ミャンマーでの「知識の灯」が途絶えないように、建設活動が完了
こんにちは、ミャンマー事務所のティンミャです。2022年に実施した校舎・学校図書館建設の活動報告をお届けします。
2021年には軍事政権下での学校への復学をためらう保護者や子どもたちも
ミャンマーで発生したクーデターを受けて市民不服従運動と呼ばれるボイコット運動が展開される中、多くの保護者が子どもたちを学校に戻すことに不安を感じてきました。非合法な軍事政権のもとで働きたくないという理由から、公立学校の教員の多くが市民不服従運動に参加しました。一方で、僧院学校は公立学校とは異なり、僧侶主導で開校され、僧侶が学校運営の多くを担っています。そのため、2021年の軍事政権による学校再開後、僧院学校への入学を好む保護者もおり、児童数の増加から校舎や教材が不足する学校も出てきました。
シャンティでは、子どもたちは学ぶ権利を持ち、教育を受ける権利や読書を楽しむ権利だけでなく、安全な場所で安心して学ぶ権利があると信じています。この理念に基づき、ミャンマー事務所では、ニーズのある寺院の建設活動を行うことを決めました。
孤児院を兼ね備えた僧院学校への校舎・学校図書館建設
調査の結果、西バゴー地域タヤワディ県ジョービンガウ郡にあるティンカヤン僧院学校を建設支援先として選びました。この学校は孤児院でもあり、204名の生徒が学んでいます。また、中学校も一部併設されています。孤児院の子どもたちも含めると子どもの数が多く、建物不足に悩まされていました。校舎が足りないので、孤児院の寮で授業を行っているほどでした。そこで、シャンティでは校舎の建設支援を行うことにしました。また、学校外で学ぶ機会がほとんどないことから、校舎だけでなく学校図書館の建設も支援することになりました。
校舎と学校図書館は10月に無事竣工しました。建設前には児童・生徒、教員、地域住民に対して能力開発研修を実施し、建設中には彼らもモニタリングに参加する等、学校や地域住民も積極的に建設活動に参加しました。建設後には長く校舎を使えるように維持管理研修も行いました。
建設後には学校図書館に配架する図書を配布しました。通常シャンティでは、主に小学生を対象に図書を配布しています。しかし今回は、孤児院で暮らすすべての子どもたちに読書習慣を身につけてもらいたいという思いから、小学生から高校生までを対象に本を配布しました。また、教員を対象に5日間の学校図書館研修を実施し、図書館の維持・運営方法や読み聞かせや貸出などの図書サービスについて、実践を交えながら学びました。興味津々な様子で積極的に取り組む教員らを見て、これまでの活動の苦労が報われると同時に、教育支援の必要性を改めて実感しました。
決して順調ではなかった活動運営
2022年の活動は、一筋縄ではいきませんでした。経済の不安定さから、建設会社の数も減り、建設会社の選定が難航するなどいくつもの困難に直面しました。
治安面でも気の抜けない状況が続いています。ミャンマー全土で自衛組織である国民防衛隊(PDF)と国軍との争いが続いており、活動地においても例外ではありません。PDFと国軍との緊張が高まった際には、活動地への訪問を延期するなどして対応してきました。
子どもたちの「知識の灯」がずっと続くように
このような困難を乗り越え、校舎と学校図書館建設にかかる活動は無事終了しました。11月初旬には、学校長、教員、地域住民、児童・生徒と共にティンカヤン僧院学校の開校式も開催しました。
開校式ではテープカットが行われ、引渡書へのサインをもって、シャンティからティンカヤン僧院学校へ正式に校舎と学校図書館が引き渡されました。ご住職からは、ティンカヤン僧院学校の児童・生徒のための新校舎や学校図書館が完成した喜びや、ご支援くださった日本の支援者の皆様に感謝の意が伝えられました。
児童からのスピーチでは、「サー・ミー・ アイン(知識の灯)」と名付けられたこの図書館が彼らにとって多くの知識を得る場となり、校舎と学校図書館を長く使っていきたいと、喜びを隠しきれない様子で語ってくれました。その後の子どもたちからダンスの披露があり、観客を大いに楽しませてくれました。
開校式は終了しましたが、安全な校舎の下で学び、素敵な学校図書館で本を読み続けるティンカヤン僧院学校の子どもたちの姿はこれからもずっと続いていきます。
ミャンマー事務所 ティンミャ