2015.11.07
海外での活動

【コミュニティ図書館】「シャンティ」モデル政策化、カンボジア全土普及へ

カンボジア

カンボジア教育省が7月30日付けで「CLCミニマムスタンダード」を制定、
シャンティのCLC事業をモデルとし、図書館、多目的ホール、農業・保健衛生、
文化・スポーツ活動など、本事業のアプローチが大幅に採用されました。

先週、教育省とNEP(カンボジアの教育NGOネットワーク)から最終版化し、
すでに制定された「CLCミニマムスタンダード」を共有され、
NGOを対象にこの説明会が開催されました。

「CLCミニマムスタンダード」とは、カンボジアにおけるすべてのCLC
(コミュニティラーニングセンター)の設立、運営に関するガイドラインです。

このガイドラインは、これから開設されるCLCは設立時から満たすことが求められ、
すでに開設されているCLCは(教育省、NGO運営問わず)
2年以内にガイドラインに沿い、認証を受けることが求められています。

シャンティは昨年から本ガイドラインの制作作業部会にNGOとしては単独で関与し、
現場からの唯一の声としてシャンティの哲学、アプローチがガイドラインに色濃く反映されました。
また、ガイドライン制作への貢献が認められ、シャンティは上記の認証手続きが免除されています。

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※左:「カンボジア教育省 省令2429: CLCの設立と運営」教育省英訳
右:省令2429添付資料「CLCミニマムスタンダード」教育省英訳


【内容】

このガイドラインでシャンティのCLC事業が影響を与えた主な点は以下のとおりです。

シャンティからの主なインプット

 図書室の設置と図書館員の配属
現在、図書室・図書館員を持っているCLCはほぼ皆無です。
生涯教育の環境整備に不可欠とみなされました。

 住民に多目的で利用される「多目的ホール」の設置
これは完全にシャンティオリジナルのアイディアです。

 CLCで「しっかり」識字教室の開催
今のところ識字教室をちゃんと実施しているCLCはほとんどありません。

 農業、保健衛生、文化、スポーツ活動も重視
現在、どのCLCも職業訓練以外の活動はほとんど行っていません。

 村ごとにニーズ分析し、それに基づいてCLCの活動を作る必要性
これまではニーズ調査なしに全国一律に服飾などの職業訓練を行い、
実際の収入向上につながっていないことが問題となっていました。

 村の一等地に独立した新しい建物の建設
以前はCLCには学校やお寺の中の既存の建物が使われていました。

 CLC職員にインセンティブの支払い
これまでCLCの職員はボランティアのみでした。

 CLCのsustainability重視→教育省から運営費を支出
これまで教育省から運営費は出ませんでしたが、上記の活動等を可能にするため、
教育省が予算をつけました。

なお、以下の背景から「CLCミニマムスタンダード」がシャンティのCLC事業をモデルに
制作されたことは、カンボジアのCLC関係者の間では周知の事実となっています。

【政策化までの背景】
※詳細は以下のブログ参照

◆「成功例」として教育省年次報告書に掲載!◆
◆モデル化へ大きく前進!◆
◆現地メディア露出まとめ◆

2011年、シャンティはカンボジアで他2団体と協力し、学校図書館のガイドラインである
「学校図書館ミニマムスタンダード」の制作に携わりましたが、
今回のCLCガイドラインに関しては、シャンティがNGOとして単独の関与となりました。

昨年、教育省はガイドライン制作のため、CLC有識者のみで構成される
「CLCミニマムスタンダード」作業部会を発足させました。

この作業部会に加入が許されたNGOはシャンティ含め3団体でしたが、
結果的に出席したのはシャンティのみでした。

教育省、UNESCO、NEPと1年をかけて開催してきたこの作業部会で、
現場からの唯一の声としてシャンティはコミュニティ図書館の独自の哲学、
運営ノウハウを共有してきました。

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※CLCミニマムスタンダード作業部会で、政策提言をしているシャンティスタッフのヴィチェット
(奥右から3番目)
2
※教育省ノンフォーマル教育局2014年度年次報告書

この過程で、今年の3月に開催された教育省の年次会議、Education Congressで配布された
教育省ノンフォーマル教育局2014年度年次報告書には、本事業が成功例として紹介されました。
(写真右下部分)
CLCにかぎらず、事例を紹介されたNGOはシャンティだけでした。
3
※ニーペックCLCへのNEP視察団の訪問の様子

6月にはNEP主催で「生涯学習と持続可能な開発のための教育(ESD)の推進における
CLCの役割」という研修会が開催されました。

主目的は、シャンティのCLC事業から学び、カンボジアのCLC政策を見直すことでした。

教育省ノンフォーマル教育局(副局長とCLC課チーフの高官二人)、
ノンフォーマル教育で活動する主要国際・ローカルNGO約30団体が参加した本研修会で、
シャンティは主役としてノウハウを共有、研修のフィールド訪問先で
ニーペックコミュニティ図書館を披露しました。

この研修会が最後の意見集約の機会となり、
翌月、教育省はCLCガイドラインを最終化、制定しました。

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今後もスタッフ一同、本当に村のためになるコミュニティ図書館を目指していきます。

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※開始から4ヶ月経った現在の識字教室。みなさん、読み書き能力が飛躍的に向上しています!
シャンティのコミュニティ図書館事業が、
カンボジアのモデルとして全国のCLCのよりよい運営に貢献し、
その結果として、学ぶ機会を求めているすべての人たちの暮らしや生き方に
少しでも役立てることを願っています。

応援よろしくお願いします!

カンボジア事務所
ノンフォーマル教育事業調整員
江口秀樹