2016.04.01
海外での活動

子どもたちの居場所=寺院学校を支える校長先生

ミャンマー

ミンガラーバー。ミャンマー事務所の長沢です。

気のせいか、4月中旬の水かけ祭りに向けて赤や金に髪の毛を染めたイケイケの若者の姿をよく見かけるようになりました。あの恐怖の水かけ祭り、もう体験したくないです。

2016年1月に帰国した際、報告会で「子どもの居場所としての寺院学校」というタイトルでお話させていただきました。ミャンマーはもちろん、寺院学校に興味がある方にたくさんご参加いただきました。その際にご紹介したこと含め、寺院学校についてご紹介します。

僧院の台所を使って授業を受ける子どもたち
僧院の台所を使って授業を受ける子どもたち

その名の通り、お寺が運営する学校が寺院学校です。通常、僧院に併設する形で学校があることから、僻地であろうがお寺があるところには寺院学校が存在できます。これが比較的アクセスの良い都市部に集中している公立学校との大きな違いです。また基本的には無償のため、公立学校に通うのに必要な制服や文房具が買えない家庭の子どもたちも通うことができます。

老朽化した木造校舎で勉強する子どもたち
老朽化した木造校舎で勉強する子どもたち

寺院学校というだけあって、管轄する省庁は宗教省になります。とはいえ、実質宗教省はあまり関与しておらず、教育省が教材の提供や教員の給与の補てんなどをしています。ただし学校としての認可を受けるのは宗教省、小学校から中学校まで拡大したい時に申請する先も宗教省、ややこしいです。

仕切りのない空間で複数学年が一度に授業を受けている様子
仕切りのない空間で複数学年が一度に授業を受けている様子

校長によっては地元の貧しい子どもたちだけでなく、遠方から子どもを一時的に引き取り、僧院に住まわせながら勉強させるというケースもあります。また孤児院を併設し、孤児や貧困で学校に通えない子どもたちを引き取り、そこで生活させながら学校に通わせるというケースもあります。いずれの場合も、学校運営費に加えて、子どもたちの生活費を負担していることを考えると、僧院として、僧侶としての教育への貢献には本当に頭が下がります。

僧院にある建物の一つを宿舎として使用
僧院にある建物の一つを宿舎として使用

ちなみに、寺院学校の生徒たちは出家していると思いますか?

(ためが短いですが)答えはNOです。ほとんどの寺院学校の生徒は出家をしていません。ただし一部の孤児院兼寺院学校では出家しながら学ぶことで、週末や早朝に托鉢で町を回る姿の小僧さんや尼僧さん(寺院学校の生徒)を見かけることもあります。

また教科学習に加えて、土日や授業が始まる前に仏教学習の時間があるのも、寺院学校の特徴です。

授業の前のお祈りの時間(ミャンマー)
授業の前のお祈りの時間

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「私は子どもの頃、先生になりたかったのですが、ある時おじに『私の寺に来て出家しなさい。僧侶になってからも子どもに勉強を教えることはできる』と言われ、すぐにおじの僧院に来て出家し、僧侶になりました。そして私は今こうして寺院学校を経営しながらたくさんの子どもたちに教育の機会を提供することができています。僧侶になり、教員にもなり、夢が二つかなったと嬉しく誇りに思っています」

ジンチャンタウン寺院学校 校長ザネインダ僧侶
ジンチャンタウン寺院学校 校長ザネインダ僧侶

ピーにある650名を超える生徒を抱えるマンモス校の校長先生のお言葉です。寺院学校は高等学校の認可が下りていないことから、寺院学校を卒業した生徒が続けて教育を受けられるようにと私立の高等学校を設立しました。これだけにとどまらず、子どもたちが将来英語を話せるようにと英語の特別レッスンを行ったり(しかも先生自身も教えていました)、私は先生にお会いする度に、先生が誰よりも子どもたちへの質の高い教育を考えていることを実感します。僧侶としてだけでなく、教育者として多くの方から尊敬される理由が分かります。私も先生の生徒として勉強したいと思うほどです(切実)。

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「仏教の教えを説きに地方に行った際に出会った子どもで、『どうしても勉強したい、学校に通いたい』という強い意志を持った子どもを連れてきて、僧院に住まわせて勉強させるんです。親が勉強してほしいというだけでは不十分なんです。子どもの意志が大切なんです。」

マハゼイヨン寺院学校 校長ニャルニカ僧侶
マハゼイヨン寺院学校 校長ニャルニカ僧侶

こちらは別の寺院学校の先生。こちらの学校は町の中心地に近いところに位置し、入学希望が後を絶ちません。しかし教室・教員が不足していることから昨年度は120名もの入学を断りました。先生が生徒受入を決める際には、孤児である子ども、片親の子ども、持ち家の無い家庭の子どもを優先して入学させるようにしています。ただし、ここでも本人の学ぶ意志がないと入学を断る場合もあると話されていました。前述の先生同様に、こちらの校長先生も自ら教えることがとてもお好きとのこと、時間があると教室を除いて授業の様子を見ています。国として寺院学校を支援すべきだと、以前熱く語って下さったこともありました。お話する度に聞ける先生の教育に関するお考えは、私たちにとってもたくさんの学びです。

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「私は尼僧なので、結婚して家庭を持つことも子どもを持つこともできませんが、この子たちが私の娘であり、妹であり、親友でもあるので、私は幸せです」

ミャテンギ尼僧学校 校長ザヤワディ尼僧
ミャテンギ尼僧学校 校長ザヤワディ尼僧

孤児院併設の尼僧学校の校長先生のお言葉。まだお若いのですが、なんというかお母さんのような風貌で、それでいて可愛らしい面もたくさんあることから、先生がおっしゃる通りお母さんのような友達のような感じの方です。主に北部のシャン州の子どもたちを受け入れ、出家させて勉強させています。生徒の尼僧さん達は学校がない日は早朝からお昼まで、長いときは一日町中を歩き回り、托鉢を行います。「今後子どもたちがどうなっていくのか、還俗しても尼僧として生活する場合にも、彼女たちのしたいようにさせてあげたいです」、こう話すときの先生の顔は母親の顔でした。

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ご紹介しきれませんが、他の学校の先生も個性的でとても教育熱心な子どもたち思いの僧侶・尼僧の皆さんです。この国の教育は寺院学校によっても支えられていると、先生方を通じて感じずにはいられない毎日です。

どんな環境でも笑顔で学ぶ子どもたち
どんな環境でも笑顔で学ぶ子どもたち

敬虔な仏教国として知られるミャンマー。パゴダに行くのも良いですが、もし機会があれば寺院学校も覗いてみてください。素敵な先生と子どもたちに出会えますよ。

ミャンマー事務所 長沢有華