ミャンマーの水事情 仏教国ならではの「水のお布施」の習慣
ミンガラバー!ミャンマー事務所インターン川村です。こちらミャンマーは雨季から乾季に季節が変わり、カラッと晴れた、過ごしやすい気温の日が続いています。
のどかな農村の風景
さて、今日は仏教国ミャンマーならではの「水のお布施」の習慣についてご紹介します。
ミャンマーに渡航して以来ずっと気になっていましたが、道端、学校、木陰などあちこちに水を入れた素焼きの壺がちょこんと置かれています。
道端にちょこんと置かれた水壺
ミャンマー語で「Ye O(Yeは水、Oは壺のこと)」。表面に浸みだした水が蒸発する際に周りの熱を奪い壺全体が冷やされ、暑い屋外でも中の水温が下がるという、合理的な仕組みだそうです。通常は、素焼きの壺、埃が混入するのを防ぐお皿、コップの3点がセットになっています。
も
ちろん学校にも設置されています
こちらは長いこと使われていそうな貫禄が漂っています
なぜこんなにも水壺が町中に!?
誰にでも水を施すことは仏教の功徳の一つで、暑い季節が続く国ならではの風習でもあるとか。ペットボトル入りの飲料水も普及しつつありますが、壺の水は庶民にとってのどを潤す命の水だそう。近年ヤンゴンなどの都市部では、素焼きの壺ではなく、プラスチック製の容器が置かれていることも多いです。
近代的なプラスチック製の容器
こちらは伝統的な壺と近代的なプラスチック製の容器が並んでいますね
その昔は骨壺だった!?
今でこそ水を入れて道路わき、学校などに置かれている水壺ですが、そのずっと昔(2世紀頃)には、ピュー族(チベット・ビルマ語族に属する言語を使っていたミャンマーの古代民族)の人たちは亡くなった人を火葬した後にその骨を保存するために使われていたとか。それがいつの時代からか、骨を保存する以外に、調味料を入れたり、水を入れたりするなど用途が広がったとのことです。ただし、この壺は庶民用であって、位の高い人は壺ではなく、石の中に埋葬されたそう。
壺がどこにあるか確認できますでしょうか?
ミャンマー古代民族ピュー民族のお墓(上流階級の方々用)
水のお布施にはメリットがあった!?
実は、水のお布施をすることで10つのメリットが得られるんだとか。学校で習う知識ではないそうですが、家庭などで口承により語り継がれているもので、ミャンマー人なら誰でも知っているそう。以下が水のお布施を行うことで得られる10つのメリットです;活発さ、名声、清潔、飢えがない状態、喜び、長寿、美、強さ、教養、金銭的な豊かさ…。う~ん。なんて素晴らしいメリット!しかし、10のメリットを得るには一度壺を置いただけではダメで、置いた後も壺が空になっていたら適宜水を汲み入れるなどの定期的なケアも必要になってくるそうです。ミャンマー人はお寺に寄付をするのと同じ感覚で、水壺を設置するのだとか。なぜ、こんなにも町中に水壺が多いのか謎が解けました。
水のお布施を行うことで得られる10のメリット
トータスタッフによる水壺のおはなし!
出張先の図書館で、子どもをあやすトータさん
なんと、ミャンマー事務所ナショナルスタッフのトータさんが水壺にちなんだ短いおはなしを作って共有してくれました!実は全てのページにイラストがあったのですが、紹介しきれないので、イラスト1枚と文章のみで共有します。主人公は、もちろん水壺です。
トータさんによるイラスト「水壺のおはなし」
「みんな、僕のこと知っているかい?」
「時々は雨よけの下にいて、時々は大きな木の木陰にいて、時々はパートナーと一緒さ」
「人々が壺から水を飲む時、とっても幸せを感じるんだ」
「だけど、いつか砕けてしまうかもって不安なんだ。なぜなら僕はもともと土から生まれたから」
「埃除けのカバーと、コップは大親友さ」
「これ(プラスチック製の容器)は僕の弟」
「僕は弟にも感謝しているんだ。だって彼も人を助ける役目を担っているから」
「僕はいつか土に戻るかもしれないけれど、僕のことを忘れないでね」
このブログ内で全てのイラストを紹介できないのが残念ですが、シンプルかつ洗練されていて子どもにもメッセージが届きやすいと感じました。あらゆる生命は生まれ変わりを繰り返す、まさに輪廻転生的な水壺が描かれているのがミャンマーらしさを感じさせます。
敬虔な仏教国を象徴する水壺。ミャンマーに渡航された際にはぜひ探してみてくださいね。最後までお読み頂きありがとうございました!
ミャンマー事務所インターン 川村真由