東日本大震災被災者支援に携わってから6年目に入ろうとする中で、シャンティの活動は、それぞれの地域の復興状況を見すえながら、地元にその役割を引き継ぎ、収束へと向かって段取りをしているところです。
気仙沼事務所の「まちづくり支援」「子ども支援」「生業支援」の各活動は、未来をになう子どもたち対象の特定非営利活動(NPO)法人「浜わらす」設立をはじめ地域主体の活動に収斂し、岩手・山元の両事務所が取り組んできた移動図書館活動は、それぞれの自治体等にバトンタッチすることになっています。どの支援活動も地域社会再生を目標に、人と人との心の交流を陰から支えることを心がけてきました。それは、シャンティの理念でもあり、アジア各地で発災した自然災害被災者支援で培ってきた心でもあります。地域社会を形づくる大事な要素は、単に情報が伝わるということだけではなく、いかに地元の人と人が心の交流を持てるようになれたか、ということだと思います。勿論それは永遠の課題ではありますが、それにどれだけ近づけたか否かを問うことが肝要だと思います。
これから各事務所収束に向けて行く中で、まだまだ懸念される事柄もあり、特に福島での活動については、また別の大きな問題として残されています。それらを一つひとつ丁寧に対応してゆくことがこれからの課題です。
安楽寺(長野県上田市)住職。シャンティ国際ボランティア会の前身である「曹洞宗東南アジア難民救援会議」(1980年発足)以来、シャンティの活動に参加し、2007年より会長を務めている。
震災当時は考えられなった「海で遊ぶ」ということが、2015年1月に、子ども支援プログラムの中の子どもたちの会議の中で提案されました。
震災後、子どもたちにとって海は恐怖や怒りの対象となってしまい、近寄りづらい存在となってしまいました。しかし、これからもこのまちで暮らすためには、自然と共存していくこととはどういうことなのかをしっかりと考え、地域の人と触れ合いながら、いろいろな視点から震災(津波)と向き合うことが、子どもたちの成長や新しい気仙沼をつくっていく中で重要だと考え、2013年7月子ども支援「あつまれ、浜わらす!」の活動が始まりました。
いまだに海に近づくことが出来ない人たちが多い中で、どのように解釈し、また海で遊ぼうと思ったのだろうか。
活動は、子どもたちが自然を体験して学ぶだけではなく、その中で関わる大人も「子どもたちの成長を通じて、実は私たち大人が海と生きる事を学んでいるのかもしれない」と考えさせられる、大人の学び場にもなりました。
地元で長期的に復興を担う人材としてシャンティのスタッフとなり、子どものための自然体験活動「あつまれ、浜わらす!」を元に特定非営利活動法人「浜わらす」を立ち上げた。
高齢者にも移動図書館のファンは多い
移動図書館の訪問先では、福島県南相馬市内の三地区( 小高区、原町区、鹿島区 )で津波被害、原発被害に遭ったたくさんの方たちと知り合いました。
このご縁を大切にしながら、故郷に戻った方がその場所で少しでも健やかに過ごすことができるような、みなさんがほっとできる場づくりのお手伝いを心掛けます。2016年は小高・原町区を拠点として、娯楽イベントの開催、シャンティの活動地であるアジア圏と地域の方たちとの交流などの活動を進めていきます。
山田町立移動図書館に引き継がれた移動図書館
集会所の中に本を持ち込み貸出をしている
復興にはまだ長い時間がかかることから岩手事務所が撤退後も成果が持続するように、2015年12月で山田町、大槌町、大船渡市の活動のほとんどは地元行政・団体に引き継ぎを完了しました。
2016年は引き継いだ活動がスムーズに移行できるように地元行政・団体のサポートを行います。(活動で使用していた移動図書館車や蔵書は今後も活用してもらえるように寄贈予定)
また、陸前高田市で行っている陸前高田コミュニティー図書室の活動については、新しい図書館の計画に合わせて終了を予定しています。
「ツリーハウス」づくり
2011年3月から緊急救援として始まった宮城県気仙沼市での支援活動は、5年間に及び「子ども支援」「漁業支援」「まちづくり支援」の3分野で被災地域の復興のお手伝いを行ってきました。
私たちが支援してきたこれらの取り組みは、今後も地元の方々によって継続されてゆくこととなり、気仙沼での復興支援活動は、この春、おかげさまで無事に収束を迎えました。その中でも、2013年の夏に始めた自然体験活動「あつまれ、浜わらす!」は、津波を経験した子どもたちが、再び海と向き合うための活動で、シャンティの現地出身職員が中心となって特定非営利活動法人「浜わらす」として継承されてゆきます。