2016.03.26
海外での活動

どうなった識字教室 3<成果データ>

カンボジア
活動風景

 

毎度、ネタをひっぱりぎみの江口です。
昨年の識字教室がどうなったか、まずはデータでみます。

12月、7ヶ月間の識字教室が修了しました。

ニーペック(#1)では受講者25名(全員女性)中、23名が修了、
ロンコー(#2)では25名(女性20名、男性5名)中、24名(女性19名、男性5名)が修了、
サンコー(#3)では22名(女性20名、男性2名)全員が修了しました。

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※2館目ロンコーコミュニティ図書館の識字教室の修了式より
みなさん、修了証書を受け取り、満面の笑顔。

Result of 2015 Literacy Class JP

まとめると、コミュニティ図書館3館で合計72名参加、
3名が出稼ぎや家族の看病などの理由で中退したものの、
69名が修了、修了率96%です!

シャンティ現地職員ががんばって、毎日、識字教師に電話し、
7ヶ月間、参加者全員の日々の出欠席を記録し、
休みがちな受講者をみつけると、すかさず気遣いの電話をし、
電話がない人は、激励のために自宅に訪問したりしました。

その結果、修了した参加者69名の7ヶ月間の平均出席率は83%と、
日々の出席率も高水準を達成しました!

Summary of Attendance Rates in Literacy Class for CLC#1-3 2015 JP

11月に出席率が落ちたのは、教育省の都合で2ヶ月遅れて教室が始まったため、
本来なら重ならないよう配慮されている農繁期と重なったことによります。
この事態にシャンティ職員が参加者の自宅に激励訪問し、
農繁期が続く12月であっても出席率を回復させることができました。

昨年は「万人のための教育」の最終年であるため、
教育省は識字教室に関する公式データを公開しましたが、
この国の識字教室の実態からかけ離れており信憑性に乏しいものとなっています。

対象地域の郡教育局職員からの聞き取りによると、
教育省の識字教室は、教室への「登録」実績を伸ばすため、
各集合村自治体が勝手に住民の名前を登録させることなどが慣例となっています。

そのため、教室が始まっても参加者が来ない、
最初は来てもすぐに誰も来なくなり閉鎖するという事例が多く報告されています。

この聞き取りによると、なんとか閉鎖を免れている識字教室でも、
日々の平均出席率は2割前後、修了率は5割に届かないようです。
出席率に対して修了率が高いのは、実績を伸ばすため、そもそも読み書きができる人も登録されている疑いがあります。

世界中、ノンフォーマル教育で活動する団体は、
活動に住民を集めるのに苦労しています。

理由は、ノンフォーマル教育は義務教育でないため強制力が働かず、
活動に参加するかは、住民の自由意志によるためです。
また、こどもと違って、青年・成人はそもそも農作業や家事を含めて仕事を持っていることが多く、
日中は忙しいことが普通です。

「それじゃあ、夜は?」
とおもう方もいるかもしれませんが、
夜は夜で日中の仕事で疲れているため、活動をしてもよりいっそう住民が集まりません。

ノンフォーマル教育では、よっぽど活動が住民のニーズ、興味関心、
都合に合っていないかぎり、住民を集めることが困難です。

そのため、シャンティのコミュニティ図書館事業は、
生活向上のために活動を「実践的」にするのはもちろんのこと、
「遊び」や「くつろぎ」の要素も盛り込むよう配慮しています。

― 楽しみや憩いがある場所に、ひとは自然と集まる ―
という考えです。

この事業は、電気や安全な飲み水へのアクセスがないような貧困農村部を対象としているため、
地域にはこの国だけでなく世界の中でも「最貧困」に位置づけられる方々が多く存在します。
こういった住民の方々は、家族の暮らしを支えるため、
苦境においても絶望せず、明日に向かって毎日を一生懸命生きています。

だからこそ、住民の方々は日々の暮らしの中で、
「心ときめく、心安まる」時間を望み、
そういった空間には足を運びます。

カンボジアだけでなく、世界中のノンフォーマル教育の現場が上述の問題を抱えているため、
シャンティの識字教室データを教育省中央の担当官に共有したところ、
修了率・出席率ともに「驚異的」と賞賛されました。

続く

カンボジア事務所
ノンフォーマル教育事業調整員
江口 秀樹