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【寄稿】カンボジアで絵本と紙芝居をつくる(鎌倉幸子)

2021.11.14   東京事務所より

年4回発行しているニュースレター「シャンティ」に寄稿いただいたシャンティと深く関わりのある方からの記事をご紹介します。

シャンティ国際ボランティア会 専門アドバイザー
鎌倉幸子 かまくらさちこ株式会社 代表取締役

 

ポル・ポト政権下で失われた物語

「本を書ける人がいません。みんな殺されました。大半の本も燃やされました」
1993年にカンボジア王国が正式に成立してからまだ4年しかたっていない1997年5月、初めてカンボジアに行ったときに図書館事業課のスタッフから聞いた言葉だ。内戦終結直後のカンボジアは「知」の源流が絶たれてしまっていた。その先には多くの子どもたちがいるというのに。

しかし、物語は残っていた。兵隊に見つからないようにと洞窟などに本を隠した人たちがいたのだ。内戦前に編纂された「クメール民話集」、民俗伝承集「カティローク」などから物語を選んだ。

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出版された絵本を手に(カンボジア、2000年)

 
当時のカンボジアは高齢者が人口に占める割合が3%程度。内戦で体力のない高齢者の多くが亡くなったからだ。「いま、物語を聞き取らないと、絶滅してしまう」と、村々を回り、民話を収集した。昔話を聞かせてほしいといわれた村人はさぞかしびっくりしたことだろう。それでも、記憶の糸をたどりながら、お話をしてくれた。
「カンボジア人は龍の子孫だからさ」と楽しそうに物語を話す村人の顔を見ながら「カンボジアは物語でできた国だ」と思った。山が一つあれば、その山にまつわる物語が存在する。女性が身にまとうシルクの柄は鱗を表している。
 

カンボジアで物語をよみがえらせる

「木を枯らすなら根から破壊しろ」。恐怖政治を行ったポル・ポトはこう言い、多くの人命を奪っていった。絵本や紙芝居を出版する工程の中で「私たちは祖先から伝わる物語の根を途切れさせない」と多くのカンボジア人が口にした。それはポル・ポトへ叩きつけた挑戦状であり、惨憺(さんたん)たる過去との決別に向けた覚悟のように聞こえた。

①写真内にクレジットあり。物語に画家が絵をつける(カンボジア、2005年)
物語に画家が絵をつける(カンボジア、2005年)
 
カンボジアで本や紙芝居をつくることは、ただ教材をつくることではなかった。失いつつあったこの国の「物語」を、カンボジアの人の「記憶」と「自身の手」でよみがえらせることだった。
そして、バトンを受け取った若者が、新たな物語を描いていってほしいという願いの結晶だった。

 

本寄稿記事とニュースレターについて

本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.312 (2021年秋号)」に掲載した巻末言「道」の内容を元に再編集したものです。※ニュースレター「シャンティ」は年4回発行し、会員、アジアの図書館サポーターに最新号を郵送でお届けしています。

【寄稿】カンボジアの人々と共に(手束耕治)
【寄稿】東日本大震災から10年―伝える心意気―(早坂文明)
【寄稿】ともに学ぶ(藤谷 健)

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