで大きな安らぎと励ましになった。今夜はとても嬉しい」。そう言って、その老人はお鉢に入れたミルクを差し出したのです。日本の僧侶たちはショック以外の何ものでもありませんでした。喰うや喰わずの状況なのに、難民たちはミルクを布施してくれたのです。「助けようと思って行ったのに、こちらが布施をいただいた。痛棒で一喝された思いだった。仏教のボランティアは単なるチャリティではない。『三輪空寂』の布施にこそ、その理想の姿がある。難民たちからそのことを教えられた」。当時の忘れがたい記憶を僧侶の皆さんはこのように伝えてくれました。

p18サケオⅠ(旧サケオキャンプ) (2)

仏教では、「布施する者」「布施を受ける者」「布施されるもの」の三者が対等に支え合い、助け合うことが「三輪空寂の布施」と言われます。僧侶たちは難民を助けに行ったつもりでしたが、むしろ難民たちから大きなことを学びました。助ける側、助けられる側の分け隔てなく、お互いに助け合い、学び合うことのかけがえなさを学んだのです。

「共に生き、共に学ぶ」という私たちが大切にしている精神、そして、相手の文化を理解し、大切にする姿勢はこのような先輩たちの一つ一つの体験から生まれてきたものです。

 

3・11以降とSVA

さて、東日本大震災という未曾有の試練を経た今、時代は大きく変わりました。科学を偏重し、効率や経済至上主義に立ち、大自然に対する畏敬を忘れてしまった人間の傲慢さ、近代文明の限界が問い直されています。同時に、国や政府や大企業に任せっきりにしてはならないこと、平凡な市民一人ひとりが主体性をもって問題解決のために自己ベストを尽くし、協働することが呼びかけられているのではないでしょうか。私たちが新しい日本人として脱皮していくことが世界の変化の大きな鍵になっているように思えてなりません。それは、SVAがめざしている地球市民社会の創造と別の話ではないでしょう。その意味で、いよいよSVAの本領発揮の時がきているとも言えます。

これまでの経験や蓄積を大切にしながらも、今、日本が必要としているものは何か、世界が必要としているものは何か、というスケールに立って、これからのヴィジョンを考えていかなければなりません。果たして、そういう備えは整っているでしょうか。たしかに、時代の変化と共に変わらなければならないもの、変えなければならないものがあります。ただ、どんな時代になっても、変わってはならないもの、変えてはならないものがあることも確かなことです。「共に生き、共に学ぶ」精神はその重要な一つ。いつまでたっても絶やしてはならないスピリット。いや、それどころか、今後益々、世界に浸透させてゆかねばならない灯であると思われてなりません。

p18サケオⅠ(旧サケオキャンプ) (3)

 

本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.273 (2014年冬号)」に掲載した内容を元に再編集したものです。※ニュースレター「シャンティ」は年4回発行し、会員、アジアの図書館サポーターに最新号を郵送でお届けしています。

 

2021年3月25日(木)に、設立40周年記念対談イベント「コロナ以後の地域社会を考える―宗教とNGOの視点から」をオンラインで開催します。宗教学者の島薗進先⽣と、シャンティ専門アドバイザーの⼤菅俊幸⽒による対談を通して、コロナを機に新しい社会をどう切り拓いていけばよいのか、共に考えたいと思います。イベント情報・お申込みは下記よりご覧ください。

設立40周年記念 対談イベント「コロナ以後の地域社会を考える ~宗教とNGOの視点から~」

 

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