2025.10.09
海外での活動

ラオス 楽しくラオス語に触れる時間、毎日の学校生活に少しずつ根付いてきました

ラオス
活動風景

ສະບາຍດີ(サバイディ:こんにちは)、ラオス事務所の喜納です。

10月に入り、ラオスでは雨季から乾季に少しずつ移り変わる時期となりました。とはいうものの、時として、しとしとと雨が落ち、現地のラオス人職員によると「10月に入ってこの降雨量は少し多い気がする」みたいです。

 

ラオス事務所の活動に関しては、少数民族児童の教育・学習環境の向上を目指した事業が、今年の10月で、開始から約1年3か月となりました。3年間の事業で、まだ前半、ぎりぎり折り返し地点までは到達していない時期に当たりますが、この1年3か月間で教員や村の住民、教育局の行政職員と力を合わせて取り組んできたことが、少しずつ小さな成果として見えてきました。

本ブログでは、直近の活動を通して垣間見えたそんな小さな成果について紹介いたします。

 

定着し始めた読書推進活動

ラオス北部の山岳へき地で暮らす少数民族の子どもたちは、学校外の生活の中でラオス語を聞いたり話したり、さらには読んだり書いたりする機会はほとんどありません。一方で、教育法は、公教育における教育・学習言語は「ラオス語」であると定めています。普段ラオス語を使用しない子どもたちにとって、算数や理科等、全ての教科をラオス語を使って学ばないといけないという条件は、彼らの学習達成度に深刻な影響を与えています。

こういった状況に応えるため、子どもたちの身近に楽しくそして自然にラオス語に触れられる機会と環境の設置を目指した読書推進活動の導入に取り組みました。

具体的には、初めに教員を対象に読書推進活動の研修を通じた人材育成を行いました。その後、各校において、読書室または読書コーナーの開設を行い、そこに絵本や紙芝居などラオス語を使用した読み物を配架しました。

読書推進活動の研修の様子

 

読書推進活動の研修で読み聞かせの練習をする参加者

 

配布された絵本を村の住人が作った本棚に並べている様子

 

配布された絵本を並べて読書室に装飾を施す教員と児童の様子

 

特に読書空間の開設に至っては、教員のみならず多くの村の住民が積極的に参加したこともあり、対象となる全ての学校に素敵な読書室/読書コーナーが誕生しました。

完成した読書室

 

ただ、それだけでは、読書推進活動は学校における1つの活動としてなかなか定着しません。そこで、各学校区に読書推進活動の伴走支援をしてくれるコミュニティモビライザーと呼ばれる人を配置しました。彼らの協力もあり、現時点では、各学校で読書推進活動が少しずつ定着しつつあります。

ある学校では、教員が読書室のドアを開けると、子どもたちがサンダルを脱いできれいに並べ、列を作り慣れた手つきで入室カードを移動させた後、読み聞かせの時間を待ちわびるかの如く敷物の上に座って待機しています。

教員が絵本の読み聞かせを始めると、子どもたちは真剣なまなざしでお話に聞き入り、時に笑ったり、時に隣の友達とヒソヒソと登場人物について語り合ったりして大いにその時間を楽しんでいます。

入室カードを記録用に移動させる児童の様子

 

読み聞かせの時間を待ちわびている児童の様子

 

お友だちの読み聞かせを集中して聴いている児童の様子

このような光景を見て、これまで学校の授業以外でラオス語に触れることがなかった少数民族の子どもたちが、絵本を通じてラオス語を聞き、ラオス語で聞いたお話を通じて主人公の気持ちを想像したり、解釈したり、そんな機会が子どもたちの学校生活に根付き始めたんだと感じました。

教員による読み聞かせを聴いている様子

 

もちろん、これは小さな一歩にしかすぎず、本格的そして永続的な定着にはまだまだ様々な試行や振り返り等の活動が必要です。また、学校によっても定着の度合に差が見られるのも事実です。

それでも、約1年前までは楽しくラオス語に触れる機会がほとんどなかった少数民族の子どもたちが、今では絵本を手に取り、お話しを読んだりを聞いたりして、友だちとそれについて話しているのです。本の貸し出しをうまくやっている学校の子どもたちは、絵本を持ち帰り家で読んだり、兄姉やお母さん、お父さんに読んでもらったりしているのでしょう。

このように、教員や村人が読書推進に意義を見出し、その活動を学校で習慣化しようと努力していることは少なからず小さな変化と呼べると思います。

本の貸し出し記録を付けている教員と絵本を借りている少数民族の子どもたち

 

今後の活動について

今後は、少数民族児童のラオス語習得に対してもう少し直接的に、教員のラオス語の授業計画・実践の改善や向上を目指した活動を実施していく予定です。また、去った5月から7月にかけて村落教育開発委員会と共に村の教育計画を作成しました。そこで計画された活動の実施状況を追い、その結果を踏まえて次年度の村落教育開発計画の作成を支援する予定です。

本事業のこれからの進捗や成果など、シャンティのブログを通してどんどん掲載しますので、引き続きご覧いただけますと幸いです。

 

ラオス事務所 喜納

本事業は、JICA草の根技術協力事業の助成によって実施しています。

本事業の読書推進活動に関わる過去の活動の様子は下記のブログからご覧いただけます。

<写真の絵本>

  • 『もうちょっと もうちょっと』(福音館書店、作:きむらゆういち、絵:高畠純)
  • 『ミリーのすてきなぼうし』(BL出版株式会社、作:きたむらさとし)
  • 『New, Improved Buffalo』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Sasha Alyson, 絵: Chittakone Vilaipong)
  • 『Who’s hole?』(Action with Lao Children, 作: Khonesavan Sichanthip)
    『Help each other』(Action with Lao Children, 作: Bounleuth Sivixay)
    『This is the house that Jack built』(Action with Lao Children, 作: Mother Goose, 訳: Duangdeuan Bounyavon, 絵: やべみつのり)
    『I want balloons』(Action with Lao Children, 作: Yannavouthi Chantharongsi, 絵: Sengsouly Kattiyasak)
  • 『Animals That I See!』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Soumantha Panyasouk, 写真: Kongsy Vilayphone and others)
  • 『The Ugly Duckling』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Hans Christian Andersen, 絵: Charmlern Phothihoumphan, 訳: Lathsavong Syluanglath)
  • 『The Crab Carries the Fish: I Car Read, Level 2』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Thipnouda Itthipol, 絵: Souliphone Yanladsavong)
  • 『The Story of a Cat』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Siphone Sengvandy, 絵: Seng Xaysawan)
  • 『Ant, Knife, Tied Up (Mot, Mit, Mat): A book for learning Lao』(Big Brother Mouse, Luang Prabang,作: Thong Kham Chanthavong)
  • 『The Naughty Rabbit』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Vannaled Sayyavong, 絵: Gikong)
  • 『What Am I Doing』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Uncle Sasha)
  • 『Little Cow』(Big Brother Mouse, Luang Prabang, 作: Khamla Panyasouk, 絵: Ying Ling Ou)