【アフガニスタン】加速する人道危機
8月15日にカブールが陥落し、8月31日にはアメリカ軍がアフガニスタンから完全撤退し、20年間に渡る軍事作戦が終了しました。
しかし、アフガニスタン情勢はまだまだ混迷が続いています。
8月31日、国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏が声明を発表し、アフガニスタンの深刻化する人道的および経済的危機と、基本的な社会サービスの完全な崩壊の脅威に深刻な懸念を表明しました。同事務総長は、アフガニスタンの人口のほぼ半分の1,800万人が、人道支援を必要としており、「人道的大惨事」が迫っているとしています。
増加する避難民
アフガニスタンでは安全を求めて逃げる人たちが増加しています。
2021年1月1日から2021年8月9日までに紛争によって家を追われた人は570,482人*、そのうちの59%は18歳以下の子どもです。
タリバンと政府軍が衝突したことを受け、戦闘地域で暮らしていた人たちは比較的安全な州都または都市部に一時避難をしています。戦闘が最も激化した7月は206,967人が家を追われ、国内避難民となりました。
また、自身の民族・出自・職業・性別により、タリバンの政策によって迫害される恐れがあるため、アフガニスタン国外への避難を志願する例もあります。
イランやパキスタンと国境を接する地帯には庇護を求めるアフガニスタン人が大量に集まってきていると現地からの情報もあります。
これまでの長い紛争の結果、すでに登録難民は約250万人に達し、登録されていない難民を含めるとその倍以上にもなるといわれています。今後の情勢によっては、アフガニスタン難民が大量に近隣諸国に流入する可能性が高まっています。
避難民の方々の多くは野宿生活を強いられています。そういった中、アフガニスタンではこれから冬を迎えます。アフガニスタンの冬は厳しく、氷点下数十度になる地域もあります。主要道路も大雪などにより物資を運搬する事が困難になることから、冬を迎える前に食料を入手する必要があります。
例外ではない新型コロナウイルスの感染拡大
今年の5月以降、新型コロナウイルス感染者数は急増しています。最後に公表された集計では、153,220人の感染者、7,118人の死者が出ているとされていますが、世界保健機関(WHO)と国連人道問題調整事務所(OCHA)は、新型コロナウイルスの症例と死亡者数は、アフガニスタン全体で過少報告されている可能性があるとしています。感染症予防に関する正しい情報が浸透しておらず、十分な医療体制が整っていない状況において、国民は高い感染リスクにさらされています。
深刻な食料不足
紛争が激化する前から、新型コロナウイルス感染拡大に伴う物価高騰や干ばつによる凶作を受け、各地で食料不足が深刻化していました。世界食糧計画(WFP)の声明では、1400万人が深刻な食料危機、200万の子どもたちが栄養失調に瀕しているとしています。タリバンが政権を掌握して以降、物価上昇が続いています。今後の政情次第で食料がさらに高騰する可能性があります。国民の多くは経済的に困窮しているため、限られた所持金で家族全員分の食料を賄えない可能性があります。
早急な対応が求められています
アフガニスタンは、今回の政情不安以前からこのような人道危機に直面していましたが、国際社会がこのまま放置すれば、アフガニスタンで「世界最悪」レベルの人道危機が起きる可能性があります。最悪の悲劇をさけるために、国際社会、日本政府、市民社会、あらゆる関係機関が連携する必要があります。
戦闘によって傷ついた人びとが、今度は食料不足によって生きることも難しくなる。このような報告を受けることはとても悲しいことです。
私がアフガニスタン事務所に勤務していた頃、子ども図書館に通っている子どもたちと過ごしていると近くにミサイルが着弾しました。その直後、怖がる子どもたちが私にしがみついてきました。その時、私は彼らにとって外国人以前に大人であり、子どもたちは、大人に頼るしかないのだと実感しました。
避難民となり野宿生活を送っている子どもたちは、きっと大人が助けてくれると信じているのだと思います。
混乱する情勢の中で、事業を行うことはとても難しい状況ですが、私たちは避難民への食料支援を行うための準備を始めました。
ひとりでも多くの人が命をつなぎとめるために、できる限りのことに取り組んでいきたいと思います。
どうか、皆さまのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
事務局長
山本 英里
*引用元:https://www.humanitarianresponse.info/operations/afghanistan
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