2024.10.28
海外での活動

カンボジア もうすぐ新学期

カンボジア
活動風景

こんにちは。

カンボジア事務所の菊池です。

カンボジア事務所では、今年の3月からカンボジア北西部のオッドーミンチェイ州で公立幼稚園のアクセスと質の改善事業を実施しています。

10月末までに、3園の園舎建設および水衛生施設の設置が完了し、園庭は子どもたちが遊びやすい環境へと整備されました。また、2回にわたる教員、州や郡の行政職員向けの幼児教育実践研修やモニタリングが完了し、11月1日から始まる新学期に向けての準備が着々と進んでいます。10月中旬からは新学期に向けた園児の登録の時期でもあり、保護者に向けた就園キャンペーンも実施されています。

事業開始前に幼稚園として使用されていた小屋

事業開始後に建設された園舎と水衛生施設(トイレ)

整備された園庭

 

学校の環境整備については、園舎建設・水衛生施設のモニタリングに郡教育局、校長、教員や学校運営委員会にも入って進めてきましたが、特に園庭整備は、教員・地域住民主導で進みました。9月に住民と共に園庭整備計画作成のためのワークショップを実施し、将来的な園庭整備の進め方や具体的な植樹や遊具・砂場の設置について協議し、敷地図を完成させました。6月のバッタンバン州の幼稚園視察時に多くのヒントを得て、対象園で少しずつ園庭整備は進んでいましたが、このワークショップを経て、教員や学校運営委員会の尽力があり、園庭は見違えるように整備されました。学校運営員会のメンバーは、「バッタンバン州の幼稚園に比べるとまだ60~70%の進捗かもしれないけれど、自分たちの手で、こうして子どもたちが伸び伸びと体を動かし、遊ぶことのできる園庭を作ることができて嬉しい。今後は、日中だけでなく、夕方も親子や地域の人々が集えるような場所になっていってほしい」と話していました。

園庭整備計画の作成の様子

園庭整備に協力する地元住民

 

教員の教授法改善については、8月と10月に2回にわたる幼児教育実践・啓発研修を実施しました。シャンティの職員の他、先行事業でも連携した教育省幼児教育局、教員養成校、バッタンバン州教育局、中央幼稚園の職員・教員がトレーナーとなって研修を進めました。研修内容は、幼児教育の重要性、カリキュラムに沿った指導案の作成方法、遊びや環境を通した学びのコンセプトの理解、教室内外の環境整備、おはなしの重要性と実践手法、教材製作の重要性と実践手法、保護者への啓発方法など、多岐にわたりました。研修の前後でアンケートを取り、理解度を測っていますが、長く教員主導型の教授法を取ってきたカンボジアの幼稚園教員にとってなかなか理解が難しいのが、子どもの主体性を大切にする指導と教員の関り方です。日本の幼児教育では、幼児の生活そのものと言える遊びを中心に、幼児の主体性を大事にする指導し、教員は幼児の知的好奇心や興味、関心を喚起し、幼児と周りの環境(人、自然も含めて)の関りが豊かになるように環境を構成し、サポートしていく役割を担っていくことへの理解・実践が一般の幼稚園で展開されています。カンボジアの幼稚園教員はこうした経験も限られていたり、小学校の教員が幼稚園でも教えているケースがあるので、研修でのアンケート結果を見ると、教員は子どもたちがトライ&エラーをしないように、教員がいつも指導する必要があると回答した参加者が多くいました。また、規律が重視される社会において、例えば子どもたち同士で喧嘩をしている場合の対応について聞いたところ、教員がすぐに仲裁に入って、悪いことをした子どもを見つけ、もう一方の子に対して謝らせていると回答した教員もいました。研修の中では、子どもの主体性や教員の役割についても講義を行っていますが、教員による活動実践は11月の新学期以降が本番になるので、今後の指導法や園での活動実践がどう変化していくのか、見守っていきたいと思います。

研修での教室環境整備についての講義の様子

研修での日案の作成の様子

研修での教材製作の様子

 

本事業では、オッドーミンチェイ州の3郡より、将来的に郡の中心の園として、他の一般幼稚園のモデルとなってリードしていく見込みのある3園を選定しました。オッドーミンチェイ州には、108の公立幼稚園がありますが、すべて小学校併設型で、小学校の校長先生の監督のもと、小学校の校舎の1~3教室を利用して幼稚園の活動が行われていました。11月の新学期から、本事業の対象園である3園のうち2園が小学校から独立して運営される幼稚園になることが決まり、この2園は、オッドーミンチェイ州ではじめて、幼稚園の園長先生の監督のもとで幼稚園の活動が行われていきます。残りの1園も、今後幼稚園運営体制が整備されたら、小学校から独立した運営の幼稚園になっていく見込みです。

もうすぐ新学期が始まります。新学期の最初は、園長から保護者への学校説明会も予定されており、保護者が園の活動への理解を一層深めていくよい機会となります。新しい園舎や園庭の中で、そして、遊びを取り入れた活動を通して、園児たちがどのように学び、成長していくのか、今から楽しみです。

本事業は1年間の予定で、来年2月末に終了予定ですが、今後予定している園舎の贈呈式やモニタリングを通して見た園の様子などをご報告させていただきます。

算数のクラスで図形に触れるグループワーク(9月末のクラス活動)

新しくできた園舎の絵を描く園児

 

※本事業は、令和5年度のNGO連携無償資金協力事業として実施しています。

 

菊池