シャンティブログ

  1. ホーム
  2. シャンティブログ
  3. クーデターとコロナ禍で子どもたちに届けられたもの、届けられなかったもの ~ミャンマー東バゴー地域での読書推進活動中止のお知らせ~

クーデターとコロナ禍で子どもたちに届けられたもの、届けられなかったもの ~ミャンマー東バゴー地域での読書推進活動中止のお知らせ~

2021.10.15   ミャンマー

皆さん、こんにちは。事業サポート課でミャンマーを担当している松本です。
新型コロナウイルスおよび2021年2月にミャンマーで発生した軍事クーデターの影響により、立正佼成会一食平和基金様と合同で実施している「ミャンマー 東バゴー地域における読書推進活動」を7月末をもって中止することとなりました。

2018年~2019年で実感した移動図書館活動の成果と更なる可能性

当会では2018年からミャンマーの東バゴー地域において移動図書館活動などを含む読書推進事業を、 立正佼成会一食平和基金様と合同で実施してきました。本活動では14館の公共図書館と協力し、210校の小学校へ移動図書館活動を実施し、学校図書館がない地域の子どもたちへ絵本を届けてきました。活動中は子どもたちが夢中になって絵本を読み、読み聞かせに聞き入っている様子が何度も見られました。子どもたちからは「読んだ物語を友達や妹に教えているよ」「絵本を読むことで、礼儀正しく話すことの大切さを学んだんだ」といった声が聞かれました。学校の教員からも、定期的に行われる移動図書館活動を通じて子どもたちに読書習慣が身につき始め、お互いに対する理解度や共感度が増しているとの報告がありました。このような活動の様子を見た周囲の学校からは移動図書館活動の希望が多く寄せられました。

また、本活動では人材育成にも力を入れており、公共図書館職員や学校の教員に対して図書館活動に関する研修を行ってきました。研修では子どもたちが読書から得られる能力についての講義や絵本を使った読み聞かせ技術の練習などを行いました。当初、公共図書館職員は児童図書サービスに初めて触れるため、読み聞かせをすることに躊躇する様子がうかがえました。しかし、研修を通じて理解を深めた後、実際に子どもたちの前で実践したことで、子どもたちとの接し方を学び積極的に読み聞かせを行うように変化しました。

2019年移動図書館活動の様子
移動図書館活動にて子どもたちが自由に絵本を楽しむ様子(2019年)

2020年には新型コロナウイルスの影響を受けオンラインでの活動を展開

しかし、2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大し、新学期が始まる予定だった2020年6月から現在まで、一時的な開校はあったものの、1年以上にわたり学校が閉鎖しています。2020年も継続して移動図書館活動を実施することを計画していましたが、実施が困難となったため、代替活動として公共図書館と協力し、オンライン上で絵本の読み聞かせ動画を配信する「オンライン移動図書館活動」を開始しました。
初めての動画撮影に戸惑っていた公共図書館の職員でしたが、動画数を重ねるごとにノウハウを吸収し、当初月6本/館ほどだったのに対し、今年の1月には月21本/館もの読み聞かせ動画を配信できるようになりました。この背景には、長期にわたって学校が閉鎖され子どもたちの学ぶ機会が失われている中で、公共図書館は少しでも子どもたちに図書に触れる機会を提供できているということが、改めて公共図書館の職員に公共図書館の役割の重要性を認識させたためではないかと考えています。

2021年折り紙紹介動画
読み聞かせ動画のノウハウを活用して公共図書館が作成した折り紙を紹介する動画

2021年2月のクーデターによる治安悪化のため活動中止をせざるを得ない状況へ

新型コロナウイルスの影響により2020年に対面での移動図書館活動が実施できなかったため、2021年に1年間の活動延長を行いました。2021年もオンライン移動図書館活動を継続しながら対面での実施のタイミングを待っていましたが、2月に軍事クーデターが発生しました。クーデターから8カ月たった今もミャンマーの状況は改善されておらず、むしろ悪化しています。

クーデター以降、現在まで、治安悪化により公共図書館との連絡が取りづらい状況が続いています。そのため、公共図書館と一緒に行っていた読み聞かせ動画の配信については、正式に当会から実施を確認することが難しくなりました。また、この間新型コロナウイルスも落ち着きを見せず1年以上にわたり小学校の閉鎖が続いているため、対面での移動図書館活動も実施できる状況にありませんでした。以上から、オンライン・対面ともに公共図書館や学校と活動を続けていくことが困難となり、活動を今後再開できる見込みが立たないことから、7月末をもって本活動を中止せざるを得ないという判断に至りました。

子どもたちへ読書の機会を提供し続ける公共図書館の職員たち

活動は中止となりましたが、本活動を通じて公共図書館職員や学校の教員が習得した技術は定着し、公共図書館と学校との関係性は継続されています。例えば、現在も公共図書館では独自に読み聞かせ動画の配信を続けています。2月には配信を停止した公共図書館が多かったものの、5月にはほとんどの公共図書館が配信を再開しました。また、当会から教授した絵本や紙芝居の読み聞かせ動画以外にも、折り紙や塗り絵、ダンスを扱った子ども向けのレクリエーション動画や、大人向けの一般書を紹介する動画も数多くみられ、公共図書館は本活動で習得した技術を独自に工夫して活用しています。活動中止にあたり、当会では移動図書館活動に関する資料や教材を公共図書館へ譲渡しました。状況が落ち着き、公共図書館が学校と協力し自発的に移動図書館活動を再開しようとした際に、これらの資料を知識のブラッシュアップ等に活用できることを期待しています。

2018年から実施してきた本活動は、子どもたちの読書習慣の定着、公共図書館職員や学校の教員の図書館活動に対する理解の深化などの成果を収めたものの、事業3年目には新型コロナウイルスの影響、延長した4年目には新型コロナウイルスに加えて軍事クーデターの影響を受け、中止を余儀なくされました。ミャンマーに再び平和が訪れるには時間がかかることが予想されますが、当会では引き続き現場に寄り添った教育文化支援事業を進めてまいります。

  • 絵本を届ける運動
  • アジアの図書館サポーター
  • 本の力を、生きる力に。