貧困国や子どもだけの課題ではない | 9月8日国際識字デーによせて
2021年の世界における成人(15歳から64歳)の識字率は、SDGsが始まった2015年の86%から87%へと1%しか改善されていません。いまだに成人の7人に1人にあたる7億6300万人が非識字者で、その63%は女性です(出典:Global Education Monitoring Report 2023)
学校教育における男女格差はほぼ解消された一方、成人識字の問題はいまだに深刻です。子どもの教育を普遍化しさえすれば、非識字の成人は高齢化し、いつか亡くなるので、識字率は改善するとでも言うのでしょうか。UNESCOは識字問題に対する政治的意思の欠如を「世界規模の不名誉」と呼んでいます。
日本にも識字問題は存在します。2022年の国勢調査では、90万人が義務教育を未修了であることが明らかになりました。貧困や差別のために義務教育を修了できなかった人々、日本語に不自由している外国籍の方々のために、文部科学省は「教育確保基本法」に基づき、公立夜間中学を67ある都道府県・政令指定都市(地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市)に少なくとも1校を設置するとしています。しかし現状では、公立夜間中学があるのは、31都道府県・政令指定都市にとどまっています。
識字教室に通った成人が文字を覚えても読む本や新聞、雑誌がなければ、文字を忘れて、非識字者に戻ってしまいます。シャンティは図書館の普及を通じて、文字を学んだ人々が識字者でいつづけることができる識字環境づくりに今後も尽力していきます。
シャンティ教育事業アドバイザー 三宅隆史
出典データはこちらからご覧いただけます
日・英:Global Education Monitoring Report 2023
「国際識字デー」とは
1965年9月8日からイランで開催された「世界教育相会議(テヘラン会議)」において、当時のパーレビー国王が各国の軍事費1日分を識字基金に拠出することを提案したのがきっかけで、アメリカのジョンソン大統領が米国議会に9月8日を「国際識字デー」に制定するように呼びかけ、UNESCOが制定しました。
写真:川畑嘉文