設立41年。これからも寄り添い、あきらめない
変わりゆく世界に取り残される子どもたち
2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻を境に私たちの世界は大きく変わりました。近代化された村や町が一瞬にして廃墟になる映像に、背筋がぞっとする思いをされた方も多かったのではないでしょうか。なぜこの戦争を止めることができなかったのか、私たちは子どもたちに説明をする言葉が見つかりません。
「誰も取り残さない」という国際社会共通の目標を掲げる中で、「取り残される人々、子どもたち」が増加し続けています。自分の住む国を追われてしまった人々、帰れなくなった人々は、支援を得ない限り生きていくことすら難しい状況に追い込まれます。国際社会においても政府や民間により多くの支援を享受する人が いる一方、まったく支援が行き届かない人たちがいます。
2021年2月のクーデター以降、ミャンマーから第三国に逃れてきた多くの人々は滞在許可がなく、逃れてきた先でも拘束や強制送還を恐れてジャングルに身を潜めて暮らしていたり、拘束覚悟で都市部にかくまわれて暮らしていたりする人たちがいます。正式な支援を受けることができず、悪環境の野外で子どもを産む母親もおり、生まれた子どもの体を洗うきれいな水も確保できません。雨よけもなく、感染症が懸念される環境の中で、幼い子どもたちは不安な日々を過ごしています。
ウクライナでは、長期化する戦争、空襲警報が鳴るたびに防空壕に避難する生活の中で子どもたちが精神的不安定になり、みかねた母親が幼い子どもを連れて第三国に逃れています。受け入れの長期化を想定していなかったため、隣国での生活を支えるのは民間の人々に頼らざるを得ません。支援をしている人々は、明日彼らに配布する食料がないと嘆きます。
他の人の権利を守ることは、自分の権利を守ること
そして、私たちが生活する日本にも政情不安により避難した人、元いた国へ帰れなくなった人たちがいます。彼らは、最低限の生活も確保できず、不安の中で暮らしています。日本で受け入れられず、命を落とす覚悟で再度政情不安な国に戻らざるを得ない人たちがいることをどれだけの人が知っているでしょうか。
彼らに支援が届かないのは、決して資金だけでの問題ではありません。政策、法制度などさまざまな問題が彼らへの支援の壁になります。しかし、この壁は、支援をすべきと一人ひとりが声を上げることで変えることができるはずです。
目の前の生活が苦しくなると、どうしても自分たちのことで精いっぱいになります。しかし、自分たちの生活を守るためには、人が生きていく上で必要な権利をみんなで守ることが不可欠です。他の人の権利が守られているかどうかに敏感になることは、自分たちの権利を守ることにつながります。
シャンティは、これからもその人にとって何が必要かを最優先に考え、支援が困難な状況であっても最後まであきらめず前進してまいります。私たちの活動は、シャンティと共に、人々、子どもたちに希望を届けるために温かいご支援をくださる多くの方によって支えられています。職員一同、心より感謝申し上げます。
2022年12月10日
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
事務局長 山本 英里