難民キャンプの図書館に届く本
こんにちは。ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の菊池です。
私たちの事務所のあるメーソットでは、本格的に雨期に入り、毎日激しい雨が降っています 事務所の周りの道路も一部冠水し、通行止めになっている箇所も見られます。これだけ毎日雨が降り続くと、カラッと晴れた日が恋しいです
さて、今回は私たちの図書館活動の主役でもある、難民キャンプの図書館に届く本について、ご紹介したいと思います 皆さんの中には、私たちの活動の中に絵本出版があることや、「絵本を届ける運動」で日本から絵本が届くことをご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、実際に自分が難民キャンプの図書館にいるとして、一体どんな本が届くのか?という視点でまとめてみようと思います。
1.絵本出版による6タイトル(5タイトル:絵本、1タイトル:紙芝居)の本
2011年は絵本5タイトル、紙芝居1タイトルを出版する予定です。絵本については、2言語(カレン語、ビルマ語)での出版で、それぞれ1000冊印刷し、難民キャンプの図書館はじめ、学校や教育施設、メーソット市内のマイグラント学校に配布されます。5タイトルの絵本のうち、2タイトルは民話絵本、1タイトルはキャンプでの絵本コンクールで選ばれた作品、1タイトルはキャンプにある出版委員会による創作絵本、そして最後の1タイトルはキャンプ内の各民族の歴史の本となっています
その中から、まず、民話絵本の1タイトルの絵本が出来上がるまでのプロセスを簡単にご紹介します。民話絵本は主にカレン族の民話をもとに作成されてきましたが、今回は、私たちの事務所のプロジェクトマネージャーであるセイラ-が物語を書きました。大きな瞳の少女とリスのお話です物語作成後、物語に合わせて絵が描かれます(民話絵本は主にキャンプ内のイラストレーターによって描かれます)。絵が出来上がってからは、スタッフがパソコン上で物語と絵を合わせていきます。出来上がったドラフトを事務所のスタッフが確認、その後難民キャンプ内の編集委員会が最終確認をします。最終確認が終わったら、チェンマイの印刷会社に持っていき、絵本が出来上がります現在は、ちょうど難民キャンプの編集委員会の方に内容の最終確認をして頂いています。来月には、きっとこの絵本が完成するでしょう
実は、もう一つ紹介したい作品があります。それは難民キャンプの各民族の歴史が書かれた絵本です(実際は、絵の代わりに写真を多用しています)。残念ながら写真はありませんが、難民キャンプ内の出版委員会からの提案で、各民族の歴史が描かれた本を作成することになりました。タイ・ミャンマー国境の難民キャンプのうち約80%はカレン族ですが、カレン民族以外の様々な民族の人々も同じキャンプの中に生活しています。先日、この絵本出版に関連してメラキャンプを訪れたとき、キャンプ内の民族委員会の人と話をする機会があったのですが、メラキャンプには10以上の民族の人々が住んでおり、その中にはカレン語が話せないため、学校に行けずに自分の家で勉強している子どもたちがいるという話を聞きました今回、カレン民族も含めて各民族の歴史が描かれた本が作成されますが、その本を読んで、子どもたちが自分たちの民族に誇りを持つとともに、他の民族のことを理解し、助け合っていけるような気持ちが生まれるといいなと思っています
2.成人用図書
図書館の中には、成人用の図書コーナーもあります。成人用の図書は1館あたり毎月40タイトル前後(部数としては100部前後)購入しており、その中にはニュース、雑誌、小説、漫画、一般図書等が含まれています。ニュース、雑誌についてはカレン語のものもあるそうですが、小説、漫画、一般図書ではカレン語の本はほとんどないということで、ビルマ語の本を購入しています
3.「絵本を届ける運動」を通して届く日本の絵本
毎年約10タイトル、合計約4000部の絵本が「絵本を届ける運動」を通してこちらの事務所に送られ、7つのキャンプの21の図書館に配布しています。日本からはカレン語の翻訳シールを貼ってこちらに届けてもらいますが、ビルマ語の翻訳シールの貼り付けは私たちの事務所で行います。キャンプの子どもたちは日本の絵本が大好きです「絵本を届ける運動」に参加してくださった日本の皆さんの温かい気持ちが届きます
4.タイの絵本
日本の絵本以外に、毎年タイで出版された絵本もカレン語、ビルマ語の翻訳シールを貼ってキャンプの図書館に届けています。毎年10タイトル、翻訳の一部は難民キャンプの人たちがボランティアで手伝ってくれます。絵本のトピックは健康に関する作品、農業に関する作品など、様々です
ちょうど事務所でスタッフがカレン語の翻訳シールの切り取り作業をしている最中です
あれ?タイの絵本の中にどこかで見覚えのある話が。。。
「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんが山へ芝刈りに、おばあさんが川へ洗濯に行きました。おばあさんが川で洗濯をしていると、ドンブラコ、ドンブラコ、と・・・」果たして何が流れてきたのでしょうか?おじいさんとおばあさんがその流れてきたものを開けてみると・・・。
スイカから元気な男の赤ちゃんが出てきたとさ
その後のストーリーは多少異なるものの、国が変われば登場するアイテムも変わるのですね
さて、これまで難民キャンプの図書館に届く本を紹介してきましたが、改めて本が図書館に届くまでに多くの方のサポートがあるのだと実感しています。絵本出版のために資金的なサポートをしてくださるご支援者の皆様、日本で翻訳シールを丁寧に貼り付けてくださるご支援者の皆様、そして絵本を一緒に作る難民キャンプの出版委員会、編集委員会、民族委員会の方々、その他スタッフはじめ多くの人々の手を渡って本が図書館に届けられます。海を越えて、山を越えて届く本は、図書館の中で確実に難民キャンプの人々の心の支えになっています
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 菊池