2023.11.13
海外での活動

ミャンマーの教育改革とともに進んだシャンティの活動を振り返って

スタッフの声
ミャンマー
活動風景

皆さん、こんにちは。ミャンマー事務所のティンミャです。本日はミャンマーの教育改革とシャンティの活動を振り返ってみたいと思います。

移動図書館活動のはじまり

私は2016年に公共図書館との読書推進事業の図書館スタッフとして入職しました。この年はミャンマーの教育にとって歴史的な年であり、「国家教育戦略 2016-21」という政策文書が発表されました。「国家教育戦略 2016-21」にもとづき、学校制度がKG(幼稚園)と1年生~12年生に変更されました。当時、シャンティは情報省と協力し、西バゴー地域の公共図書館で4年間、子どものための読書推進活動を実施しました。活動の一環として移動図書館活動を実施し、子どもたちが自由な時間に読書ができるようにしたり、農村部の子どもたちに読書の機会を届けました。

移動図書館活動の様子

移動図書館活動と並行して、新しいカリキュラムを実施するうえで学校が抱えるニーズの調査も行いました。その結果、新カリキュラムでは、子どもたちに多様な文化や言語、伝統、環境について教えることが求められていましたが、KG(幼稚園)で読み聞かせに使う絵本が不足していることがわかりました。そこで、シャンティでは2018年から2020年にかけて、移動図書館活動の中で、学校への本の貸し出しサービスを行いました。また、情報省と協力して、教員を対象とした絵本を使った読み聞かせの研修も行いました。この活動で累計662,271人の子どもたちが、移動図書館活動の本の貸し出しサービスを利用することができました。

学校の先生の声に応えて学校での図書館活動へ

2018年に実施した教員への調査では、試験の結果よりも児童・生徒の個性を重視したい、すべての学校に図書館を設置してほしいという声が聞かれました。本を読むことで、現代社会に必要な情緒や思考力が身につくという声もありました。これを受け、シャンティは2018年にミャンマーの西バゴー地域で学校図書館事業を立ち上げました。この事業の目的は、学校図書館を活用することで、学校や子どもたちにより多くの学習機会や教材を提供し、新しいカリキュラムの導入を支援することです。2018年から2020年の3年間実施し、西バゴー地域の28の学校に学校図書館を設置しました。また、人材育成にも力を入れ、111人の校長と教員に学校図書館の利用に関する研修を行い、204人の郡教育局や校長、教員に自分たちの力で実施できる学校図書館の運営方法も伝えました。
学校図書館の様子

全国での学校図書館研修を開催

これらの活動を通じて、教育省基礎教育局が学校図書館の重要性を理解し、2019年には、教育省基礎教育局の研修に招待され、ミャンマー全土の300人の校長に向けて学校図書館に関する研修を行いました。この研修はシャンティミャンマー事務所が開発した学校図書館を設置するためのマニュアルに基づいて行われました。研修内容は参加者からも好評で、ぜひ、今後も全国レベルで広げてほしい、マニュアルも学校図書館を設置するうえで非常に参考になるとの声が聞かれました。
校長への研修の様子
(写真は2019年に撮影したものです。)

大盛況のおはなし大会

また、2019年には教員や図書館員の読み聞かせスキルを切磋琢磨してもらうために、第1回おはなし大会を開催しました。この大会は2020年にも開催しました。バゴー地域の公立学校、僧院学校、公共図書館から80名の出場者を含む700名以上が参加しました。子どもたち、教育省や情報省の職員、ご支援者さま等が審査員となり、参加者が読み聞かせを披露しました。大会は盛況で、読み聞かせの大切さを皆で共有した時間となりました。アンケートでは、参加者の52%が読み聞かせが子どもたちの創造性や読書習慣を高めることができると回答し、他の26%は読み聞かせが子どもたちの精神的発達に役立つと回答しました。読み聞かせは子どもたちを惹きつけ、教材や指導方法として、そして図書館での子ども向けサービスにとって重要であると答えた人もいました。
おはなし大会
(写真は2020年に撮影したものです。)

コロナ禍でのオンラインの活用

2020年6月、新型コロナウイルスの流行により、学校が休校になると、シャンティは、図書館に行けない子どもたちのために、オンラインでの読み聞かせ活動を開始しました。2021年1月までに、6本の絵本の読み聞かせ動画と5本の紙芝居の実演動画をアップロードし、7ヶ月間で703の「いいね!」と160のシェアを得ました。紙芝居の動画は絵本の動画よりも人気があり、紙芝居に馴染みのない一般の方も紙芝居を楽しんでくれているようでした。また、休校中もオンラインで学校の教員へフォローアップ研修を行い、人材育成も継続しました。
オンライン読み聞かせ

シャンティの絵本が教科書に掲載!

また、大きな成果の一つとして、2020-21年度のミャンマー語の4年生の教科書にシャンティがミャンマーで出版した絵本の1冊、「ビニール袋の旅」の物語が掲載されました。捨てられたビニール袋がいかに環境や生物に害を与えるかという物語です。また、この物語は環境について学べるだけでなく、ビニール袋が水に沈む音といった擬音語も学ぶことができるのが特徴です。

教員を育成する事業へ

2021年には、ヤンゴンとピーで教員養成学校とその付属学校の学校図書館の改善事業を行いました。教員養成学校とは、将来教員になりたい人を育成する学校です。教員養成学校で学校図書館について指導できる教員を育成するために、指導者マニュアルを作成し、研修を受けた教員が各教員養成学校で362人の教員志望の学生へ研修を行いました。また、416冊のマニュアルと39冊の指導者マニュアルを配布しました。

より困難な子どもたちへ

2022年には、クーデター以降中断していた学校や学校図書館の建設を再開しました。ある対象校では、児童の75%が孤児、25%が移住者と困難を抱えた子どもたちが多い学校でした。この事業によって51人の子どもたちの学習環境が改善され、3,263人の子どもたちが学校図書館で本を利用できるようになりました。今年は西バゴー地域とカレン州で同様のプロジェクトに取り組んでいます。
建設した学校校舎

決してあきらめず、共に歩み、分かち合う

シャンティは、ミャンマーのすべての子どもたちの教育をより良いものにすることを目指し、シャンティを応援してくださる皆さまの支えの下、9年にわたって力を尽くしてきました。新しい教育制度を支援するために学校図書館事業を行い、教員や図書館員を育成し、子どもたちに様々な絵本を届けてきました。子どもたちがより多くのことを学び、より創造的で、自ら考えられるようになるよう、読書や読み聞かせ活動を推進してきました。コロナ禍であっても、これらの活動を止めることはありませんでした。また、孤児など、より多くの支援を必要とする子どもたちのために、学校や学校図書館を建設してきました。これらの活動が、ミャンマーの多くの子どもたちの生活に変化をもたらし、国の発展に貢献することを願っています。

現在、多くの支援団体がミャンマーから撤退していますが、シャンティは決してあきらめません。私たちはミャンマーの人々に寄り添い、共に歩み、手を取り合って前進することで、人々の痛み、悲しみ、喜びを分かち合うことを大切に、教育課題に取り組み続けます。

ミャンマー事務所 ティンミャ