2025.01.17
メッセージ

阪神・淡路大震災から30年。防災・減災、災害支援に多面的な視点を

メッセージ
国内災害

1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災から30年が経ちました。
ボランティアとしてシャンティの活動に参加し、その後職員として支援に取り組んだ弊会理事の浅野幸子からのメッセージをお届けします。


(写真:つぶれた家屋が道路までせりだす様子)

当時、学生ボランティアとしてシャンティの活動に参加し、その年の秋ごろから、事務所が移転した神戸市長田区御蔵・菅原地区の復興まちづくり支援にも取り組むようになりました。(途中から、シャンティの嘱託職員として活動)。

戦後に大都市を初めて襲ったこの震災の教訓は、避難所運営、ボランティア・コーディネート、障がい者や外国人など弱い立場にある人たちの支援、仮設住宅でのコミュニティ形成、復興まちづくりなど多様にありますが、シャンティは数多くのボランティアさんの自発性と発想力、行動力に支えられながら、多様な支援を展開させていただきました。

炊き出しや物資の提供、子ども支援、在宅避難中の高齢者の入浴サービス、そして被災して心を痛めている被災者の方のところに僧侶がうかがって傾聴する活動、復興期には仮設住宅のコミュニティ形成支援、復興まちづくり支援、広域のボランティアのネットワーク活動のサポートと多岐にわたりました。

 

(写真:子どもプロジェクトの様子)

私自身は当時、神戸市長田区での復興まちづくりに関わり、住民の皆さんの元気につながる支援はできましたが、専門性を持たないボランティアの支援には限界もあり、地域にあった適切な専門家との連携の重要性を痛感させられました。

(写真:仮設住宅のテントでの食事会)

ところで、当時残された大きな課題の一つは、被災者支援における女性の視点の欠如でした。避難生活でのプライバシーや衛生、防犯、育児・介護、そして仕事(多くの非正規雇用の女性が解雇された)などで直面した困難について、被災地の女性グループからの問題提起がありましたが、社会的な共有には至りませんでした。しかし、手記や記録集づくりなどが女性たちの手で行われるなど、その後の取り組みに貢献する情報発信がなされました。

現在も、防災政策を決める場や避難所運営、復興まちづくり協議会などの意思決定の場に、女性が十分に参画できていない現状がありますが、そうした女性たちの発信の努力が、その後の国の政策の改善にもつながり、徐々に変化しています(例:内閣府「避難所運営ガイドライン」の策定、自治体の危機管理部門への女性職員の配置、女性防災リーダーの積極的な育成など)。

(写真:炊き出しの準備をするボランティア)

私も神戸での復興まちづくり支援では、地域活動の中で日々重要な役割をはたしながらも、公式な場では黒子役になりがちな女性たちが、自身の経験・能力をより良く発揮できるよう、日々の丁寧な交流に努めながら、女性中心の復興活動グループの立ち上げを支援するなど女性のエンパワメントのための活動も行っていました。

現在、災害支援ボランティアの活動は一部で専門化が進むとともに、引き続き個人からグループまで多様な層の参加が引き続き見られ、現場でのコーディネーションをスムーズに進めるために、平常時から都道府県域の災害ボランティアのネットワーク組織を常設する動きが広がっています。しかし、女性や外国人支援をはじめ、そうしたネットワークにまだ十分につながることができていない領域もありますので、今後の課題といえるでしょう。

同時に、阪神・淡路大震災の時代とは比較にならないほどの高齢化や地方の過疎化の進行、公務員の大幅削減、格差の拡大、社会全体が人で不足の中での市民活動・地域活動の担い手の不足など、人々の暮らし、市民社会、災害支援をめぐる環境は悪化しています。気候変動による気象災害の影響もこれからますます増大するでしょう。昨年からシャンティが支援に入らせていただいている能登半島地震の現場は、まさにそうした時代の困難を象徴しているように思われます。それでも、被災者の方々は、懸命に立ち上がろうと努力されています。

このような社会状況下では、災害支援活動も、平常時の課題との結びつきを意識しながら、多様な主体間の連携による支援がより一層強く求められているといえます。

浅野が共同代表を務める減災と男女共同参画 研修推進センターでは、女性や障がい害者・子ども・若者・外国人など多様な人々の視点・当事者の参画により、防災対策や被災者支援の質が高まるよう、講演研修などの啓発、政策提言、ネットワーキングなどの活動を行っています。

(写真:2024年に発生した能登半島地震支援活動を行うシャンティの職員、撮影:川畑嘉文)

減災と男女共同参画 研修推進センターでは、ほくりくみらい基金などと連携して、能登半島地震で被災しながらも支援活動に奔走してきた、若手の女性たちへのインタビューを報告書としてまとめ、政策提言につなげています。

インタビュー報告書はこちらからご覧ください


(写真中央が筆者)
理事
減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表
浅野幸子

当時の活動報告書はこちらからご覧ください