2024.04.02
インタビュー

図書館員として、本を求める人に届けたい|図書館員インタビュー

「絵本を届ける運動」のさまざまなプロセスのひとつに、海外事務所からのリクエストに応じて届ける絵本を選書する行程があります。以前はシャンティ職員だけで検討していましたが、絵本タイトルの多様性や客観的な意見を取り入れるため、現在は本の専門家である図書館員の皆さんに有志で集まってもらい、海外事務所から届いたリクエストを見ながら、おすすめの絵本を伺う会を実施しています。

そのうちのお一人が、新宿区立こども図書館の髙井陽さんです。「絵本を届ける運動」に出会った経緯や、選書会議の様子などを伺いました。

 

絵本を手にした子どもたちの表情に、絵本の持つ力を感じた

シャンティとの最初の出会いは東日本大震災後、当時の広報課長と知り合ったことがきっかけでした。「絵本を届ける運動」に初めて参加したのは、2017年にパシフィコ横浜で開催した図書館総合展だと記憶しています。シャンティのワークショップで翻訳絵本づくりに参加しました。

シャンティの活動を紹介する動画を拝見したことがあります。その動画では、絵本を積んだトラックが舗装されていない道を活動地まで苦労しながら走り、最後には絵本を手にした子どもたちの笑顔が待っていました。さまざまに厳しい環境下で絵本を手にして喜びにあふれるその表情に、絵本の持つ力を感じました。

それと同時に、自分がそのお手伝いをしているということを認識し、役割の重さを感じました。なによりも図書館員として「本を求める人に届けたい」と思います。

 

新たな発見や気付きがある選書会議

選書会議でとある絵本を紹介した時に、予想外の理由で引っかかったことがありました。それはオノマトペが絵本に登場することでした。オノマトペは国によってニュアンスが異なり、翻訳する時も表現が難しいということで、自分としても新たな気づきでした。幼児向けの絵本には、かなりの確率でオノマトペが登場するので、選書の難しさを感じています。

また、翻訳シールを貼るために文字と絵が被っていないか、といったチェックポイントも新鮮な発見でした。絵本を見る上で新たな角度が加わりました。選書会議では、一緒に協力している仲間の図書館員との情報交換もできるので、新たな発見や気付きがあり、貴重な知識や情報を得る機会にもなっています。

選書会の様子(2023年)

 

新たな未来の担い手になってくれることを願って

「絵本を届ける運動」に携わらせていただくことで、子どものころから絵本に触れること、またそこから知識を得ることの大切さに、改めて気付かされました。活動地の子どもたちが絵本を手にした時の喜びは、何にも代えがたいものだと思います。

近年では難しいテーマの絵本も増えてきて、読み手が求める興味の幅が広がっていると感じています。そんな中で、「絵本を届ける運動」に合う絵本を探すのが楽しみにもなっています。絵本を手にする皆さんにより大きく、より広い世界を知ってもらうために、これからも活動地にたくさんの絵本を届けてください。そして、絵本を読んで大人になった子どもたちが、新たな未来の担い手となってくれることを願っています。

 

<ほかの図書館員の声>
・とても大事な活動だと思っています。大変なこともたくさんあると思いますが、絵本で救われる子どもたちがいます。これからも、そんな子どもたちのために絵本を届けて欲しいです。子どもたちがどんな環境においても、本を楽しんでもらいたいです。私自身が色々な本に出会えて、純粋に楽しいので。(まゆみん)
・選書会で自分の知らない本とたくさん出会えるので楽しく、何より勉強になります。また、テーマやジャンルがあるので、改めて違う視点から見直したり、じっくり読んだり、普段素通りしてしまう絵本を手に取ったりして、「これだ!」と思う本を見つけた時は、すぐみんなに教えたくなるくらい嬉しくなります。(かずは)
・「絵本の力」「物語の力」を信じています。過酷な環境下にあっても、子どもたちが物語の世界に触れることで、少しでも豊かな心を持って育ってほしいと願っています。大切な活動だと思いますし、その一員(?)としてお手伝いさせていただいていることに大きな喜びと充実を感じています。日本のすてきな絵本が海外の子どもたちの手に届くことは嬉しいですし、機会があれば勤務している小学校でも、「絵本を届ける運動」の話を子どもたちにしたいと思っています!(ともみ)
・日本と違って絵本が少ない国や地域の子どもたちに、絵本にふれることで、その文学性や芸術性を楽しみ、心豊かに生きていってもらいたいです。(ちょこりん)