2022.06.20
メッセージ

世界難民の日によせて

メッセージ

今日6月20日は「世界難民の日」。今年のテーマは「安全を求める権利」

2022年、UNHCRの発表によると、世界の紛争、暴力、迫害などにより支援を必要とする難民の数は1億人を超え、そのうちの半数が国内避難民です。

シャンティが難民支援に取り組む活動地においても、国外へ逃れた難民の方だけではなく、国内において居住地を追われ、安全な場を求めて避難する国内避難民の方々が近年増加しています。この国内避難民の支援を通して見えてくるのは、今年の世界難民の日のテーマとなっている、まさに「安全を求める権利」の問題です。


タイ・ミャンマー国境の難民キャンプで暮らす姉妹(撮影:Yoshifumi Kawabata)

国境付近で道を断たれ、国内避難民となる人々

2021年に政変が起こったミャンマーとアフガニスタンでは、多くの方が安全を求めて、隣接する周辺国に避難を求めました。しかし、陸路、空路共に安全に避難する経路は絶たれ、危険を冒して自力で国境付近にたどり着き、いざ国外へ支援をもとめても受け入れられず、国境付近に滞留する状態を生み出していました。何もない国境付近で、幼い子どもを守るように抱き抱え、体を寄せ合って何とか助けを求める多くの人々の姿がありました。祖国の政府から支援を受けることが難しい状況の中で、国境を接する国からも支援が受けられず栄養失調や病気の蔓延など、更なる被害が彼らに襲いかかるのです。

もし、国際社会が真剣にこの問題を解決しようと取り組んだならば、助けられた命はもっとあり、届けられる支援はもっと広がります。一人でも多くの取り残されている人々に目を向けてくださることを願っています。


避難生活を過ごす子どもたち

遠い国の話ではなく、日本でも守られない人々がいます

そして、難民の庇護は、日本においても深刻な問題になっています。難民認定率が1%に満たない日本が、ウクライナ戦争による難民の受け入れに官民連携で積極的に動いたのは画期的なことです。その一方で、「安全を求める権利」はすべての人々に平等な権利であり、庇護を求める人々に平等な支援が提供されるべきです。難民の方々の安全が脅かされる背景も多様化しています。そのため、多様な支援の枠組みにおいて、まずは人びとの保護を最優先に考えることが必要です。

残念ながら、日本では守られない人がいます。特に、昨年アフガニスタンから逃れて来日した方々は、日本で生活できる最低限の環境が整わず、不安定な在留資格、家族離散、生活困窮、孤立といった状況におかれています。国際的に比較しても日本の受け入れがかなり遅れているどころか、非人道的な対応であると批判されかねない現状があります。政府が主導していく部分があることはもちろんですが、私達一人ひとりが、自分たちの国でどう受け入れていくか、身近な問題として一緒に考えていく必要があると思います。

危機下の教育支援の強化を

シャンティでは、長年にわたって難民支援に関わる中で、危機下における緊急的な支援を行うこと、そこから中長期的に支援が維持される基盤整備などを支援することが必要だと考えています。特に、子どもたちの教育については、心理的・社会的支援を意識した早期の教育機会の提供が必要であり、衣食住といった基本的なニーズと同様に支援パッケージ化されることが重要です。難民の子どもたちの未来を守るためにも、教育の機会を必ず提供する枠組みを国際社会全体でサポートしていくことが必要になっています。教育支援はまだまだ不足しています。難民支援における教育支援の重要性を引き続き提言していきます。

シャンティは、これからもより支援が届かないところに支援を届けることを難民支援の主軸とし、一人ひとりに寄り添う支援を行っていくと共に、より多くの団体、企業、個人と連携しながら、すべての方々に平等な「安全を求める権利」が保障されるよう取り組んでいきます。

ぜひ私たちと一緒に少しでも多くの人たちが笑顔で過ごすことができ、子どもたちが安心して眠れる日を提供できるよう支援をして頂けますようよろしくお願いいたします。


タイ・ミャンマー国境の難民キャンプの学校(撮影:Yoshifumi Kawabata)

2022年6月20日
事務局長
山本英里

トップ写真
タイ・ミャンマー国境の難民キャンプで暮らす子ども
撮影:Yoshifumi Kawabata