2024.08.02

負の連鎖が止まらないアフガニスタンにおける教育の役割とは?|特別対談

アフガニスタン
事務局長の思い
対談



路上で物乞いや物売りをする子どもたちが増加

山本:安井さん、本日は貴重なお時間をありがとうございます。
世界的な物価高騰が、私たちの教育支援活動にも深刻な影響を及ぼしています。アフガニスタンで暮らされている安井さんは、現状をどのように見ていらっしゃいますか。

安井:ここ最近の物価高騰の前から、アフガニスタンの経済は深刻な状況にありました。タリバン政権になり、一家の主が職業を失う家庭が多く、女性の労働も大きな制約を受けたためです。
これを物価高騰が追い打ちしている状況です。特に都市部では、日銭で生活している家庭がほとんどで、パン代を稼ぐために路上で物売りや物乞いをして家計を助けている子どもを見ることが珍しくありません。

山本:現地スタッフから聞いた話ですが、ある夕方、自分の身体と同じくらいの大きさのズタ袋を抱えて、換金できるごみを集めている6歳前後の子どもが、泣きながら裸足で歩いていたそうです。聞くと、その日は思うようにごみが集められておらず、十分な収入にならないと泣いていたんです。

脅かされる食の安全

山本:実際に物価はどの程度上がっているのでしょうか。

安井:例えば砂糖1kgの値段は、1年前の45アフガニから80アフガニまで高騰しています(24年3月時点)。一方で、たとえ仕事を失っていない場合でも、市民の給与は据え置かれたままです。
ガソリンの価格などは、為替の変更に一応合わせて変更していますが、食料品に関しては、為替レートに関係なく、どんどん値上がりしているようです。

山本:食料品価格の高騰は、どのような問題を引き起こしていますか。

安井:価格高騰も含めた貧困により、「食の安全」が脅かされていることです。病院には、重度の栄養不良に苦しむ子どもが次々と運びこまれています。

教育に果たせる役割とは

山本:紛争や自然災害時もそうですが、子どもたちが極限的な状況に置かれている時に、教育に果たせる役割とは何か、考えさせられることが度々あります。
安井さんは、アフガン帰還民の子どものための私設の学校を難民キャンプの中に作り、子どもたちの教育に携わられていましたが、この点についてどのようにお考えですか?

安井:難しい問いですが、最後は「必要とする子どもたちがいるから」という点に尽きるのかなと思います。国際社会が手を差し伸べる以外に方法はないですよね。

山本:力強い言葉をありがとうございます。実際、どのような困難においても、子どもたちは学ぶことを諦めないのです。
「自分には何者にもなれない」と思っていた子どもたちが、学ぶことをと通じて自らの可能性を知り、「自分も『何かになりたい』と希望を持っていいんだ」と、理解するからなのだと思います。

教育は子どもをリスクから守る武器にもなる

安井:子どもが自分の身を守るためにも、教育は必要ですよね。

山本:そうですね。特に働いている子どもは、人身売買など含め、より多くの危険に直面します。
自分の身を守るために必要な力を培うには、知識や経験、心身のバランス良い発達が不可欠です。
教育は、子どもがそういった力を養う上で重要な栄養素です。

 

安井:働く子どもに伝えていることはありますか。

山本:まず、働くことの是非を直接的問うようなことはしません。子どもたちの置かれている環境、働く背景は様々だからです。
ただ、子どもの権利とは何か様々な機会伝えています。
時には、具体的にどのような危険があるか、リスクに直面した際に取れる行動を紹介することもあります。


学校に通えない子どもが通う子ども図書館

安井:シャンティの子ども図書館は、働く子どもたちにとって、どのような存在なのでしょうか。

山本:働く子どもたちに限ったことではありませんが、何よりもまず、子どもが子どもらしく過ごせる場所であることを大切にしています。

安井:外で働く子どもたちは、強いストレスにさらされていますから、子どもらしくいられる場所は必要ですよね。
学校に通えない子どもが子ども図書館に通うと、本に触れる以外にも学びの機会は増えるのでしょうか。

山本:はい、子ども図書館には特別教室という学習プログラムがあります。
おもに読み書き計算を教える特別教室には、教材も含め、子どもたちは無料で参加することができます。

 

山本:最後に、この対談記事を読まれている方へのメッセージをいただけますでしょうか。

安井アフガニスタンを忘れないでください。未来を担う子どもたちがあなたの支援を必要としています。