2017.11.11
海外での活動

13の民族の集う「難民子ども文化祭」

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ
活動風景
  • こんにちは。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所、田村です。

先週11月3日に「難民子ども文化祭」を開催しました。

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この文化祭は、シャンティがキャンプ委員会と協力して2009年から開いており、毎年開催地となる難民キャンプは異なりますが、今回で第9回目となります。今年は、タイ国境の難民キャンプの中でも一番規模の大きいメラ難民キャンプでの開催となりました。

メラ難民キャンプの住人は2017年9月現在36,591人、その93%はカレン族が占めます(参照: UNHCR Thailand-Myanmar Cross Border Portal)。わたしが普段キャンプの図書館活動を通してかかわるキャンプの住人の多くもカレン族の人たちです。しかしこの難民子ども文化祭は、キャンプ内での少数派の民族も含めて多様な文化の集結する場となりました。アラカン、ビルマ、チン、カチン、カレン、カレニー、ラフ、リス、モン、ムスリム、ナガ、パオ、シャンの13の民族です。

 

  • イベントの様子

今年は、日中の部と夜間の部という二部構成のプログラムとなっており、日中の部では多様な民族を混同した10のグループを組み、読書推進活動などを行いました。そして夜の部では、各民族がステージで踊りを披露しました。

グループでゲームを楽しんでいます。
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歌やダンスはみんなで一緒です。イベント前日には最終の練習がありました。
子どもたちの前でリードしているのは、図書館青年ボランティアのメンバーです。
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グループごとに、一枚の大きな模造紙を自由に飾り付ける創作活動です。
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図書館員と図書館青年ボランティアによる読書推進活動もありました。
子どもたちは大きな絵本の読み聞かせと人形劇を楽しみました。
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・・・ ・・・ ・・・

そして待ちに待った夜の部です。ステージでは13の民族による踊りのパフォーマンスが披露されました。

ビルマ族のパフォーマンス

ビルマ族のパフォーマンス

カレン族のパフォーマンス

カレン族のパフォーマンス

リス族のパフォーマンス

リス族のパフォーマンス

カチン族のパフォーマンス

カチン族のパフォーマンス

13の民族のパフォーマンスの一部はこちらの動画にてご覧いただけます。ぜひお昼の部も合わせて見ていただけるとうれしいです。

 

  • 難民子ども文化祭の2つの意義

イベントに参加した図書館青年ボランティアの一人、ティー・スォー・コーさんは、この難民子ども文化祭のおかげで、「子どもたちはこれまで知らなかった自分たちの伝統や文化について、知ることができる」と言っています。

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(インタビュー動画はこちら

自分の故郷を離れ、隔離されたキャンプで暮らす子どもたちは、自由に自分たちの文化に触れ、学ぶ機会が限られています。特に自分たちの文化的アイデンティティを理由として住んでいた土地、国から移住を迫られた人々は、自分たちの文化の維持と発展に関して非常に脆弱な立場にあります。

そのような境遇にある子どもたちが、伝統衣装を身にまとったり、伝統文化を披露したりすることを可能にする場の一つとなるのがこの難民子ども文化祭です。そしてそんな場を作り出すことによって、文化の維持・継承、子どもたちの文化的アイデンティティを支えることが、この文化祭の一つの目的でもあります。

また、図書館青年ボランティアのノー・オースティーナーさんは、子どもたちの間では、他の民族や文化についてあまり知らないという現状があるので、このイベントを通して「子どもたちがほかの伝統的文化についても見てもっと知ってほしい」と言っています。

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(インタビュー動画はこちら

普段のキャンプ内での生活では、様々な民族の人びととかかわる機会があったとしても、一つ一つの民族集団の持っている伝統文化について触れる機会は限られているようです。

少数派の民族の文化も含め、伝統や文化を対等に披露しあい、共にお互いの文化とその多様性を祝福する場は、異文化への理解や他者への尊重を深めるための貴重な機会を提供します。そしてこれは、この難民子ども文化祭の2つ目の目的でもあります。

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個人的には、私自身もこれまであまり知らなかった民族やその伝統文化のこと、またキャンプは多文化の共存する場であるということを目で見て知ることができた一日でした。同時に、日本の伝統芸能についても披露する機会があったので、自分自身の文化についてもさらに深めることができました。

この一日を通して、共に生き、共に学ぶことのできる平和な社会の実現に、新しい一歩を踏み出せたような気がします。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 田村