2011.09.19
海外での活動

難民キャンプを巡る状況

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ
活動風景

こんにちはビックリマークミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の菊池です。
タイでは大雨が続いており、北部、中部を中心に洪水や土砂崩れの被害が出ています。事務所のあるメーソットでも、先週は市内のあちこちで洪水が起こっていましたあせるタイのニュースでも洪水被害について連日報道されていますが、今年は例年になく雨が多いようです雨
さて、今日はプロジェクトの課題から見える、タイ・ミャンマー(ビルマ)国境の難民キャンプが置かれている状況、難民の選択、そして、ここ最近のキャンプを巡る状況の変化について書きますメモ 写真がほとんどなく、文字ばかりですが、お時間があるときに読んで頂けますと幸いです。
SVAミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の2010年-2012年の事業目標は「図書館活動が難民キャンプの人々によって主体的に実施されること」です。そのため、図書館活動に関わる様々なキャンプ内組織(教育部会、図書館委員会、図書館コーディネーター、図書館員、カレン青年同盟、図書館青年ボランティアetc.-すべて難民による組織)に対して、図書館活動への主体性が上がるように図書館の管理・運営に関する研修や、図書館の本の貸出規則や本の種類を把握する実践研修を行っています本(下の写真は研修会の様子)


この事業の課題の1つが、研修の対象となっている、キャンプ内組織のメンバーが頻繁に入れ替わることです。研修を実施しても、人が代わる度に蓄積が0になり最初からスタートする、という状態にあります。SVAが雇っている図書館コーディネーター、図書館員も多くのキャンプで半年経たずに人が代わっている現状があり、大きな課題となっています。人が入れ替わる理由は病気によるものやキャンプ内で他の仕事を見つける等もありますが、その中でも第三国定住制度で難民キャンプを離れる、ということが多いようです。研修や様々なキャンプ内組織での仕事を通して技術、能力を身に着けた人材の流出は、SVAに限った話ではなく、難民キャンプで働くNGOが共通して抱えている課題でもあります。

タイ、ミャンマー国境の難民キャンプからは、現在、第三国定住により日本を含めて13ヵ国に難民が渡っています。IOM(国際移住機関)の統計によると、去年(2010年)は11,107人のミャンマー(ビルマ)難民がタイから出国し、アメリカ、オーストラリア、カナダ、フィンランド、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、日本、チェコ、デンマーク、ニュージーランド、イギリス、アイルランド(昨年の出国人数順)で新しい生活をスタートさせています(このうち、90%はアメリカに定住)。ただし、2004年からタイ、ミャンマー国境からの第三国定住が始まり、1,474人(2004年)、2,420人(2005年)、4,911人(2006年)、14,636人(2007年)、17,172人(2008年)、16,690人(2009年)のミャンマー(ビルマ)難民がタイを出国していますが、難民キャンプの人口は未だ14万5千人を越えており、難民キャンプの人口は大きく変化していないのが現状です。なお、2005年からタイ内務省/UNHCRによる難民登録は行われておらず、難民として登録されていない人々は基本的には第三国定住の対象にはなりません。

難民キャンプの中では、国際機関やNGOの協力もあり、教育、職業訓練の機会はありますが、就労の機会は著しく限られています。第三国定住を希望する人の話を聞いてみると、いつか祖国に帰りたいが、子どもたちの将来のために第三国定住を選ぶ、という声がありました。子どもたちの中には、キャンプの中で生まれ育った子どもたちも多くいます。自分の祖国への想いがありながらも、将来への希望にすべてを託して、難しい選択をしているのかもしれません目

さて、難民状況の恒久的解決策として、自主帰還、庇護国での定住、第三国定住がありますが、今年の4月にタイ政府が難民キャンプの閉鎖と難民送還について検討しているとニュースで報道されたり、ターク県知事が難民の自主帰還について言及する等、難民キャンプを巡る状況が変化しつつあります。また、ミャンマー(ビルマ)国内を見ても、「民政移管」で状況が大きく変化しているように見えます。最近のヤンゴンの状況について、他のNGO職員から話を聞いていますが、ヤンゴン周辺ではこの変化をポジティブに捉えている人も多く、ここ数年でミャンマー(ビルマ)国内が大きく変化するのではないか、とのこと。このような政治的変化や、タイ、ミャンマー国境貿易による経済的ニーズ、経済発展に伴う社会的変化、ASEANを含む国際社会の認識が、今後さらに難民キャンプを巡る状況を変化させるかもしれません目

一方、先日ある難民キャンプのキャンプリーダーに、この状況の変化について話を聞く機会がありましたが、国境では未だ政府軍と少数民族側の軍との間で戦闘が続いており、それが激化する可能性もあること、国境に多くの地雷が多く埋まっていること等、まだまだ多くの課題を抱えています。キャンプを巡る状況の大きな変化の流れの中で実質的な様々な課題をどのように解決していくのかが、今後問われてくるように思います。

最後になりますが、タイ、ミャンマー国境の難民が抱える課題について、そしてSVAが行っている難民キャンプでの図書館活動について、東京にて10月5日(水)、長崎にて10月6日(木)に報告会を開催させていただきます。私たちの事務所の所長、及びプロジェクトマネージャーから、ここだけの話を聞くことができると思いますので、是非ご参加くださいニコニコ

その他、SVAの各海外事務所の報告会もありますので、奮ってご参加ください。

皆様のお越しをお待ちしています音譜

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 菊池