【東日本大震災】「福島大学災害ボランティアセンターとの協働による地域活性化事業」が終了しました
東日本大震災復興支援の新たな取り組みとして2022年より実施した「福島大学災害ボランティアセンターとの協働による地域活性化事業」が2024年末をもって終了しました。
パートナー団体の福島大学災害ボランティアセンター(以下、災ボラ)は、東日本大震災直後の津波被害の泥かき・片付けから活動を始め、今なお震災の影響は色濃く残っていることから「災害ボランティアセンター」という名前にこだわって活動を続けている学生団体です。
本事業では、福島県南相馬市の歴史・生活文化を通した世代・家族・地域・市民間の交流をサポートしたいという考えのもと、復興公営住宅での地域食堂サロンやコミュニティセンターでの世代間交流イベントを実施しました。
コロナ禍の影響が続き、令和4年福島県沖地震が発生するなど、事業実施はスムーズに進まないこともありました。2023年3月16日に福島県を襲った最大深度6強の大地震は、東日本大震災での地震・津波・原発被害という天災・人災で多くの犠牲が出た地域を再び襲った残酷な出来事でした。これにあたる支援活動でいただいたご縁や2018年まで行ったシャンティの支援活動での繋がり、災ボラの繋がりに加え、復興公営住宅のコミュニティ支援の要である「特定非営利活動法人みんぷく」の協力をいただきながら、地域の状況に合わせた事業を実施しました。
〇地域食堂サロン
南相馬市内6箇所ある復興公営住宅の集会所で住民さんと、災ボラの学生が共に料理を作り、交流する「お料理サロン」を実施しました。コロナ禍の影響でこれまで行われてきたサロン活動もなくなり、地域の関りも希薄になっていたようです。学生たちは、復興公営住宅の自治役員会に参加させてもらい、企画を打診するところから始めました。活動を多年度にわたって行うことで、住民のみなさんと深く関わりを持つことができるようになりました。
復興公営住宅でのお料理サロン
〇コミュニティセンターでのイベント
小高区・鹿島区のコミュニティセンターでは、世代間交流を目的としたイベントを実施しました。コミュニティセンターは、子どもからお年寄りまで利用できる施設です。復興公営住宅にとどまらず、様々な場所で広い対象に活動を行うことにより、「世代を越えた交流の場になったと同時に、その交流の一員として繋がれた喜びを感じた」と学生から話を聞くことができました。
小高交流センターでの親子餅つきイベント
しめ縄作り教室の講師は地域の方
活動を通して、コロナ禍での地域交流の希薄化・機会の損失に加え、令和4年福島県沖地震の被災や個別の問題が混ざり合っていると聞きました。中には今年になって、福島県外から戻り、復興公営住宅へ入居された方もおり、震災による移住生活は未だ続いていることに気づかされました。
災ボラもコロナ禍で活動を休止しなければならない地域もあり、震災から年月が経つにつれ活動だけでなく、先達からの理念や思いを引き継ぐことが難しくなっていると言います。
この事業を通して、南相馬の地域交流の機会を作ることができ、現状も知ることができました。震災から年月が経ち、外部支援団体はほとんど撤退し、コロナ禍により地域の行事も失われた中、住民のみなさんは、学生と一緒になって食事を作り交流することは日々の楽しみの一部として感じてくれたようです。
また、災ボラも浜通りに足を運ぶ機会は減り、新たな事業の立ち上げは、現メンバーでは初めての経験だったようです。先達から引き継いだ活動に加え、自ら課題を認識し関係性を構築するという事業形成のプロセスを共に歩めたことは貴重な経験であったと話してくれました。
本事業では、地元福島の学生団体の新たな挑戦をサポートさせていただきました。自治会やみんぷく、市民活動サポートセンターなど、地元の方たちと関わりながら活動できたのは、若者が持つ「巻き込む力」があったからだと思います。それは活動の中でも、被災者と支援者ではない、時には学生が参加者から料理を教えてもらいながら伴走者として活力を与える存在として活躍してくれました。
来年は震災から15回忌を迎えます。インフラの復旧など目に見える復旧は早く見えますが、現在も帰還困難区域の解消や生活再建などにおいては多くの課題が残っています。また、地域コミュニティの維持・再生は重要な課題として向き合い続ける必要があります。その中で、「もう支援に頼らず自立していきたい」という日常生活を取り戻す思いから被災地・被災者という言葉へ違和感を抱える方の声もあります。外部支援団体としても、過度な支援や自ら主体となる活動ではなく、地元主体・協働の持続可能な支援が求められています。
今回、東北に長く思いを寄せていただいたご支援者さまの温かいお気持ちが形となり、多くの方への支援が実施できましたこと、感謝申し上げます。引き続き、「東北と共に」という言葉を大切にしていきます。
国内緊急人道支援担当 中井