カンボジアに学校校舎が建つまでの軌跡~株式会社東横インさまご支援の事例から~
チョムリアップスオ!
カンボジア事務所インターンの佐藤です。
カンボジアでは、老朽化した校舎や教室の不足により、子どもたちが安心して学べる環境が十分に整っていません。特に、内戦終結後の1990年代に建てられた木造校舎の老朽化は深刻で、再建のニーズが高まっています。政府や支援団体による建設も行われていますが、限られた予算の中で対応が追い付いていません。また、教室不足に伴い午前と午後の2部制を採用する学校も多く、十分な授業時間の確保という意味でも、教育環境の整備が急がれています。
老朽化した木造校舎
こうした課題に対応するため、カンボジア事務所では長年にわたって学校校舎建設支援に取り組んできています。
株式会社東横インさまの取り組み
本当に多くの企業様、団体様、個人の皆さまにご支援いただいていますが、今回はその中でも株式会社東横インさまのお取り組み事例をご紹介します。
株式会社東横インさまは、2010年からシャンティを通してカンボジアの学校建設を支援されています。これまでに3校の学校校舎が建設されており、今年ご支援されている校舎で4校目となります。

2020年にご支援いただいた、トラポウン・プン・クラウ小学校の旧校舎(左)と新校舎(右)
全国の東横INNのフロントに募金箱が設置されており、集まった資金をシャンティの学校建設活動にご寄付いただいています。

全国の東横INNのフロントに設置されている募金箱
さらに2016年には、株式会社東横インから数名の方がカンボジアを訪れ、現地の人々と共に、ご支援校の一つであるドムナック・トマイ小学校新校舎の竣工を祝いました。

新校舎竣工式の様子
シャンティの学校建設の流れ
それでは、学校校舎の建設支援がどのように行われているのか、その一連の流れをご紹介したいと思います。
シャンティの学校校舎建設は、さまざまなステークホルダーとの関わりを通して進められています。まず、州や郡の教育局と話し合い、建設候補となる学校のリストを取得します。その後、各校の状況を把握しながら候補を絞り、実際に学校やその周辺地域を訪問して聞き取り調査などを行いニーズを確認した上で、対象校を決定します。
対象校選定に向け、候補となる学校を訪問する様子
対象校が決まったら、各州の教育局、学校運営委員会、そして各校の校長と覚書を締結し、建設予定地についても話し合います(覚書の締結に関しては、詳しくはこちらのブログをご覧ください!:カンボジア 学校建設活動の合意書を締結しました| 活動内容 | 公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会(SVA))その後、現地で建設に向けた公開入札を実施し、建設業者を選定・契約します。
建設予定地について話し合う様子
建設開始前には、地雷や不発弾が残っていないか専門機関に調査を依頼し、建設地の安全性を確認します。また、建設開始の前後で、マスタープランとよばれる学校敷地の利用計画を作成するための研修を実施し、学校関係者による計画作成をサポートします。
研修において、マスタープランを作成する様子
建設中は、シャンティのカンボジア事務所に所属しているエンジニアの職員が建設のモニタリングを行っており、学校運営委員会や教員と連携しながら建設の進捗を確認しています。
こうして学校関係者や地域住民が建設過程に直接参加することで、学校への関心や思い入れの高まりにつながっています。
建設のモニタリングの様子
モニタリングを重ねて建設が完了したら、いよいよ校舎の引き渡しです!
また、このタイミングで、新校舎の教室へ家具や掃除道具を配布します。同時に、校舎の維持管理や衛生に関する研修を実施し、学校側が適切に校舎を使用し続けていくことができるようサポートします。
加えて、教員や学校運営委員会をはじめとした学校関係者による参加の下、学校の敷地内で植樹も実施します。学校内の緑化活動の一環として、さまざまな種類の木を植えていきます。
施設維持管理研修の様子
教員や学校運営委員会による植樹の様子
このように、シャンティの学校校舎建設活動は、多様な関係者と協働し、学校や地域住民と密に連携しながら行われています。私自身、これまで何度か建設活動の現場に同行してきましたが、毎回驚かされるのは、教育行政関係者と学校関係者、地域住民、そしてシャンティの職員の間でのコミュニケーションが、毎回とてもスムーズに行われていることです。シャンティは、カンボジアにおいて長年にわたって活動を展開してきており、その過程を通して活動の関係者と丁寧に関係性を構築してきたからこそ、こうした円滑なやり取りが可能になっているのではないかと思いました。
完成した新校舎
最後に:今後の学校校舎建設に向けて
学校建設活動は、子どもたちに継続的かつ安心できる学びの場を届けるだけでなく、将来的な人生の選択肢を広げる大きな力につながっています。
カンボジアには、安全な学びの場を必要としている地域が未だ数多くあります。今後とも、子どもたちの未来を支える活動に、皆さまのご関心とご支援を賜れましたら幸いです。
カンボジア事務所インターン 佐藤