最近のミャンマー(ビルマ)難民キャンプの状況
こんにちは。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の菊池です。
東南アジアはちょうど雨季にあたり、タイ国内や周辺国では今年も洪水の被害が報告されていますが、幸い私たちの事務所のあるメーソットではこの1週間は晴れている日が多く、過ごしやすい日々が続いています。
今日は、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプの背景、最近の状況について少しお話させて頂きたいと思います。
ミャンマー(ビルマ)難民キャンプがタイ側国境に公式に設立されたのは1984年で、今年でちょうど30年目を迎えます。60年以上続いてきたミャンマー(ビルマ)政府と少数民族勢力との紛争の中で、特にタイ側と国境を接するカレン州、カレニー州では、村の焼き討ちや強制労働、略奪など、様々な人権侵害が起こり、多くの人々が難民となってタイへと逃れてきました。難民キャンプが公式に設立されてからも難民の流入は続き、2005年以降第三国定住が始まってこれらの難民キャンプから約9万人の人々が第三国へ渡りましたが(その多くはアメリカへの第三国定住)、現在もなお約12万人の人々が、タイ政府が公式に認めている9カ所の難民キャンプで生活をしています。
ミャンマー(ビルマ)国内では、2011年の民政移管以降、新政権の下で諸改革が実施され、それらの取り組みが国際社会にアピールされています。その現政権の改革の柱の1つが少数民族との和解であり、タイ国境においては、2012年1月にミャンマー(ビルマ)政府とカレン民族同盟(KNU)の間で停戦合意が結ばれました。その後、カレン民族同盟も含めて少数民族勢力側は停戦合意に関わる窓口を一本化し、16の少数民族組織を代表する「全国停戦調整チーム(NCCT)」とミャンマー(ビルマ)政府の「連邦和平実務委員会(UPWC)」との間で、ミャンマー(ビルマ)全土での停戦合意に向けた協議を続けられています。そして、その協議がいよいよ大詰めとなり、早ければ今年9月に全土停戦合意に至る可能性がでてきました。
このようなミャンマー(ビルマ)国内の動向を受けて、タイ・ミャンマー(ビルマ)国境の難民キャンプでは、「現時点で難民が帰還できる状況にはない」としながらも、将来の難民帰還の準備に向けた取り組みが進んでいます。特に近年、国際社会の関心が徐々にミャンマー(ビルマ)国内へと移り、難民キャンプを含め国境地域への国際支援が年々減少している中で、国際NGOの支援事業も帰還準備を意識した内容へと絞られてきました。また、昨年までにアメリカの集団定住の募集が締め切られ、今後第三国定住という道が限られてくる中で、将来的な帰還という選択肢が難民の人々の間でも意識されるようになってきています。タイ国内の情勢を見てみると、2014年5月にクーデターが発生し、6月以降、軍政による国境地域での武器や麻薬の摘発が進み、その過程で不法移民労働者も取り締まりも行われてきました。また、その一環でタイ軍による難民キャンプにおける難民のヘッドカウント(所在確認)が行われており、この間、難民帰還に関する様々な噂が流れ、多くの人々が帰還に対する不安に直面しています。
このような状況の中で、UNHCRやNGOの連合体であるCCSDPT (タイ避難民サービス調整委員会)は、KRC(カレン難民委会)/KNRC(カレニー難民員会)との協力の下、初めて”organised repatriation operational plan(組織的帰還実施計画)”を作成することになり、今月から教育や保健などの各セクターのインプットが始まりました。難民キャンプで活動を実施している各NGOの間でも、「緊急時対応計画」の作成が進められています。
このように、将来的な難民の帰還に向けた準備として、現在様々な動きが出てきております。さらに詳細は、10月8日(水)の報告会の際に改めてお伝えさえて頂きます。また、これらの状況を難民キャンプの人々がどのように感じており、どのように将来を見つめているのか、現場で多くの難民に触れる中で感じていることも踏まえて、お話したいと思っております。
報告会の詳細は、こちらのページをご覧ください。⇒https://sva.or.jp/wp/?p=10830
ミャンマー(ビルマ)難民キャンプの「今」にご関心がある方がいらっしゃいましたら、是非こちらの報告会に足を運んでいただけますと幸いです。当日、多くの方にお会いできることを楽しみにしております。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所: 菊池