カンボジアにも笑いを届けた桂歌丸師匠への感謝の意
桂歌丸師匠のご逝去の報に際し、生前のご功績とご協力に心より感謝申し上げると共に、ご冥福をお祈り申し上げます。
古典落語本格派として、また日本テレビ系演芸番組「笑点」の司会をつとめるなどお茶の間に笑いを届けてくださった噺家の桂歌丸師匠がご逝去されたことが報じられました。
歌丸師匠は「笑点」の初回が放送された昭和41年(1966年)からレギュラー出演され、平成18年(2006年)からは五代目司会者に就任し、平成28年(2016年)の降板までお茶の間に多くの笑いを届けられただけでなく、公益社団法人 落語芸術協会 会長として、噺家の育成や落語界の発展に多大な貢献をされました。
歌丸師匠は日本だけではなく、「日本メコン交流年(*)」 の一環として、2009年11月、カンボジアの子どもたちにも日本の大衆文化と笑顔を届けてくださいました。それは、大衆芸能を伝える海外公演の一環で、落語、小唄、紙切りの芸人さんと共にカンボジアを訪問。シャンティ国際ボランティア会が現地調整を行い、歌丸師匠らの熱演にプノンペン市内の小学校や劇場の高座も大盛況でした。
現地の子どもたちと両親、カンボジア在住の日本人や外国人などを対象に、2日間で計三席の落語会が開かれました。
(写真:桂歌丸師匠のカンボジア落語公演の街頭広告)
(内容が分かるようクメール語の字幕を投影しながら落語を披露いただきました)
カンボジア公演では、桂歌丸師匠のほか三笑亭茶楽師匠と桂歌若師匠が落語を披露されました。また、林家今丸先生が繰り出す日本伝統芸の紙切り、桧山うめ吉先生による俗曲もありました。
カンボジアの子どもたちにとっては初めての落語でしたが、目を輝かせ、素敵な笑顔を見せてくれました。高座の横には、英語とクメール語の字幕を写し、師匠の話すスピードにあわせて、字幕を進めながら、子どもたちも一生懸命師匠と字幕を交互に見ながら楽しみました。
カンボジア公演の前インタビューで歌丸師匠は「幼少のころ、ラジオから流れる落語や漫才を夢中になって聞いた。食料もない、娯楽がない、つらい時代に、とくかく笑いを求めた。」と、ご自身が体験してきた幼少時代について話してくださいました。
戦後の傷跡がいまだ残るカンボジアで、
人びとが悲しみを乗り越えられるように願っています。
特に若い人たちに希望を持ってがんばってもらいたい、
同時にお年寄りを大切にしていただきたい。
落語を聞いてそうなってもらえるのであれば、
助けになれば、こんなに嬉しいことはない。(桂歌丸)
歌丸師匠は「笑点」を通して日本のお茶の間に笑いを運んでくださっただけでなく、世界の子どもたちにも笑顔を届けてくださいました。
カンボジアだけでなく、いまアジアでは、内戦や貧困、自然災害などの影響で、まだ本を知らない子どもたちが大勢います。私たちは、歌丸師匠のお気持ちを大切に、私たちはこれからもアジアの子どもたちに笑顔を届けてまいりたいと思います。
(*)「日本メコン交流」におけるカンボジアでの落語公演について
政治、経済、文化、観光等幅広い分野で関係が急速に深まっている日本とメコン地域諸国(カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)の間で更なる交流の拡大を実現するため、2008年に東京で開催された日メコン外相会議において、2009年を「日メコン交流年」とすることが合意されました。その一環として、カンボジアでの落語会が行われました。
カンボジア落語公演の概要
日時:2009年11月25日(水)、26日(木)
会場:カンボジア プノンペン市内の小学校および劇場
出演:桂歌丸師匠、三笑亭茶楽師匠、桂歌若師匠、林家今丸先生、桧山うめ吉先生
主催:文化庁、社団法人落語芸術協会
協力:公益社団法人シャンティ国際ボランティア会