2016.06.10
海外での活動

ミャンマーにおける寺院学校の意義

ミャンマー

ミンガラーバー。
今月よりミャンマーでは新学期が始まりました。

昨年度の学校建設校、ミャレイヨン寺院学校に行って来ました。

2月の竣工式の準備の前は毎日のように顔を合わせていた、校長先生。
お互い久しぶりの再会を喜び合いました。

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ミャレイヨン寺院学校は、今年度も生徒が増え続けています。
政府の教育改革により新しいカリキュラムが導入されたKG学年*の今年度の就学数は65人(先生は2人体制)。
昨年度上の学年に上がれず留年している生徒もいるのですが、それでも多くの生徒が新たに入学しました。

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(先日教員研修で会った先生は生徒の発表に拍手を取り入れるなど児童中心的な教授法を実践)

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(指の呼び方を練習するKGの生徒)

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(今年度からKGの先生は教える内容を教室に掲げる)

近年政府の初等教育無償化政策により過去に比べると公立学校に就学する費用は相対的に下がっているといわれています。

そんな状況でも、なぜ寺院学校の生徒数は減らないのでしょうか。

校長先生はミャレイヨン寺院学校において親が寺院学校に子どもを通学させる理由を4つ挙げてくれました。

①公立小学校は“完全”無償ではない
確かに公立小学校の学費は無償になったそうですが、公立学校では様々な活動があり、その活動のたびに親は出費を求められるそうです。一度の出費は小さくてもこれが何度も続くと家計に響きます。
こういった出費は強制ではないものの、寄付文化が根強いミャンマーにおいてはこの出費ができないことは親にとって心苦しいことなのかもしれません。
こういった出費が苦しい家庭の親は完全無償の寺院学校を選択するそうです。

②服装が自由
近年寺院学校に対しても制服の支援を政府が打ち出していますが、貧しい子どもたちは毎日制服で通えるだけの制服を持っていないそうです。公立学校では制服のルールが厳しいですが、寺院学校では比較的自由なので、周りの目を気にすることなく生徒は通学することができるそうです。

③放課後の塾を禁止している
ミャンマーでは試験に合格するため、チューシンという日本の塾のようなものが存在しています。禁止されてはいるものの、先生の中には学校とチューシンを兼業している人がいます。そういった先生の中には学校内で教科書の内容を全て教えきらずチューシンでそれを補う人がいるそうです。もちろん有償のため貧しい子どもたちはアクセスできません。同寺院学校では先生のチューシンでの兼業を禁止しているため、生徒が安心して学べる環境が整えられています。

④宗教的理由
仏教道徳を好む親は公立学校よりも寺院学校を選択します。もちろん“寺院”学校であるので宗教教育を提供しているという面があります。

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ミャンマー全国におよそ1500校ある寺院学校によってその状況は異なるとは思いますが、現在でも“貧困層受け入れとしての”寺院学校の意義は消えていません。

最後に
ミャレイヨン寺院学校の校長先生は、ご自慢の図書コーナーを見せてこう言ってくださいました。

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放課後毎日交代で2学年ずつが読書をする時間を設けています。
お掃除の当番も作って図書コーナーの維持・管理は完璧だと。

新しい校舎が完成した今、今後は教育の質を改善し、ミャンマーの将来を担う人材を育成していきたいと語ってくださった校長先生。

彼の強い決意から今後のミャレイヨン寺院学校の発展へ期待が持てそうです。

ミャンマー事務所
山田

*KGはKindergartenの略称であるが、幼稚園というわけではない。ミャンマーの教育段階の初めの学年で5歳児が基本的には対象となっている。
KGの先生に対してシャンティが行った教員研修の過去の様子はこちらから↓

「公立学校教員向けの初めての図書館研修」2016年5月13日