2022.11.04
海外での活動

NGOの隆盛と今 この30年の変化をみつめて

活動風景

地球市民事業課の市川です。

先日、NGOのネットワークである国際協力NGOセンター(JANIC)より『NGOデータブック2021~数字で見る日本のNGO~』(以下、データブック)が発刊されました。2016年以来5年ぶりの改定であり、NGO424団体を対象にした調査で、NGO全体の動向を知ることができます。

NGOが雨後の筍のように設立された1990年代

私がNGOに入職したのは1990年。NGOと言ってもほとんどの人が知らず、NGOに対する公的な資金支援がほとんどなく、寄附金を集めながらほそぼそと活動していた時代でもあります。しかし、湾岸戦争やコソボ紛争、ルワンダ大虐殺など、国際社会を揺るがすような紛争があり、緊急人道支援を目的としてNGOが設立され、地球サミット(1992年)、世界女性会議(1995年)など国際会議も開かれました。

当会シャンティでも、1991年にはカンボジア事務所設立、1992年にはラオス事務所設立により、タイだけであった事務所が3か国になりました。1995年には阪神・淡路大震災が発災し、シャンティとして国内外の緊急人道支援活動を開始、予算規模も拡大しました。1998年には特定非営利活動促進法(NPO法)が施行、新規のNGO設立が促進され、1990年代には、データブックによると160ものNGOが設立され、まさに、NGOの隆盛期だと言えます。

NGOにとって苦難の2010年以降

ところが、2010年代に設立されたNGO数は40団体に留まり、2014年から数年間で、世代交代や高齢化を含む理由で17のNGOが解散しました。多くのNGOは、理事、職員の高齢化と若手人材不足が課題と言われています。その原因としては、かつては、民間ベースで国際協力に関わるとしたらNGOが大きな登竜門でしたが、いまや社会課題をビジネス的手法で解決を目指すソーシャルビジネスの台頭、民間企業でも、国連で提唱された持続可能な開発(SDGs)や、企業の本業で社会価値を生み出すCSV(共通価値の創造)を目指すことができるようになりました。かつてはNGOを目指した若い人材が、企業やソーシャルビジネスに流れたとも言われています。

2004年チェルディヒィ小学校の青空学級(アフガニスタン)。当時と比べれば、学習環境が大きく改善されました

NGOだからできること

しかし、NGOだからこそ、できることはあります。私は、今まで、アフガニスタンやミャンマーで活動に関わりました。両国ともに残念ながら、国家体制に翻弄されていますが、現地で厳しい交渉しながらも、事務所と活動を継続しています。また、ウクライナ難民の報道と比較すると、アフガニスタンやミャンマーの人々がどのような状況にあるのか、ほとんど報道されることはありません。私たちは、日々の暮らしの忙しさで、報道されないとあたかもその物事が終わったかのような錯覚を覚えますが、今でも、危機的な状況は続いています。世間からは注目されにくい状況と向き合い、より困難な人に寄り添い活動していくこと、それがNGOの使命だと考えます。

社会の変化に対応しながら、「共に生き、共に学ぶ」社会の実現を目指して、よりよい活動を目指していきますので、引き続き、よろしくお願いします。