2016.04.22
海外での活動

カレン州の図書館を視察して

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

こんにちは。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の菊池です。

ジャパンプラットフォーム(JPF)ミャンマー少数民族帰還民支援事業の一環として、難民キャンプの住民への情報共有のため、3月末にミャンマー事務所と合同で、ミャンマーカレン州パアン周辺の公共図書館、学校図書館、村図書館の視察、及びカレン州内の教育支援団体へのヒアリング活動を行いましたので、その時の様子をご紹介します。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所からは、セイラー所長代行と菊池の2名、ミャンマー事務所からは中原所長とトータ職員の2名が参加しました。

昨年公式に開通したアジアハイウェイのおかげで、事務所のあるタイ・メーソットの対岸の町ミヤワディからカレン州の州都パアンまでは車で約3時間で行けるようになりました。(それ以前はその倍近くの時間がかかっていました。)下の写真は、タイとミャンマーを結ぶ友好橋の一部です。現在、タイ側の入国管理局が工事中で、近い将来この友好橋と入国管理局が繋がる予定です。タイとミャンマーの国境では、年々貿易が活発になるにつれて、人やモノの移動が増えてきており、現在国境周辺の開発が進んでいます。

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今回の視察に当たっては、ミャンマー事務所にカウンターパートである情報省からカレン州内の図書館への訪問許可を取ってもらい、パアンの情報局のサポートのもと、情報局職員や図書館員、学校教員や村図書館運営者から様々な情報を得ることができました。

今回訪問したパアン、コーカレーの公共図書館、パアンの学校図書館については、情報局員の指導のもと、図書館運営そのものはしっかり行われている印象を受けましたが、児童サービスは限られており、子ども向けの図書や読書教材はまだまだ少ないようです。訪問した公共図書館では、ミャンマー事務所がこれまで出版した絵本が配架されており、図書館に来た子どもたちが絵本を手に取って読んでいました。

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(パアンの公共図書館外観)

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(パアンの公共図書館内の様子)

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(コーカレーの公共図書館でミャンマー事務所が出版した絵本を読む少女)

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(学校図書館を視察したパアン第2高等学校の教員の皆さん)

村図書館については、情報局やNGOからのサポートを受けているところも一部ありましたが、村の自助努力で運営されているところが多く、今回訪問した3ヵ所の村図書館では、図書館創設者の「村人のために図書館を通して読書や学習機会を増やしたい」という強い思いが伝わってきました。一方で、予算がほとんどなく、図書や本棚の不足やボランティア図書館員の未定着などが大きな課題として挙げられていました。

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(トゥーゴン村図書館の創設者からのヒアリング)

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(ナウンカミン村図書館の創設者、図書館委員会からのヒアリング)

そして、視察したすべての図書館を通して、カレン語で書かれた図書が非常に少なく(今回の訪問先は主にポーカレン語を話す地域)、特に子どもたちが母語に触れる機会が限られており、母語の読み書きができない子どもたちが非常に多くいました。学校や村によっては、夏休みを利用したサマーコースや授業の一環としてポーカレン語の授業を行っているところもあり、教育省が作成したテキストブックを使用していましたが、それ以外にカレン語で書かれた読み物はほとんど見ることがありませんでした。

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(パアン第2高等学校で放課後に行われているポーカレン語クラスで使用している教科書)

少数民族の言語で書かれた図書が少ないという状況はありましたが、パアンの公共図書館には、政府が発行しているMyanmar Alinnという新聞が配架されており、ミャンマー語の他に、紙面の一面については、ポーカレン語、スゴーカレン語、パオ語、モン語でも書かれていて、非常に興味深かったです。

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(スゴーカレン語で書かれた新聞の一面)

その他、教育NGOも訪問し、カレン州の教育状況に関する情報を収集しましたが、学校教育については、政府系学校と少数民族が運営している学校とでは、指導言語やカリキュラムが異なっている状況があります。難民キャンプの学生にとって、帰還に当たっての一番の懸念は、難民キャンプで受けてきた学校教育を継続して受けていくができるのか、という点にあり、現在のところの帰還予定地とされている場所のほとんどこれまで少数民族勢力が支配してきた地域になるわけですが、ミャンマーの新しい政権の中で、ミャンマーの公教育と少数民族の教育がどのように統合されていくのか(少数民族の教育がどの程度組み込まれていくのか)、今後も注視していく必要があります。

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(カレン州の教育状況を説明していただいたADRAミャンマー事務所職員)

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所では、将来的な帰還に備えて、現在難民キャンプのコミュニティ図書館にある図書や学習教材の将来的な(難民帰還後の)配布先について、カウンターパートである難民キャンプの教育部会と協議を始めています。今回のカレン州訪問で視察した公共図書館、学校図書館、村図書館の情報をカウンターパートに伝えつつ、将来的な帰還民、そしてカレン州の人々が図書を活用できる状況を作り出していけるように、話し合いを進めていきたいと思います。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 菊池