カンボジア バッタンバンの幼稚園を視察
チョムリアップスオ!カンボジア事務所インターンの佐藤です。
カンボジア事務所では、2025年3月より、カンボジア北部プレアヴィヒア州の2郡3園を対象に、幼稚園へのアクセスと活動の質の向上を目指す事業を実施しています。
本事業の対象園では、園舎の老朽化や教室不足が深刻で、園舎建設へのニーズが高い状況です。現在、建設の進捗は全体の約9割となっており、建設完了後は教室内外の家具や備品の設置を予定しています。
また、幼稚園の活動の質の向上には、人材育成も欠かせません。事業対象園では、多くの教員が小学校教員または契約教員であり、指導力や専門性の強化が必要です。さらに、行政による幼児教育の支援体制の構築に向けて、教育行政職員の能力向上も重要な課題です。
こうした背景を踏まえ、5月28日から29日にかけて、バッタンバン市中央幼稚園および同州エクプノン郡のプレクノレン幼稚園への視察を実施しました。両園は、シャンティの先行事業によって整備され、「遊びや環境を通した学び」に基づく活動の実践を行ってきた園で、昨年度に実施したオッドーミンチェイ州での幼児教育事業でも視察対象となりました。
整備されたバッタンバン市中央幼稚園の園庭
今回の視察には、プレアヴィヒア州教育局や郡行政職員、郡教育局、対象園の園長、教員、学校運営委員会など、30名以上が参加しました。さらに、先行事業から連携を続けている教育省幼児教育局、幼稚部教員養成校、バッタンバン州教育局も参加しました。
幼稚園到着後、園児と教員から出迎えられる参加者
1日目は、バッタンバン市中央幼稚園を訪問し、参加者は2つのグループに分かれて教室や設備を中心に視察しました。園長や教員が各設備について説明を行い、多くの参加者が関心を示していました。
その後は、バッタンバン市中央幼稚園の園長から、園の運営における役割分担、保護者やコミュニティとの連携などについて説明があり、特に教育行政職員や園長から多くの質問が出されました。
バッタンバン市中央幼稚園にて、教室を視察する参加者の様子
2日目は、プレクノレン幼稚園での活動を視察しました。参加者は、「遊びや環境を通した学び」というコンセプトが日々の活動にどのように反映されているのかを、実際に体感しました。教員による児童への接し方や、バリエーション豊かな活動の様子に、多くの参加者が新鮮な驚きを感じたようです。
視察後は、感想共有や質疑応答の時間が設けられました。日案の作成方法や、児童と接する上で留意しているポイントなどが話題に上がりました。
プレクノレン幼稚園にて、屋外での活動を視察する様子
また、視察と並行して、プレクノレン幼稚園の園長から他園の園長や教育行政職員向けにプレゼンテーションが実施され、同園の長年にわたる取り組みや試行錯誤、そこから得られた知見などが参加者に直接共有されました。プレゼンの後は、幼稚園運営に向けた資金確保や、保護者およびコミュニティとの連携といったテーマについて、活発な質疑応答が続きました。
園長によるプレゼンテーション
私自身、バッタンバン州の中央幼稚園への訪問は今回が初めてで、活気があって明るい雰囲気と、園内の随所に見られる環境づくりへの工夫にとても驚きました。また、プレアヴィヒア州からの参加者にとっても、実際の活動を見たり、中央幼稚園の教員から話を直接聞いたりすることで、自身の幼稚園の改善に向けた意欲が高まったようでした。
視察後は、各園で今後の行動計画を立てる時間を設けました。参加者は、視察を通して得た学びをもとに、自身の園で実施していきたい取り組みについて話し合い、発表しました。
作成した行動計画を発表する参加者
全体的に参加者の反応はとても前向きで、今後の研修等を通したさらなる学びの機会に期待する声も多くみられました。今回の視察で得た気づきや学びが、プレアヴィヒア州の幼稚園にどのように還元されていくのか、今後がとても楽しみです。
※本事業は、令和6年度の日本NGO連携無償資金協力事業の一環として実施しています。
カンボジア事務所インターン 佐藤