どうやって絵本を選んでいるの?
「絵本を届ける運動」を通じて活動地に届ける絵本のタイトルは、シャンティの東京事務所と海外事務所、そして絵本の専門家の力をお借りして、半年ほどかけて決定します。
毎年12月ごろ、どの絵本を届けるか候補となるタイトルをリストアップします。そして1月から2月は、候補一覧に対して海外事務所からの意見をもらうために、候補に挙がっている絵本の翻訳文を用意し、候補一覧とともに送ります。それから4月ぐらいにかけて、海外事務所からのフィードバックを参考に、各出版社に在庫数も確認しつつ、届ける絵本のタイトルを決定します。
「絵本を届ける運動」を通じて出会う皆さんから、よく「届ける絵本のタイトルはどのように選んでいるのですか?」とご質問いただきます。今回は、絵本を選ぶプロセスと、シャンティが紆余曲折をへて独自に蓄積してきた選定のポイントなどについてお届けします。
活動当初はロングセラー絵本から
活動当初から10年ほどは『おおきなかぶ』や『ぐりとぐら』、『はらぺこあおむし』など日本で長く親しまれている絵本から選んでいました。読み聞かせが楽しい、どの時代も共通して子どもたちに好まれるタイトルは、今に至るまで変わらずに届けています。
そのほか、「絵本を届ける運動」担当者が図書館に赴き、よさそうな絵本を借りてその中から選ぶということもやっていました。また、出版社の方に伺ったり、絵本の選び方をまとめたガイドブックなども参考にしていました。
届ける絵本として決定する前に重要なポイントのひとつが、出版社にある在庫の数です。活動地に届けるとなると、まとめて数百冊を購入する必要があるため、そもそも在庫が少ないと諦めざるを得ないのです。
必要数の在庫があるか、翻訳シールを貼れるかなど、シャンティ独自のチェックポイントをクリアしたタイトルが候補一覧にあがり、海外事務所からのフィードバックを受けて、届ける絵本を決定するという流れで進めていました。
専門家の力も借りながら
現在も大きな流れは変わっていませんが、2015年ころからは候補一覧を作成する前に、海外事務所から届けてほしい絵本のテーマやジャンルのリクエストを聞くというプロセスが加わりました。日々活動地の子どもたちと接している海外事務所の職員や現地スタッフの意見はとても貴重ですし、活動地の関心や必要性に沿った絵本を届けたいという想いからでした。
そんな中、2016年ごろになると、国内外のシャンティ職員だけで選ぶのはそろそろ限界なのではないかという議論がシャンティ内で起こりました。そこで、絵本タイトルの多様性や客観的な意見を取り入れるため、候補一覧をまとめる上で、本の専門家である図書館員の皆さんに有志で集まってもらい、海外事務所から届いたリクエストを見ながら、おすすめの絵本を伺う会を実施するようになりました。
ちなみに、海外事務所から届くリクエストはさまざまで、その国の状況や文化的背景が関係します。たとえば、農業国であるラオスからは植物の育て方や、天気などの自然に関わる本が求められます。また、移動や職業選択に制限がある難民キャンプからは、ほかの国や民族のことがわかる本、さまざまな職業を知ることができる本などが要望として挙がります。できる限り海外事務所のリクエストにあった絵本をこれからも選んでいきたいと考えています。
2大人気テーマは動物と乗り物
絵本が届く活動地の子どもたちから人気な絵本は、動物と乗り物をテーマにしたものです。人気の絵本は、国関係なく子どもたちの心を湧かせることがわかってきました。
ここ数年リクエストが増えたのは環境問題をテーマにした絵本です。ゴミ問題や森林伐採、温暖化、リサイクルの啓発など、活動国でも表出してきた課題について子どもたちが学べる絵本が求められています。
活動地の図書館員たちからは、異文化交流や平和、災害をテーマにした絵本のリクエストが届きます。これらのテーマは子どもたちにとっては難しいことが多いようですが、図書館員たちの想いとして絵本を通じて子どもたちに伝えたいテーマだということがわかります。
また、活動地で手に入りにくいため届けてほしい絵本としてリクエストに挙がるのが、目に見えない”気持ち”をテーマにした絵本です。自分の悲しい気持ちや怒りの気持ちに気づくことができるような内容の絵本は、絵本文化が広く浸透している日本には数多くありますが、シャンティが活動する国にはほとんどありません。
2023年冬からは、2026年に届く絵本を検討
今年の冬からは2025年に集める絵本(2026年春に活動地へ届ける絵本)の検討を始めます。少し先の未来を想像しながら、絵本タイトルを検討する時間は、シャンティ職員にとっても活動地の子どもたちの暮らしと未来に思いを馳せる大切な時間です。これからどのような絵本が選ばれるのか、乞うご期待です。
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