【事業報告】苦労の連続を乗り越えて掴んだ成果
皆さん、こんにちは。ミャンマー事務所のティンミャです。本日は2021年から1年3か月にわたってミャンマーで行ってきた事業を報告します。クーデター下でどのような困難があり、どのように乗り越え、どのような成果を上げることができたのか、知っていただければ幸いです。
2021年は人材育成とその基盤整備を計画
シャンティは2014年からミャンマーのバゴー地域において、公共図書館や学校と協力し、読書推進活動を進めてきました。2021年からはヤンゴンとバゴー地域のピーにて、学校における読書推進活動を普及する人材の育成、育成のための環境整備を目的に学校図書館に関する基盤整備化事業を新たに開始しました。
しかし、2021年2月1日に軍事クーデターが発生し、ミャンマー全土で市民によるクーデターへの抗議活動が行われました。その後まもなく、軍は平和的な市民の抗議活動に対して暴力をもって弾圧を始めました。多くの人々を拘束し、デモに参加していない人の頭部にまで発砲しました。無法状態となったミャンマーで、人々は自分達の安全を確保することが難しくなりました。
立ちはだかる課題への対応と想像以上の反響
本事業では当初、4つの教員養成学校と1つの現職教員研修施設を対象にしていました。しかし、このような状況を受け、安全への懸念から、対象校を2つに縮小することを決断しました。規模を縮小したものの、事業を実施することは困難を極めました。特に現金の入手が困難な状況が続き、活動に遅れが生じました。銀行は閉まり、200,000チャット(日本円で14,000円程)をATMから引き出すために、人々がATMに行列を作り何時間も並ばなければなりませんでした。そのため、タイにあるBRC事務所に一部資材を購入してもらったり、業者に依頼し支払期限を延長してもらうなど、様々な協力を得て乗り切りました。
このように、現金の入手が困難な時期が続いたため、2021年上期は学校図書館マニュアルや指導者用のマニュアルの作成、更新を中心に事業を進めました。これらのマニュアルは人材育成を目的とする本事業において、非常に重要な役割を果たします。
学校図書館マニュアルは2018年にミャンマー事務所にて初版を発行し、学校図書館を設置するための5つの要素(空間、教材、図書館員、サービス、予算)や最低限の基準を示し、これまで事業対象校の学校にて活用されてきました。2021年にはこれまでの経験を踏まえて内容の追加や更新を行いました。さらに、新たに作成した指導者用のマニュアルでは、教員を育成する学校(教員養成学校)の教員が、学校図書館マニュアルを生徒に教授するためのガイドブックとなっています。
(写真:新たに作成した指導者用マニュアル)
これらのマニュアル作成後、3つの研修を行う準備に取り掛かりました。
①学校図書館研修
②学校図書館マニュアル研修
③指導者育成研修
これらの研修は新型コロナウイルスの感染拡大により対面での実施が難しく、E-Learningを取り入れて実施しました。E-LearningではタブレットやUSBに電子教材を保存し、それらを使って受講生に研修を受講してもらうというものです。後述のモデル図書館を設置した教員養成学校付属学校の教員10人、教員養成学校の教員や校長ら44人が研修に参加しました。
(写真:研修資料の配布の様子)
研修を受講した教員養成学校の校長らが図書館の有効性に強い共感を示してくれ、自主的に学校図書館研修を生徒向けに実施し、合計362人の生徒が受講しました。また、弊会も416の学校図書館マニュアルと39の指導者用マニュアルを対象校に追加配布しました。
(写真:教員養成学校にて自主的に開催された学校図書館研修)
子どもたちに利用され続ける学校図書館
2021年下期には、教員養成学校の付属学校2校にモデル学校図書館を設置しました。これまでに957冊の絵本、9冊の大型図書、9組の紙芝居をそれぞれのモデル図書館に配架しました。また、3台の本棚、2台の円卓、1組の机椅子セット、1台の紙芝居舞台、1台の大型絵本舞台もそれぞれ配布しました。教員養成学校にも研修にて利用できるように絵本や紙芝居を配布しました。
モデル図書館は2021年12月中旬より開館し、図書館研修を受講した教員によって読み聞かせなどの図書サービスが提供されています。子どもたちは学校の始業前や授業後に図書館に通い、1か月に500人以上の利用が確認できています。弊会も定期的にモデル図書館をモニタリングし、長期にわたって図書館が利用、運営されるように必要に応じて助言を行っています。
写真内絵本『おおきなかぶ』、再話 A・トルストイ、訳 内田 莉莎子、画 佐藤 忠良、福音館書店
(写真:モデル図書館の開館式で読み聞かせに夢中になる子どもたち)
最後に、本事業は教育分野に従事する人々の図書館に関する知識や経験を強化したものであり、ミャンマーの新教育カリキュラムにて重要視されている21世紀型スキルの獲得にも貢献するという点で、教育分野のニーズにあったものだと考えます。
読書は私たちの視野を広げ、夢を与えてくれるものです。シャンティが、より多くの子どもたちが夢を見る助けになることを強く願っています。
※本事業は外務省NGO連携支援無償資金にて実施しています。
ミャンマー事務所 ティンミャ