休校中で学校へ通えない今だからこそ学びたい、世界の子どもの教育事情
新型コロナウイルスの感染予防対策で多くの学校が休校となりました。「学校へ通えない」という状況を初めて経験した子どもたちも多いのではないでしょうか。こんなときだからこそ「学校へ行きたいのに行けない子どもたち」のことについて、考えてみませんか?
学校へ通いたくても通えない世界の子どもたち
世界には、学校に通っていない5歳から17歳の子どもが3億300万人*いると言われています。(*出典:日本ユニセフ 公式サイト,2018)
学校に通えなかったのは、子どもたちだけではありません。子どもの頃に教育を受けられなかったため、大人になっても文字の「読み書き」ができない人もいます。
日常生活で必要な文章を理解して読み書きできる能力のことを「識字」と言い、世界には約7億8100万人*が文字の読み書きができない非識字者と言われています。(*出典:EFAグローバルモニタリングレポート2015、ユネスコ)
https://sva.or.jp/wp/?p=19830
子どもたちが教育を受けられない3つの理由
子どもたちが教育を受けられない理由は、大きく分けると3つあります。
1.学校へ通うことができない
家の近くに学校がない、家が貧しく学用品を準備できないなど、物理的・経済的な理由で学校へ通えない子どもたちがいます。ネパールでは、片道何時間もかけ、山や川を越えてようやくたどり着くような場所に学校があります。家族の収入が少ないため、親の出稼ぎに子どもが連れて行かれ学校へ通うことができない子たちもいます。
2.教育の質
学校へ通えたとしても、適切な指導ができる教員がおらず、十分な質の教育を提供できていないケースがあります。カンボジアでは、内戦により多くの有識者が殺害され、しっかりとした教育を受けた教員が少ないという現状があります。約50の少数民族が暮らす多民族国家のラオスでは、学校の授業で使われるラオス語が分からない少数民族の子どもたちが多く、授業についていけずドロップアウト(途中退学)してしまうケースが多々あります。
3.紛争に巻き込まれた
国内外の紛争や戦争によって学校が破壊され、住む場所を追われ、難民や避難民となってしまう子どもたちも大勢います。アフガニスタンでは、難民として隣国へ避難を余儀なくされた人々が大勢います。帰ってこれたととしても、イスラーム過激派組織(ISIL)やタリバンなどによる攻撃やテロが相次ぎ、治安や情勢が不安定なため、学校が閉鎖されるなど、避難先で教育を受ける機会がないという現状もあります。
教育を受けられないとどうなるのか
教育を受けられないと、どんな弊害があるのでしょうか。
例えば、農家の人々が農業について学ぶことができず、必要以上に肥料や飼料を使いすぎて赤字になってしまうこともあります。また、お金の使い方や貯金の大切さを学ばなかった人たちは、子どもたちを継続的に学校へ通わせることができません。
教育を受けられなかった親の子どもは教育を受けられない可能性が高く、次の世代へと貧困の悪循環が連鎖していきます。そんな「貧困の負のサイクル」を断ち切るため、シャンティは子どもや大人、教育を受けられなかった人たちに「学ぶ機会」を届けています。
https://sva.or.jp/wp/?p=23780
世界に目を向けた学びのススメ
学校へ通えない今だからこそ、普段の授業では触れる機会の少ない、世界の学校と教育の現状について学んでみませんか。アジアの国の現状について学べる映像やワークシート、書籍などをご紹介します。
動画で学ぶアジアの国々
カンボジア「受け継がれる学び舎」~もう二度と失われないように
ミャンマーの子どもたちの学びを守り、未来を支えるための取り組み
本の力を、生きる力に。アジアの子どもたちに届けられた27万冊の本
ネパール大地震から1年:震災から復興へ
35年間アジアの子ども支援に取り組んできたシャンティ国際ボランティア会
ワークシート(小学生向け)
・[PDF]クイズ(国旗や国の場所、言葉について) / クイズの回答はこちら
・[PDF]国紹介シート「世界の子どもたちの暮らし」
・[PDF]ワークシート「難民キャンプの子どもの一日」
書籍(中高生向け)
『私は10歳、本を知らずに育ったの。: アジアの子どもたちに届けられた27万冊の本』
編:シャンティ国際ボランティア会 著:鈴木 晶子、山本 英里、三宅 隆史(合同出版)
『ぼくたちは なぜ、学校へ行くのか。: マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』
著:石井 光太(ポプラ社)
学校へ通えない今だからこそ考えたい「教育」について
世界は今、気候変動や貿易の不均衡、貧困に水・食料の問題など、さまざまな課題を抱えています。数多ある課題の中でも「教育」を改善することで、他の課題解決に課題解決を促進させる効果が期待されています。
突然の休校要請を受け、親も学校も、子どもたちも驚き、どう対応すれば分からないという方も多いと思います。しかし、ネガティブに捉えるのではなく「このような機会はめったにない」とポジティブに捉えるマインドが大切です。このような時期だからこそ、子どもたちの学ぶ力を高め、視野を広げる学びの機会として考え、普段の授業だけでは学べない世界の現状について「学ぶ」きっかけとしてたいだけると幸いです。