2019.04.03
緊急人道支援

より良い復興を目指して

海外緊急救援担当の竹内です。
現在インドネシア・スラウェシ島にて被災女性を対象に緊急救援事業を実施中です。
シャンティはインドネシアに事務所がありませんので、インドネシアは過去に地震や津波での緊急支援での経験があるのみです。また、今回のスラウェシ島は全くの初めてになります。地球の歩き方にも、私が滞在しているパルは出てきません。

スラウェシ島ってどこ?

スラウェシ島は、インドネシアにある1万3,000以上ある島々の中で4番目の大きさで、約17万平方キロメートルあります。北海道の約2倍の大きさです。赤道付近にあるのであまり気が付きませんが、インドネシアはとても広大です。現地ではスラウェシ島のことをCelebes(セレベス)と呼んだりもしており、これは植民地時代の呼び方だそうです。また、アルファベットの K の形をしているともいわれています。東西に長く伸びるインドネシアの地政学的には、パプアなどの東部インドネシアをつなぐ玄関口として重要です。

インドネシア スラウェシ島地図

インドネシア スラウェシ島地図

行政区分としては、6つの州に分かれており、西・中部・南東・南・北、そしてゴロンタロ州に分かれています。
都市としては南スラウェシ州にあるマカッサルが一番大きく、日本の領事館もあります。今回震災が発生したドンガラ郡は中部スラウェシ州に属しており、州都のあるパル市の他、12の郡があります。このうち、今回の震災で最も影響を受けた2つの地域で活動をしています。パル市に滞在しながら、北にドンガラ郡、南にシギ郡があり、それぞれの郡で事業を実施しています。ドンガラ郡とパル郡の村へは、パル市内から車でそれぞれ3時間ずつです。

津波に襲われた漁業の町、ドンガラ郡

パル市を出てすぐ目に付くのは、津波によって更地になってしまった地域に援助団体のテントが張られた景色です。ドンガラ郡は海沿いに道が走り、南北に細長い地域です。海沿いであることから、津波の被害が大きく生じています。

ドンガラ郡には港湾があり、港周辺には大規模な倉庫群や、加工場があったそうです。これらが今回の津波によって被害を受け、稼働できなくなってしまいました。港が開かないと、輸出だけでなく、物品の輸入にも影響しますから、震災当初はインドネシア政府と国連機関が港を再開するのに苦労していました。今でも座礁した船がそのまま放置されています。

座礁した船

座礁した船

また、海岸沿いですので、漁村が多いのが特徴的です。今回の活動を通じて訪問をすると、漁業に使う船や網をなくし、仕事ができなくなった家庭が多くいらっしゃいます。
本事業に参加する女性たちの多くが、夫が漁の仕事をできなくなり、家計を支えたいという思いから参加しています。しかしながら、震災の影響は地震と津波だけではありません。今回の地震の影響により、いくつかの村では、海抜が下がってしまい、満潮時には村が水没してしまいます。地盤沈下や液状化の影響により、仮設住宅の設置場所も容易に決めることが難しくなっています。

地盤沈下で夜になると水に浸る村

地盤沈下で夜になると水に浸る村

大地が割れ、崩れ、流された農村、シギ郡

シギ郡は、ドンガラ郡とは対照的に内陸に位置しており、平地から山間部まであります。シギ郡は自然保護区がいくつも存在しており、自然豊かな地域です。シギ郡を南に行き、山を越えると、Lindo湖があり、昨年には湖を船で渡って物資を運びました。今回の震災では、山間部では震災により土砂崩れが発生し、村が孤立する事態が発生しました。実際に私も調査やモニタリングの訪問の際に土砂崩れで道がふさがれていることがありました。また、その後の雨で洪水が発生し、流されてしまった村もあります。

土砂崩れで通行を待っている

土砂崩れで通行止めになっている道

シギ郡は内陸であることから、主な産業は農業です。
米や野菜の田畑が移動中はどこまでも広がっています。また、カカオやコーヒーの生産でも有名な地域なので、今回の事業で女性グループが作る加工食品の一つにコーヒーが入っています。ここで採られたカカオやコーヒーはドンガラの港で加工され、ボルネオ島のカリマンタンに運ばれ、そこから外国に輸出されていくそうです。震災の影響は、震災から離れたこういった内陸地でも見られました。震災によって、多くの村々では、地面の隆起と沈降が発生しており、学校で地割れが起きているといった被害が見られました。液状化現象が起き、農地が使えなくなったり、また灌漑に影響を与え、水が足りなくなってしまった地域が多く存在しています。

干上がってしまった川

川が干上がってしまった村

より良い未来を目指す復興  Build Back Better

仕事がなくなった人の中には、スラウェシ島の重要な産業である採掘業に携わるようになった人が少なからずいます。スラウェシ島は良質な砂や岩石が採掘できることから、良質なコンクリートの材料として、マレーシアやシンガポール、フィリピンなどに輸出され、東南アジアの発展に寄与し、重要な収入源となっています。しかしながら、採掘による環境破壊も問題になっており、市民団体が不法採掘や森林伐採を止めるべく活動していたりもします。

スラウェシ島は、経済的に発展している道半ばでの震災となりました。例えば、2015年のインドネシア全体の経済成長率が落ち込む中で、中央スラウェシは高い成長率を記録しました 。これは多分に鉱業への官民投資があったことが主な理由として挙げられています。しかしながら、依然として多くの住民の主要産業は農業や漁業の第1次産業が中心で、 そういった方々が震災の影響を受けています。

震災からの復興とは、農業や漁業がまたできるようになること、つまり元に戻ることだけではありません。Build Back Better (より良く復興する)という災害復興の考え方の元、シャンティの本事業では、加工食品の生産など、付加価値をつけていくことで、震災前よりも、より良い生活と社会を築くことを目指しています。

シャンティの被災女性の生計回復支援事業資機材供与式の様子

本事業の資機材供与式の様子(左:竹内)

シャンティが供与した資機材の一部

シャンティが供与した資機材の一部

現在実施中の事業は、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成と皆様のご支援を受けて実施しております。

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