【外国ルーツの子ども支援】 スタッフのクロスルーツに抱く想い 〜これまでの「居場所」づくりを経て〜
シャンティでは、認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(以下、WAKUWAKU)と協働し、豊島区を中心とした外国ルーツの子どもたちの居場所づくり活動「WAKUWAKU×ルーツ(ワクワク・クロス・ルーツ、以下クロスルーツ)」を行っています。この活動を開始して約2年が経ちますが、立ち上げから携わってきた3名のスタッフが2022年3月をもって活動の一線から退くことになります。シャンティブログで2回にわたって、スタッフがクロスルーツに抱く想いをつづります。
*活動の概要や目的・内容は、こちらの記事(https://sva.or.jp/activitynews/domestic210310/)や紹介ページ(https://note.com/cross_routes/)をご参照ください。
スタッフ紹介
加瀬部 あかね(かせべ あかね)
立教大学コミュニティ福祉学部で児童領域の分野を学んだのち、子どもの異文化適応・カルチャーショックについて研究していました。クロスルーツの活動やWAKUWAKUが運営する無料学習支援教室「池袋WAKUWAKU勉強会」(以下、勉強会)のほかに、小学校での支援員や社会的養護の子どもを支援するNPOなど、子どもに関する仕事/ボランティアに従事してきました。
渋谷 真那(しぶや まな)
お茶が有名な埼玉県狭山市出身。給食で「さやまっちゃプリン」が出る日はハッピーでした。立教大学社会学部から東京学芸大学教育学研究科に進学し、在日ネパール人1.5世の進路形成を継続して研究しました。昨年からネパール語の勉強を開始。日々焦りがちな私にとって「बिस्तारै, बिस्तारै(ゆっくり、ゆっくり)」は大切な言葉です。
益子 亜明(ましこ あみん)
父は日本出身、母は中国出身。立教大学社会学部から進学した同大学大学院社会学研究科にて、移民2世の若者の家族関係について研究しました。大学1年生の頃から勉強会にボランティアとして関わり始め、そのほかに移民や難民の支援団体に関わってきました。
クロスルーツに参加した背景
加瀬部:大学進学と同時に上京したため、勉強会への参加がひとりの地域住民として初めて地域社会に関わるようになったきっかけでした。
勉強会を通して子どもたちが抱える問題に気づかされたと同時に、当時私が学んでいた児童領域では外国ルーツの親子に焦点化されていなかったことから、様々なルーツを持つ子ども・若者のための居場所事業を立ち上げる重要性を感じ、参加に至りました。
活動当初を振り返ると「やりたい!」よりも日本で生きてきたマジョリティ(多数派)の私にできることはなにか、葛藤していました。
渋谷:マレーシアで多民族間の格差・不平等の実態を目の当たりにしたことをきっかけに、日本で暮らす移民の方々が置かれた状況を“気がつかなくてもいられた”自分に気がつきました。そこで、帰国後すぐに勉強会でのボランティアに参加した私は、主にネパールルーツの子ども・若者の高校・大学受験をサポートしました。
そこでは、私が一方的に「支援」するのではなく、かれらから、周りの人を大切にする姿勢など多くのことを学びました。
クロスルーツには、勉強会ボランティアかつ同じゼミに所属していた、益子さんのお誘いで立ち上げから参加しています。
益子:自身のルーツを見つめるきっかけとなった大学入学時に、在日コリアンの人々などに対するヘイトスピーチや、マイノリティ(国際人権法で積極的保護の対象とされる、ナショナル、エスニック、宗教的、言語的な意味での少数派(出典:岩間暁子/ユ・ヒョヂョン編『マイノリティとは何か』ミネルヴァ書房))の子ども・若者をめぐる状況に関心を持つようになりました。
ヘイトスピーチへの抗議活動をはじめ、勉強会を含むWAKUWAKUの活動に参加したりと、現場に行くようにしていました。
多くの子ども・若者や地域の大人と出会ったWAKUWAKUやカナダでの留学などの経験が、外国ルーツの子どものための居場所をつくるクロスルーツの先駆的な試みの重要性を認識することに結びつきました。
これから始まります!
毎週土曜日(計95回!)の活動の原動力や心がけていたこと
加瀬部:参加する子どもは言葉では表せられない想像力、強さ、生きる力で溢れています。
かれら・かのじょらから学ぶことが多く、その都度この居場所を運営する意義や自分の役割について考えていました。日本で生きる外国ルーツの子ども・若者には様々な背景があり、大人から頼られる場面が多く、いつのまにか周りの人に頼れなくなってしまった子がいるように感じます。
私の役割は困ったときに、ぱっとスタッフの顔が浮かんで、連絡をくれることだと思っています。参加する子どもとどんなことでも話せる対等な関係を築くために、土曜日の居場所以外も勉強や悩み事に伴走するようにしていました。
渋谷:クロスルーツにひとりの参加者として“いる”ことの積み重ねが、私にとってもクロスルーツを特別な「居場所」にしていったと感じます。
当初はスタッフの「役割」を担うことに精一杯でしたが、時間が経つにつれ、私自身にもその場に“いる”ひとりという意識が生まれていきました。そして、みんなが自分のペースで参加できる「居場所」をつくるには、上下の関係ではなく、すべての参加者同士の対等な関係を構築する必要があることを意識するようになりました。
そこで、オンラインでも子どもが主体になる活動として、子どもが活動を選べたり、大人が子どもから教えてもらったりする形式を取り入れました。
益子:原動力のひとつに社会的・政治的な問題への強い関心と、不公正に対する怒りがあります。マイノリティの人々の置かれた状況とその構造について学び、現場に足を運んだことで、自らのマジョリティ性の問い直しによってオルタナティブ(代わりとなるもの)な空間・関係性が生み出される可能性に気づかされました。
そして、土曜日の活動ではコミュニケーションや考え話すことに多くの時間や労力が必要になりますが、それらは子どもや私たちが生きる日常において省くべきコストとして捉えられてしまうことがあると感じます。
たっぷり時間をかけて、自分のペースで考え話すことができる居場所づくりを心がけているクロスルーツは、子どもや私たちが生きる社会のオルタナティブなんだと感じます。
折り紙が得意な子どもから教えてもらって作った花と亀
理想のお祭りをみんなで考えました
次回の記事では、クロスルーツの印象に残っている活動やこれからのクロスルーツについて想いをつづります。次回もお読みいただければ幸いです。
外国ルーツの子どもたちの居場所づくり活動スタッフ
加瀬部あかね 渋谷真那 益子亜明
※本事業は、
「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン 外国にルーツがある人々への支援活動応援助成」
「ドコモ市民活動団体助成」を頂き活動しています。ご支援者の皆さまには、深く御礼申し上げます。