2024.06.20
メッセージ

6月20日「世界難民の日」 難民とともに~社会全体で取り組む難民支援~

メッセージ

2024年現在、UNHCRの統計によると紛争、迫害などによって、住む場所を追われた人々の数は増加しつづけ、過去最大の1億2000万人に上るだろうと発表されています。ほぼ日本と同じ人口、世界全体で見ると69人に1人が強制的に移動をさせられていることになります。

@川畑嘉文

そのうち、約67%は国外に出ることができず紛争などが継続する国内において「国内避難民」になっています。紛争が継続する国における国内避難民の支援は、国際社会からの支援に頼らざるを得ず、シャンティの活動地でもミャンマー、アフガニスタンといった国では、避難する方々の命を守るため、出口の見えない国内避難民の継続支援が必要になっています。

国外に避難した難民も増え続け、4340万人と報告されていますが、2023年に故郷に帰還できたのは、たったの100万人にとどまっています。国際社会が一丸となって、紛争の終結など根本的な解決に至らない限り、難民の数は今後も増え続けることが予想されます。

@川畑嘉文

 

日本における難民を取り巻く環境

2024年の難民の日のテーマは、「社会全体で取り組む難民支援」。

ここ数年、日本国内においても難民認定者だけではなく、紛争や迫害などにより国に帰れず、日本で生活を希望する人々が増えています。

せっかく安全のために外国で暮らすという決断をして日本に来ても、実際にはとても多くの困難にぶつかるのです。主な課題だけでも次のようなことが挙げられます。

・在留資格

たとえば、日本滞在中に紛争が悪化するなどし、故郷に帰国困難になったからといって、すぐに難民認定をされるわけではありません。人によって特別な滞在許可が認められますが、1年未満の短期で更新が必要となる上、絶対に取得できる保証があるものではないため、安定した滞在資格がなく、不安定な生活を強いられます。

・言葉

長期に日本で暮らしていくために、就労や生活で必要なコミュニケーション力を取得するのは、難しく時間を要します。経済力が不十分で語学学校に通えなかったり、生活のために就労を優先したりすることで、日本語の習得が不十分だと安定した就労につけず、生活が苦しくなる、といった悪循環に陥りやすくなります。

・就労

言語の問題もそうですが、日本の職場で働く基本的な知識の獲得もなかなか容易ではありません。文化や習慣の違いがある中で、生じる誤解が時に大きな問題に発展してしまうこともあります。特に祭りごとなど、日本にいても故郷の風習を大事にしたいという考えをもっていても、日本社会の中ではまだまだ理解されないこともあります。

・居住

住むところがなければどうしようもないとはいえ、住むところの確保というのは非常に大きなハードルになっています。在留資格、言葉、就労が安定していないと、なかなか居住先を確保することができません。実際に多くのケースでは、居住支援を得ないと居住する場所を確保できないのです。

・教育

日本の制度上、教育を受ける権利は、外国の子どもにもあります。しかし、実際には、学校現場の負担が大きく、言葉の壁などから、学校に通い始めても学習についていくことができない、差別やいじめなどが理由で、不登校になってしまうといった問題が発生しています。

このように不慣れな外国の生活において、これらの複合的な課題を自分たちで解決をしなければいけません。言葉の壁がなくても、右も左もわからない新しい土地でこれだけの生活基盤を一度に整えることは大きな負担となります。

先が見えない避難生活の長期化は、すでに故郷に帰れないという大きな心の傷を負った人たちにとっては、心的負担も大きく、精神的支障をきたしてしまう人もいます。

 

孤立を防ぐために私たちにできる支援

日本に避難して、暮らさざるを得ない方々にも、彼らが描く幸せを達成する権利があります。故郷ではあきらめざるを得なかったことを日本で実現することを目指す人もいると思います。経済的に豊かになりたい、子どもたちに良い教育を与えたい、良い家を構えたい、などなど。避難者であり続ける必要はないのです。

私たちが支援できるのは、彼らの夢を達成することではなく、平等に夢に挑戦できるような基礎を安定させることだと思っています。

先に挙げた課題は、どれも生きていく上で最低限必要なものであり、支援を必要とするものです。一つだけが解決されても、そのほかの問題によって、経済的困窮の悪循環に陥ってしまいます。残念ながら、なかなかこの複合的課題を横断的にサポートする支援の仕組みは日本では構築されていません。

こういった支援には制度や専門的支援の枠組みだけではなく、彼らの状況を理解し、共にどういった生活を望むのか寄り添って考えてくれる人たちが必要になります。

私たちも人生の節目において、家族、親族、知人、友人たちに相談をする場面があると思います。相談しやすい環境を整えることで、深刻な課題に至る前に解決策につながることになるのではないでしょうか。

私たちは、昨年グローバル難民フォーラムにおいて、他団体と連携して以下のような宣言を行いました。日本に暮らす難民を含む多くの外国籍の方々は、私たちが事業を行う対象地域から来た方も多く、シャンティのこれまでの知見や経験を日本国内の社会課題の解決に貢献したいと考えています。

(グローバル難民フォーラム宣言)
(もっと詳しく知りたい方はUNHCRのウェブサイトをご覧ください)

シャンティは引き続き国外での難民支援を強化し、紛争のない社会の実現のために、共感する力、創造する力、コミュニケーション力といった非認知能力を育む教育文化支援を、紛争地をはじめとする国外の対象地域で継続していきます。また、同時に、日本で暮らす難民を含む外国籍の居住者と共に暮らす社会をつくっていくために貢献していきます。

2024年6月20日
事務局長  山本 英里